96.鼻歌
「〜〜♪」
誰かが私の頭を撫でながら、鼻歌を歌っている。
そんな鼻歌によって、暗闇の中の絵里の意識は少しずつ、覚醒していく。
「〜〜〜♪♪」
懐かしい、聞いた事のある歌。とても優しい、綺麗な歌。
けれど突然、鼻歌は止まり、私の頭を撫でていた手もどこかへ行く。
それと同時、絵里の意識は完全に覚醒し、ゆっくりと目を開く。
瞬間、絵里の目にオレンジ色の光が飛び込む。あの、夕方だけ見せる太陽の色。
絵里はそのまま目を開き、手で目を擦って眠気を飛ばす。
噴水の音、人が歩く音。風があり、子供のはしゃぎ声が聞こえる。
どうやら元に戻ったらしい。
絵里は少し笑みを浮かべて、安心したように息を吐く。
そして気付く。誰かの膝……いや、太ももの上で寝ていることに。
絵里は寝返りをうって、誰なのかを確認する。
それは……エナ?いや、
「ネヒィア……だよね?」
おっぱいのせいで、顔が見えない。だから、少し迷ったが、綺麗な銀髪がうっすら見えたのと、ワイシャツを着ているから、ネヒィアだ。
絵里の声に、ネヒィアは反応せず無視をする。
やっぱりまだ怒っているらしい。
「ごめんなさい。本当に、ごめん」
絵里は、ネヒィアのお腹に頭をくっ付けて、謝る。
けれど、ネヒィアは反応しない。絵里はネヒィアの背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめながら
「なんでもするから……だから、許して。お願い」
「……やだ」
ネヒィアが一言悲しそうに返す。絵里はそれを聞いて、泣きそうになりながら、ネヒィアを思いっきり抱きしめて、
「どうしたら……許してくれる……本当に、なんでもするから」
「ねぇ、ケーキ美味しかった?」
ネヒィアの怒りがこもった言葉に、絵里はゾッとする。
そして、続けて
「捨てられたの?あの人に。だから、すぐそこで寝てたんでしょ?」
「いや、ち、ちが……」
「言い訳は、聞きないよ。静かにして」
泣きそうな顔を、ネヒィアの頭にくっ付けて、隠す絵里。
息をする度に体が震えて、涙が零れそうになる。ネヒィアと仲直りしたい。どうにかして……でも……
「私の事、嫌いなんでしょ?もういいから」
違う……そんな事ない。私は……
「好き……世界で、一番好きだよ……ネヒィアが、一番……大好き」
「……あっそ。別に興味無いから」
「……うっ……ぐずっ……ネヒィア……うぅ……」
絵里の何かが壊れたらしい。子供のように、大粒の涙を流す。何回も、何回も、手で涙を拭って……絵里は泣きじゃくる。
そんな様子に、
「えっと……その、こんなつもりじゃ……ごめん、主様」
ネヒィアは慌てて絵里に謝る。
「その……ちょっと仕返しするつもりで……こんなつもりじゃ」
「酷い……嘘ばっかり……みんなみんな、大っ嫌い。いつもいつも……もう、やだ」
「あ、主様っ!嘘じゃない……」
ネヒィアは言葉を途中で止めて、絵里を少し持ち上げ思いっきり抱きしめる。
けれど、絵里は、やめて、離して、そう言いながら暴れる。
だから……
「絵里。私も、世界で一番、絵里が好き。大好きだよ。だから、こっち向いて、ね?」
ネヒィアの優しい言葉に、少しだけ落ち着きを取り戻して、絵里は大人しくなる。
それを見て、ネヒィアはニヤリと笑いながら絵里の頬に手を当てて、
「なんでするって言った責任は、ちゃんと取ってね?」
「そ、それは……」
絵里は一瞬口ごもり、
「分かった……」
拗ねた子供の様にそう言葉を返した。
ネヒィアは、絵里の頭の後ろに手を回して、
「今日あった事は、死ぬまで一生、忘れないから」
夕日に照らされ、いたずらっ子の様に笑うネヒィアと、泣いた後の拗ねた子供のような絵里。
拗ねた子供は動かない。だから……
「絵里」
いたずらっ子が、いたずらをする。
絵里の唇に、優しくキスをした。思いっきり抱き締めて、これでもかと言うぐらいに……
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