表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/201

95.えっ、怖っ

 絵里は恐る恐る、辺りを見渡す。


 誰もいない。さっき……路地を入る前までは、ちらほらと歩いたり、走ったりしていた人が……


 自分だけが世界に取り残され、自分以外が出す音が聞こえない。


 心地いい音を聞かせていた噴水の水は、流れることなく、ただ静かに固まっている。


 そして、全ての家の窓は、真っ暗闇に包まれて、中の様子を見ることが出来ない。


 風もない。雲も動かない。人の気配がまるでない。


 絵里の鼓動は自然と上がり、痛いほどに耳に響く。


 自分だけしかいない世界は、とてつもなく怖い。


 絵里は壁に寄りかかり、何とか呼吸を整える。けれど、体の内から漏れ出てくる恐怖は絵里を凄まじい速度で蝕んでいく。


 ただでさえ、力が入らなかった体がもう言う事を聞かなくなり、絵里はその場に崩れるように座り込む。


「はぁ、はぁ、ネヒィア……」


 絵里は力ない声で、ネヒィアの名を呼んで下を向く。


 このまま死んでいくのだろうか……そう思うと余計怖くなって、絵里は目に涙を浮かべる。


 体が震えだして、ただただ、荒い呼吸を繰り返す。


 誰か……いないの……


『あら、待たせすぎちゃったかしら』


 絵里の頭の中に透き通った綺麗な声が響く。


 誰?


『んー、名乗れる名前がないの。だから……私はあなたの事が好きな、あなたの、ファン?みたいな』


 絵里の頭の中に響く声は、楽しそうにそう絵里に話しかける。


 絵里は目を擦ってから、前を見る。相変わらず誰一人としていない。


 けれど、絵里は少し落ち着いて、


「どうして、誰もいないの?」


 口を開いて、声で話しかける。


『私とあなたの会話を聞かれないために、よ。体は大丈夫?』


「えっ、えーと、力が入らない、それ以外は……大丈夫かな」


『そう。少し無理させ過ぎたわね。ごめんなさい』


 絵里に謝るその声に、絵里は首を傾げて、


「どうして、あなたが謝るの?」


『私が勝手に、あなたの魔力を使ったからよ。そのせいで、力が入らないの』


 勝手に……なんで?


『あなたの魂を治すためよ』


 えっ……聞かれた?えっ……怖っ


『……後、数日もすれば元通りになるわ。それに身長も少しは伸びる』


「本当?言ったね?」


『ええ』


 絵里は少し食い気味に言葉を返し、ちょっと安心する。


「良かった……」


『ええ、良かったわね。それで、さっきのは、()()()ここからが本題よ』


 声が急に真面目になって、声の雰囲気が変わる。絵里も、少し姿勢を良くして、頷く。


『私に会いに来ない?』


 ……は?いや、何か大事な話では……


『何を言ってるの?一番大事でしょ?私はあなた……絵里ちゃんを色々と助けたのだから。恩を返さないの?』


 えっ、いや……まあ、それは、


「それなら、どこにいるの?」


『真反対?丁度、今いるその場所から、くるっと半周』


「くるっと半周……何を?」


『この星?』


 ……遠い、やだ。


『えっ?いやいや、会いに来てくれるよね?ね?』


「それは……おいおいで……て言うか、なんで自分から会いに来ないの?」


『えーと、まあ、色々あって……その、お願い』


「……分かった。いつか会いに行く。約束するよ!」


『約束よ、絶対!出来るだけ早く頼むわ。あっ、後オセラにあったらよろしく伝えてね』


「オセラに?」


『そうよ。時間がもうあんまりないから、最後に、えーと、会ったら私を抱き締めてね?』


「えーと、分かった……」


『約束ね!』


 そんな言葉を最後に、急に静かになる。そしてまた、一人になった。


 噴水の水が動くこともなく、雲が動くこともない。


 不思議な声と話していた時は、調子が良かった体も、また思い出したように、重く力が入らなくなる。


 そしてさらに……


「急に眠くなってきた……」


 絵里は左右に揺れて、うとうとと目を瞑ったり、開けたり……


 こんなとこで寝たくない。絵里は必死に抵抗しながらも、睡魔は絵里を攻め続けて……


「エナ……ネヒィ……ア……」


 コテっと絵里はその場で座ったまま目を閉じた。

面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、

☆☆☆☆☆

↓↓↓

★★★★★

広告下の星を押してポイントを!ついでに、いいね!と思ったらいいね!ボタンをポチッと!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ