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Chapter2:開幕戦「決勝日当日」

 決勝当日、ドライバーは大忙しである。

なぜか?この「NEXT Race」に限らず、大きなモータースポーツの大会というのは、特大エンターテイメントとなる。観客の集客によるチケットの売上のみならず、金を払えばサーキットをプロのドライバーの横に乗ってコースを爆走するサーキットタクシーやら、世界中の美酒を集めてVIPに対する接待を行ったり、現在絶賛大人気中の「プリマステラ」によるライブによる熱狂やら等等etc.etc.etc…


ようは各企業が金・金・金にものを言わせ、更に収益を得るための経済戦争であるからだ。

 そう言えばさっき、キングと握手して一緒に写真とってた人、世界広しとは言え「Emperor」と呼ばれている一族の方によく似ている気がする。まぁ多分他人の空似だよね…。キングも硬直していた様に見えたけど…、他にも現在世界一の超巨大国家の大統領と我が国の首相によく似た人も一緒に居たような…。

(ちなみに下手にファンサービスを断ると、ペナルティポイントやらレースでの降格処分が発生するため、ドライバーどころかチームにも拒否権は無い!!)


 つまりこの巨大な経済権内(舞台装置)では、ドライバーも駒の一つであるわけで…。

朝から、ファンにサイン・サイン・サイン!!!!、それが終わったら、NEX Race mediaの前で他のドライバーとの雑談会(もちろんWebカメラで全世界に同時配信しているよ)で目の回る忙しさとなる。

午後一の決勝レーススタートの2時間程度前までは、休憩する暇すら無いのである。


 レース開始2時間前、ドライバーに設けられた共有スペースで、女子たち(彼女らもトップドライバー、現在のNEXT Raceでは半分が女性ドライバーが占めている)がようやく得られた休憩時間でお茶会を開いていた。無論、我らが武戦レーシングの輪堂凛もその中に入っていた。

外からみても和気あいあいとしている、様に見えるこのお茶会ではあるが…。


 気軽に参加したは良いものの基本的にこのお茶会、自由参加であるが、男の身で参加するのはかなりキツイ。もともと、凛に「恵一さんもせっかくですから一緒にどうですか?」と誘われ、軽い気持ちでOKしたのが運の尽き。時間になったため、約束場所に軽く顔を出してみた。

 そこには、我らがライバルであるイザナミ・レーシングの浅河カナタ、小町永遠の両名、ポレイユ・レーシングのソフィア・B・時任、白虎・レーシングの劉悠然と、我らが武戦レーシングの輪堂凛が待っていた。

 和気愛々とお茶請けのベーグルと、お茶の代わりにCillout(スポンサーから無償支給されているドリンク)を飲みながら、会話を行っている。彼女らは同世代である事もあり非常に仲が良い。しかし、去年の最終戦で行われた凛とキング・クイーンの戦いが、彼女らの闘争心にだいぶ火をつけてしまった様だ。俺が見る限り、このお茶会の会話の端々に、どうやってこのメンバーより高い位置に行けるか?情報戦が繰り広げられている。どいつもこいつも、目をギラギラさせてやがる。ずいぶんと気の張るお茶会だこと、女性って怖いわ…。

「ねぇどおして、君は乗ったばかりのマシンでそんなに早く走れるのかな?」

気づけば、ソフィアがいつの間にか俺にの隣に移動していて、抱きつかんばかりに近づいていた。それもFace to Face、少し近づけばキスしてしまう位置で、上目づかいに俺を見つめている。

「そう言えばあんた、デビュー戦でいきなり予選4番手だもんな、どんな魔法を使ったんだ?」

睨みつける様にカナタが俺を見る。

「私も知りたい」

永遠も気になっているようだ。

「…」

じっと俺を見つめる悠然

一瞬だが、静寂が訪れる、この場の女子全員の視線を集め、

「えーと、…AIはある程度無視して自分の力を信じる事!!…とか」


 現代の「NEXTRace」ではAIが介入しない完全なるマニュアル操作はNGとされている。

サスペンションのダンパー制御から、ハンドルの切れ角、ブレーキバランスに至るまで

AIの介入の下に成り立っている。それが最も安全で速いからだ。

AIが介入するとまるで、初心者向けレースゲームの様に、スピンしない。現在の「NEXTRace」では、如何にそのAIとの折り合いをつけるかが、タイムアップの鍵である事が常識であった。


静寂の仲、最初に口火を切ったのは、カナタだった

「さすがは、デビューから破天荒な走りをしているやつだぜ!!」

どうやら、頭のおかしいやつと認識してくれたらしい。

「もぅいけず。本当の事はヒミツってことね」

ソフィアがほっぺを膨らませて、私怒ってますって感じで拗ねている。

まぁ演技だろうけど。

とりあえず、女子全体に笑いの和が広がっている。


でもまぁ別に間違った事は言っていないけどね。

本来のレースであれば、スピンする限界点を見つけて、マシンをドライバーがコントロールする事が好ましいと俺は思っている。

時速500km/hを超える現代のレースは、AIによって過度にドライバーを守り過ぎていると思う。

個人的な意見ではあるが、AIによる補助はドライバーの安全を保証する一方で、タイムを落とす原因であると考えている。


 このお茶会に参加している彼女らは「NEX Race」のトップドライバー達。

今回の予選を一緒に走ってみて感じた事ではあるけど、キングや凛の影響なのか、AIの補助量のレベルを去年に比べだいぶ落としている様に感じた。

 そのため、今年のレースは如何にAIによる補助をなくすかが、タイムを削る鍵となっているようだ。昨年のキングとルーキーの死闘は、「NEXT Race」全体の戦略ストラテジーに影響を与えていた。

彼女らも必死に自分たちの戦い方を変えて、ドライビングを変えて、必死に食らいついている事を感じさせる。


 彼女らを見回して、恵一は心の中で思う。「でも、それだけじゃないけどね…。」


「このベーグルおいしい♡。あっでももう一個食べたらカロリーがぁ!?」

最も、彼女らに影響を与えた当の本人のたる輪堂凛は、まるでその事に気づいていないようだだった。


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