無理な無理はしない
お風呂のすぐ後でウンチをしてしまったミコナをまたお風呂で洗うために、ハカセは服を脱ぎました。そしてルリアがミコナを抱いてついてきます。
そうしてお風呂場で今度はお尻だけ洗うんです。今度はシャワーで流しながら。そのためにもちゃんとシャワーの温度を確かめて、安定したらそこで、
「いいよ」
ルリアに告げてミコナを渡してもらいます。そのハカセがミコナのお尻を洗っている間にルリアが汚れたオムツを処分したり、新しいオムツを用意したり。
改めて連携ができているのが分かります。
だけどこれはルリアとハカセにとっては当たり前のこと。これができるのが分かっていたから結婚したんです。見た目だけとか経済力だけとか、そういう形で相手を選んだんじゃありません。お互いに相手を大切にできるのが分かっているから結婚に踏み切れた。
そういう二人なんです。
こうしてミコナのお尻を洗い終えたハカセはまたルリアに彼女を託して、自分も体を拭いて服を着ます。この手間をかけることを惜しまないし、何より手間をかけたことを恩としてミコナに売りつけるつもりもありませんでした。
何度も言いますけど、ミコナに生まれてきてもらったのはルリアとハカセなんです。ミコナにお願いされたわけじゃない。自分達の身勝手で来てもらったのに『育ててやったから』『世話をしてやったから』なんてどうして思えるんでしょう? 自分達が選択しなければなかった手間じゃないですか。経済的負担じゃないですか。
たとえ人並み以上のいい暮らしをさせてあげてたとしても、それは自分自身の見栄も含んだものじゃないんですか? 自分のためなんじゃないですか?
そんな自分自身の選択に対して責任も負わない人がどうして子供に対して責任を語れるんでしょうか。
ハカセが体を拭いて服を着て脱衣所から出てくると、ルリアがミコナにオムツを着けておくるみを着せてってしていました。ハカセに任せっきりにはしません。
するとハカセは、
「ありがとう。あとは僕がするから、ルリアは休んでて」
彼女に告げます。それに対してルリアも、
「分かった。お願い」
素直に言うことを聞きます。今はとにかく出産のダメージを完全に回復させることをハカセも優先してるのを理解してるからです。ここで無理をして体調を崩したりしたら余計に迷惑がかかることを理解してるからです。
そうしてルリアが横になったのを確認して、ハカセもミコナを膝に抱いて壁にもたれかかって目を閉じます。そうやって休むんです。
ハカセは自分の体調と相談してそれを行ってます。決して無理はしません。正しくは『無理な無理はしない』といった感じでしょうか。