命が生まれるということについて
だけどさすがにそれが何日も続くとハカセも疲れた様子でした。
「無理しないで」
ルリアは気を遣ってくれますけど、
「大丈夫。これくらいは想定の内だから」
ハカセは笑顔でそう言います。確かにハカセは発明に没頭してる時にはこんな感じになってることも珍しくありません。だからこそ自分の限界を把握してるというのもあるんでしょうか。
『無理をすること自体が必要なデータ集め』
でもあるんでしょう。
「分かった……だけどホントに無理ってなったら休んでね?」
実は言い出したら聞かないタイプなのがハカセだというのをよく知ってるルリアは、心配そうにしながらもそう言って任せます。
「もちろん。分かってる」
本当に体に悪そうなことをしょっちゅうしてるハカセですけど、たぶん元々そういうのに強い体質だったんでしょうね。その上で本人も自分の限界をよく承知していたんでしょう。
こうして体に悪そうなことをしていたハカセに対してルリアはそんなハカセやミコナのためにも自分が病気とかしてられないということで健康には気を遣っていました。ハカセに言われて出産の時のダメージを早々に回復させるためにちゃんと体を休ませようとしてるのもそれです。
今から思うととても皮肉な話ですけど……
でも、人生というのはそういうこともあるんですよね。どんなに気を付けていても望んだとおりの結果が得られるわけじゃない。
けれど、だからと言ってルリアは、
『どうせ運次第でしょ』
みたいなことは考えません。考えてしまう時はあってもそれだけになることはないんです。だって運任せにして適当なことばかりしていたら運じゃない当然の結果として悪い出来事を呼び寄せてしまったりしますからね。
それもやっぱり事実なんです。
そうして授乳以外はほとんどハカセがするようになってミコナもハカセにすごく懐いてくれました。
だからルリアの体調が完全に戻ってもそのまま授乳以外の世話はハカセが行なってルリアは主に家のことをするようになったんです。
もしこれがただ単に一方的にハカセに押し付けただけだったりしたら具合も良くなかったかもしれませんけど、ハカセが自ら望んだことだし何よりミコナがすごく落ち着いてくれるんですから問題ないですよね。
加えてハカセ自身がその経験からたくさん学ぶことができました。それと同時に、発明に関係する色々なことを考えられたんです。
特にかぷせるあにまるに関係する諸々を考えることができたのは大きかったのかもしれません。
命が生まれるということについて。
命がこの世界に来るということについて。
それは決してただの偶然なんかじゃなく、そこに至る行いの結果だということを。