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Chapter8:第二戦 ネオ鈴鹿サーキット「予選」

NextRace予選の方式は、主にF1で使用されるノックアウト方式を採用している。

・Q1:60分の中で全30台が同時に走り、各自のベストタイムを比べて

   上位20台が決勝に参加出来る。

・Q2:18分の中で決勝に参加する全20台が同時に走り、各自のベストタイムを

   比べて下位16〜20位のスターティンググリッドが決まる。

・Q3:Q1を通過した15台で、同時に15分間走り、下位11〜15位の

   スターティンググリッドが決まる。

・Q4:Q2を通過した10台で、同時に12分間走り、各自のベストタイムで

    1〜10位のスターティンググリッドが決まる。


現在、武戦レーシングの2台「22号車:輪堂凛」「46号車:土谷恵一」は60分間の予選Q1を走行していた。


この60分間で走行するタイミングは自由である。

キング率いる「アドリアーノ・フォーミュラ」やクイーン率いる「アリアンロッド・グランプリ」等の強豪チームはタイヤのラバーがある程度のってきた中盤に、早々にタイムを出して決勝で走行出来る資格を会得する。


「22号車:輪堂凛」も今回は絶好調。予選開始30分で今年の予選Q1の

予想ノックアウトタイム1’37.2を3.5秒上回る1’34.652秒を叩き出していた。


しかし、多くのモータースポーツで囁かれている原理・原則がある。

勝利に必要な要求性能はマシンが90%で、ドライバーが10%。

ドライバーの腕よりマシンの性能が重要な要素であるのだ。


逆に苦戦しているのが「46号車:土谷恵一」。

FP(Free Practice[フリー走行])で出ていた、「ブレーキをかけると車が勝手に方向を変える!!」現象は未だ完治しておらず、今のところのベストタイムは1’37.301秒とノックアウトタイムに約0.1秒足りない。


現代のマシンは、精密測定器の塊でもある。

ブレーキの温度やフロア(車体下に取り付けた空力パーツ)の圧力変化等のデータログではブレーキや空力に問題が無いことを示していたが、Gセンサー(重力加速度を測定する機器)では、減速時にマシンが右に旋回する方向に力が掛かっている事を示していた。


ドライバーの言葉に間違い無い。

前日のFPで発生したトラブルを解消するために、源次郎率いる武戦レーシングメカニックチームは、徹夜で原因究明と改善作業を行っていた。


しかし現在の予選Q1で「46号車:土谷恵一」のマシンから送られてくるリアルタイムのデータでは、相変わらず減速時にマシンが右旋回する事が確認されていた。

メカニックの源次郎も「すまねぇな…坊主…。」と憔悴しきっていた。


NextRace予選Q1残り20分

ピットに戻った恵一は、メカニックの源次郎・チーム監督の神楽千登世を含め武戦レーシングの面々と作戦を練っていた。

「FPに比べれば、だいぶん乗りやすくなっているよ。後は、どうやって0.1秒を稼ぐかだね…。もう少しラバーがのってくれば、もう少しはタイムが上がると思うけど。」


そこで、チーム監督である千登世が決断する。

「それなら、凛がケイちゃんを引っ張ってもらいましょう。」


ネオ鈴鹿サーキットで最も長くアクセルを踏み続ける区間である西ストレートで、「22号車:輪堂凛」の後ろについてトゥ(スリップストリーム)を利用する案だった。


千登世が凛に問う

「凛!!出来るわね!?」

武膳レーシングのマシンに搭載されているAIたるAmiも続く

「私がサポートします。凛なら必ず出来ます。」

「え!?はいっ!!分かりました!!頑張ります!!」

急に話を振られた凛は、戸惑いながら(おそらくまだ作戦を理解していない様だが…)協力することを快諾した。


武戦レーシングは「46号車:土谷恵一」を予選突破させるために一つとなっていた。


 46号車の原因不明のトラブルを解決すべく、源次郎が対策した方法は、減速時の旋回方向の自動的に4輪のブレーキバランスを調整するというものだった。ブレーキ時に右旋回する場合、左側のブレーキを意図的に強くする方式である。このために徹夜までしてプログラムを作成してくれたのだ。

 未だ現象は解決出来ておらず、違和感は残るもののFPの時に比べれば大分扱いやすいマシンとなっていた。

メカニックが徹夜までしてマシンを仕上げたのだ、ならばドライバーもそれに答えなければならない

土谷恵一は心の中で静かに燃えていた。


予選残り15分。

「22号車:輪堂凛」に続き、「46号車:土谷恵一」の順でピットを出てコースに向かう。

1周目は、タイヤを温めるために軽いウォーミングアップ走行。


1周を終えたホームストレートの手前、シケインでは「46号車:土谷恵一」は「22号車:輪堂凛」のマシンの真後ろに陣取っていた。


Amiから凛へ指示が飛ぶ

「凛!ここから全開走行です。リボルバーストの準備を!」

「アイアイサー!!」

「3.2.1!今です!」

「了解!!」

ホームストレートで、「22号車:輪堂凛」はリボルバーストを発動、モーレツな勢いで加速を開始する。

対して、凛を追う「46号車:土谷恵一」はリボルバーストを使用しないが、まるで掃除機に吸われるが如く、強烈に加速していく感覚を得ていた。

リボルバーストを使用しない46号車は徐々に22号車に離されていくが、46号車はトゥ(スリップストリーム)の効果を確かに感じていた。

ホームストレート出口では、46号車は22号車から50m程度離されていた。


これで良い、直線時はトゥの効果が絶大だが、逆にコーナの場合、前走車が起こす乱気流の影響で自車のダウンフォースが減り遅くなってしまう。

 ホームストレート序盤で、リボルバースト使用した凛にトゥで引っ張ってもらい、コーナーが主体のセクションは逆に離れてもらった方が良い。千登世の作戦に対し武戦レーシんのAIたるAmiはさらに作戦を付け足していた。


そのまま、凛には全開走行続けてもらい、スプーン手前200R中盤でAmiからの指示

「1秒間アクセルを抜いてください、46号車を待ちます。」

スプーン手前で減速し、「46号車:土谷恵一」を待つ。

程なくして「46号車:土谷恵一」のマシンが姿を現してきた。

スプーン出口で「22号車:輪堂凛」はアクセル全開。

「46号車:土谷恵一」は西ストレート入口で「22号車:輪堂凛」のトゥを利用するために真後ろに付く。


西ストレートの出口は130Rのコーナーだ。現代のマシンでは、有り余るダウンフォースにものを言わせて、アクセル全開で飛び込んでいく。

しかし、130Rの進入前に「46号車:土谷恵一」は「22号車:輪堂凛」を抜かさなければならない。

リボルバーストのタイミングを間違えれば、互いの走行経路が交差してしまい重大な事故に発展する可能性がある。そこで、リボルバーストと22号車を抜くタイミングは、人工知能であるAmiが指示する事となった。


「46号車:土谷恵一」のマシンのAmiが、恵一に対し指示をする

「リボルバーストのタイミングを図ります。カウント0で作動させてください」

「了解!!Amiちゃん!」

「3.2.1.0!」

「了解!!」

Amiのカウントに合わせリボルバーストを作動、マシンが急速に加速し前走車である22号車に急速に接近する。


「46号車:土谷恵一」のマシンがリボルバーストを作動させると同時に

「22号車:輪堂凛」のAmiが凛に対し指示を飛ばす。

「今です、右に寄ってフルブレーキングして下さい。」

22号車はAmiの指示通りに右側に寄って46号車に進路を譲る。

譲った次の瞬間には130Rの進入だ、イン側にいるためフルブレーキングで減速し対応する。


逆に道を譲ってもらった「46号車:土谷恵一」は130Rに対し理想的な進入経路をアクセル全開で走行する。


「22号車:輪堂凛」と「46号車:土谷恵一」はAmiの指示に従い、完璧なタイミングでトゥの利用とポジションの入れ替えを行っていた。


この作戦のおかげで、第二戦ネオ鈴鹿サーキット全体のレースにおいて、

130R出口に設置されているSPEEDTRAP(最高速計測地点)で、「46号車:土谷恵一」のマシンが、NextRace参加マシン30台の中で最高速となる353km/h、(第2位は342km/h)を叩き出していた。


この作戦で、ホームストレートと西ストレートの合わせて0.2秒のタイムアップに成功する。


予選Q1:46号車:土谷恵一 1’37.004秒 P20

辛くも予選突破。これは武戦レーシングのチーム一体となって得た勝利であった。

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