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94.次へ

 

「ごちそうさまでしたっ!」


「ごちそう……さま」


 ニヤニヤと嬉しそうな絵里に比べて、オセラは少し顔を赤くしながら、恥ずかしそうに身を縮めている。


 絵里に何回かアーンをされ、先程ケーキを全部食べ終わった。


 それから少し休憩を挟んで、まだ少し顔の赤いオセラと、それを見てまた笑顔になった絵里は、席を立ち上がる。


「あっ……そう言えばお金……」


 立った瞬間、すっごく今更ではあるがそんな事を思い出した。


 というか……この世界のお金を触った事も持った事もない……そんな絵里に、


「気にするな。金ならある」


「えっ、でも……」


「別にいい」


 オセラはそう言ってお金を慣れたように払うと、お店から出る。それに絵里は慌てて、オセラを追った。


 お店から出ると、すぐ前でオセラが待ってくれていた。絵里は小走りで近くに行って、


「あ、ありがと」


 少しだけ息を整えてから、お礼を言う。


 オセラはそんな絵里に手を差し出すと、


「少し歩こう」


「う、うん!」


 絵里は思いっ切りオセラの手を握って、笑顔で言葉を返した。


 それから、少しの間オセラと絵里は雑談しながら歩き、やがて噴水の前まで戻ってきた。


「絵里。そろそろお別れ」


「やっぱり、行くの?」


 オセラが探していると言っていた懐かしい気配。それを探しに戻るらしい。


「そんな悲しい顔、しないで。また、会お?」


「うん……絶対、約束!」


 今日会って、少しの間過ごしただけだけど……別れるのはやっぱり寂しい。


 でも……


 絵里は笑みを浮かべると、


「またね」


 そう言って手を振る。オセラは一瞬黙って、それから、


「これ、お守り。また会おう」


 魔法で何か作ったかと思うと、絵里の手に押し当て握りさす。


 オセラは笑顔のまま手を振って、背を向けて歩き出す。


 絵里は拳を握って、オセラが見えなくなるまで見送り……オセラに貰った物を見てみた。


 それは……


「ケーキ?それもショートケーキ……あはっ」


 オセラらしい贈り物に、少し笑みを浮かべて、絵里振り返って歩き出す。


 まあ、その内会えるだろう、なんて軽く考えて少し寂しさを紛らわしつつ、ネヒィアを探す。


 オセラと歩いていた時も、探してはみたが見つからなかった。


 絵里はまだ行ってない、細い路地に入る。


 道を覚えるのが得意ではない絵里が、こんな自由に探し回れるのも、まあこの王国が狭いから……だから、お城がどこにいても常に見える。


 それなら、道に迷ってもお城が見えるのだから、問題ない。


 絵里はスタスタ歩き、やがて細い路地の出口が見える。


 と……出口の光を見た途端、急に足に力が入らなくなる。


 心臓がバクバクなって、体が震える。


「何……これ」


 呼吸が荒くなって、体が重くなる。


「はぁ……はぁ……」


 それでも、絵里は歩き続ける。ここにいては、ダメな気がしたから……


 重くなっていく足を何とか動かし、路地を出ようと、必死にもがく。


 何分か何十分か……絵里はやっとの事で路地を抜けて……


「えっ……」


 絵里の体を支配していただるさが、恐怖に取って代わり、絵里はその場に立ち尽くした。

面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、

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