表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は今じゃこ天という名前で生きています。  作者: かねおりん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/50

閑話 ひとりにひとつの名前♡

閑話の最終回です。



あたしが生まれ落ちた場所は、あたしたちを多く繁殖させる場所だったわ。


売れなければ殺されてしまう。


あたしには純白の美しいファーがある。


殺されていく兄弟たちを見ながらあたしは美しいから買われていったのだと自信を持っていたわ。


初めての家族はずいぶんと年をとった老婦人だったわ。


老婦人は息子たちが大きくなって一人暮らしになってしまって、寂しかったみたいであたしを家族にしたがったみたいね。


でも、あたしはここに来たかったのかしら?


まぁ、あたしのこと大切にしてくれるんなら別にいいんだけど。


老婦人はしばらくあたしとのんびりと暮らしたわ・・・。


あたしとふたりっきりの平和な生活ね。


とても静かでとても・・・退屈だわ・・・だってあたしまだ子供だもの!


もっと飛び跳ねたりして遊びたいわ!


外に出されることはないからこの家の中だけがあたしの動ける範囲・・・。


とにかく飛び回って、色んな高いところにも上ったわ。


老婦人はあたしがいろんなものを高いところから落としたりして大慌てだったわ。


怒ることもあったわね。


さすがにやりすぎたのかな?とは思うけど仕方ないじゃない・・・元気が溢れているんだから!


老婦人によってあたしの名前は「ペル」に決まったわ。


悪くないわ。


美しいあたしにピッタリな名前よね。意味は分からないけど。


老婦人はあたしに名前をくれて何年もあたしのいたずらに付き合ってくれて楽しい毎日を過ごしたわ・・・。


でも、ある日老婦人は町の電気屋さんにあたしを連れて行ったの。


老婦人は電気屋さんに相談していたわ。


「このペルちゃんがね、とっても元気なんだけどね、わたしはもう遊んであげられそうにないから、電気屋さん・・・そちらの子と一緒にペルちゃんをお願いできないかしら?」と


そうあたしは家族と別れる事になるのね。


老婦人はあたしとの別れを決めたのね。


でも、死なせたくはないからと老婦人が死ぬ前に次の家族になってくれそうなところを探していたのね・・・。


どうやら老婦人との縁はここで終わりのようね・・・楽しかったのよ本当に・・・。


残念だけど仕方ないわね。


そうして、家族だった老婦人と別れて、あたしは電気屋さんの子になるんだと思っていたわ。


電気屋さんの子は「トラ」という名前でなかなかのツワモノ。


あたしが行くなり、


「ちょっとあんたうちに何の用があってこのあたしの家に入ってくれちゃってるのよ」


とがっつりと喧嘩を売られたわ。


でも、喧嘩はあたしの圧倒的勝利よ。


「あんたなんかがあたしの家族を横取りしようなんて・・・許せないわ」と結構嫌そうだわ。


ここもあたしが来たかった場所なのかしら?


電気屋さんはトラとの喧嘩を見て、あたしを他の家庭に紹介し始めたわ。


色んな人に声をかけたけど、全然引き取り手が現れないの・・・。


美しい純白のファーで自信たっぷりに兄弟たちよりも人気があると思って出てきたはずなのに・・・。


そして、ある日電気屋さんに来た女の人にもあたしのことを相談していたわ。


その女の人は「娘に相談します」と言って帰ってしまったの・・・。


断り文句よね・・・。


すると、10分後、まだ幼さの残る女の子が一人で電気屋さんに来たの。


女の子は電気屋さんに「この子は今4歳なんだけど貰ってくれるかね?」と聞かれて


「うん。高そうできれいな子だけどいいの?」と返したわ。


実際あたしは高価だったわね。


電気屋さんは「うちのトラと仲良くなれそうになくって、わたしたちも歳だからトラだけで手いっぱいでね」と言っていた。


まぁ、トラの思い通りになったってわけね。


女の子はそれを聞くなり「じゃあ、ありがとう大事にするね」と言ってあたしをそのまま抱きかかえて電気屋さんからすぐ近くの家に家族として迎え入れられたの。


そこには、外に大きな声で吠える「ラム」というのが居てこの家の家族たちについてよく教えてくれたわ。


この家にこの家族が引っ越してきたころから「ラム」はここに居るんだそうよ。


一戸建ての外にラム専用の家が用意されていて、ラムは晴れた日には屋根に家の中の毛布を干していたりするわね。


あたしはこの家に来てから外も中も自由に行き来できるからラムともよくしゃべっていたけど、家の中にはあたしとは正反対の漆黒の「ルナ」が居たの。


ルナとの仲がトラほど悪いわけでもなかったんだけど、ルナは


「あたしはここに来たかったんじゃないの、会わなきゃいけないひとがいるの」


そう言っていつものお散歩ではなく、外の世界で会いたいひとを見つけてこの家を出て行ってしまったの。


時折、散歩の時にルナを見かけるととても仲よさそうにしている家族がいるみたいだったわ。


そう自力でたどり着いたのね。


ルナが居なくなってからあたしは、またラムと話すようになったわ。


ラムが言うには昔ラムととても仲がいい「キキ」という名前の子がほんの少しの間いたらしいの。


「その子はどこにいっちゃったの?」と聞くと


ラムは少しうつむいて「あれは雪の積もった正月だった・・・キキはそんな寒い中あの女によって外に放り出された・・・元々身体の弱かったキキは家の中でしか暮らせなくて網戸越しによく話し相手をしてくれたんだけど初めての外がまさかあんなに寒いと思わなかったのか駆け出して行ってしまった」


あの女・・・この家には一人を除いて女しか居ないわ。


ラムもルナも女だし、あの子と妹にあたしを最初に電気屋さんに勧められた母親と唯一の男はその旦那さんと思わしき人。


ラムの話じゃ、あたしをあっさりと迎え入れた女の子がラムの事も迎え入れたようなんだけど、


ラムはすっかりその子の面倒をみることに飽き飽きしたと言っていたわ。


もう少し小さなころにラムもその子も子供だったらしいのだけど、まぁキャッキャキャッキャと五月蠅くて足も遅くて全力で散歩にも付き合えないと文句をたらたら言っていたわ。


でも、最初の頃よりも一緒に遊ぶ機会は女の子の成長と共に少なくなっていったようで、ラムは飽き飽きというよりも少し寂しいのをそう言って隠したように感じたわ。


素直じゃないのねぇ・・・。


ラムは外に住んでいるけど、大雨や特に雷が大嫌いで、ある雷の鳴った日ラムはあまりの恐怖に敷地内を出て大脱走したのよ。


あたしは窓から外を眺めていたんだけど、「黒いものが通り過ぎてったね」と女の子は言う・・・。


あたしは答えたわ「あらあんたあれはラムよ」女の子はそれが聞こえたのか外に出て行ってラムを追いかけていたわ。


それからというもの雨の日になると女の子はラムと一緒にお風呂に入るようになったわ。


雷の音より蛇口から出るお湯の音の方が大きく聞こえてきっとラムが怖くないからと・・・あたしはぜったい入れないでよ。


ラムは女の子とのお風呂を楽しんだようで、玄関でグッスリと眠っていたわ。


翌日晴れた日にはまたいつものラムの家に戻されたけど、また違う雷の日に女の子は家に居なかったのよ。


するとラムはまたあまりの恐怖に大脱走をして三日間帰って来なかったわ。


女の子は大慌てで友達みんなに協力してもらってラムを探していたけど夜に黒い毛皮を探すのは容易なことじゃないわ。


夜目が効くあたしでも難しいかもしれないわ。


帰ってきたラムに三日間も何をしていたのかを聞いたら、


「最初は怖くてただただ走っていたんだけど、雨がやんで気がついてあたりを見回したらね、会いたかったひとに会えてね・・・随分大きくなっていたけど元気でいてくれたんだよ」ととても喜んでいるようだったわ。


どうしてもそこに居続けたいけど、女の子から貰った名前と愛情を思うと何も言わずに出てきたことが後悔になってしまったようで一旦帰ってきたのだという。


大慌てしていた女の子は一安心していたけど、そのあとラムは雨も降っていない日に改めてその家族から離れて行ってしまったわ。


再度大慌てで探していたけどいつまでたってもどこに連絡してもラムは見つからなかったわ。


あたしも散歩しながら探してみたけどルナは居てもラムはもう近くにはいないようだったわ。


でも、ラムは会いたかったひとに会えたのよね。


あたしは誰に会いたいのかしら?もう何も覚えていないわ。


そして、2年の月日が経った頃電気屋さんから手紙がきたらしいわ。


「ペルちゃんも今年でもう10歳ですね」と。


そう電気屋さんはあたしの年齢を鯖読んで伝えていたのね。


家族はみんなびっくりしていたわ。


だからと言ってなんてことはないんだけど、年月が経ち女の子はもう子供ではなくなってほとんど家に帰って来なくなったわ。


遠くで一人暮らしを始めたらしいの。


ここの家族になってからとにかくあたしと遊びたくってしつこくおいかけてきては、かくれんぼもしょっちゅうやったわ。


鬼はいつも女の子だったけど、どんなに見つからないだろうと思って隠れてもどこにいても絶対に見つけてくるのよね。


結局お風呂にも一緒に入らされて、ひっかき傷だらけにしてあげたりもしたわ。


そんな愛情の重い子が居なくなるのは少し寂しいけど、仕方ないわね。


それとほぼ時を同じくして下の子の要望で「まろ」という名前の騒がしいのが家族に加わったわ。


あたしに構え構えと煩いからパンチしてやったらあたしに従うようになったわ。


あたしの弟子ね。


あの子はたまに帰ってきても、「ペルちゃんかわいいねー」と抱き上げられるしキスを無理やりしてくるからあたしは手でその子の唇を止めるわ。


そして、あたしはこの家に来て10年の月日が経ち、幼さが残っていた女の子は大人になって海外に行ってしまったらしいわ。


下の子はまだ子供のままね。


あたしに興味があるというよりも最近よく見えないのだけど、いつの間にやら「まろ」の他に「りん」という名前の家族も増えているみたいなんだけど、


もうあたしもすっかり老婦人に負けないくらい老いてきてしまったからうるさいけどどうでもいいわ。


もうあの子には会えないのかしらね・・・そう思った時。


あの子は海外から一時的に帰ってきてくれたの。


それでホッとしたせいか一気に目が見えなくなって、ごはんを一人で食べる事すらできなくなったわ。


あたしは病院に連れていかれて腎不全という診断が出たわ。


それを聞くなり帰ってきた目的はキャンセルして最期まであの子はあたしの胸の下に手を置いてずっと一緒に眠ってくれて、毎日病院で点滴をしてもらい、スポイトであたしに水を飲ませて、新鮮なお刺身をあたしが食べられるだけお箸でくれたわ。


いつまでもいつまでも、そうして一緒に居たかったわ。


でもね、あたしが会いたかったのはあなただったんだってわかったの。


それでちゃんと出会えて不器用なくらい重たい愛情を貰えて、たくさんかわいいと言ってもらえた。


最期に一緒にいてくれた。


これ以上引き留められないわ・・・。


あの子が新しいお刺身を買いに行っている隙に・・・あの子に最期の最期あたしの死ぬところは見せられないわ。


ああ、また違う姿であの子の、僕の可愛い妹の傍に居られますように・・・。


あの子だけじゃない沢山の家族たちがあたしにはできたわね。


みんなひとりひとり名前があって、みんな会いたいひとに出会ってまた新しい家族になって沢山の愛情がそこにはちゃんとあるのよね♡






ーーーあなたの貰った名前はなんていうの?

次は本編の最終回となります。


三部作の一作目ではありますがここまで読み切ってくださった皆様ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 僕ももしかしたら両親や、知人に会いたくてこんな世の中に、こんな感じで生まれてきたのかな、と思うと、ちょっと感傷的になってしまいました。 あと一話、心して読みますね!
2024/03/15 00:55 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ