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「ごちそうさまでしたっ!」
「ごちそう……さま」
ニヤニヤと嬉しそうな絵里に比べて、オセラは少し顔を赤くしながら、恥ずかしそうに身を縮めている。
絵里に何回かアーンをされ、先程ケーキを全部食べ終わった。
それから少し休憩を挟んで、まだ少し顔の赤いオセラと、それを見てまた笑顔になった絵里は、席を立ち上がる。
「あっ……そう言えばお金……」
立った瞬間、すっごく今更ではあるがそんな事を思い出した。
というか……この世界のお金を触った事も持った事もない……そんな絵里に、
「気にするな。金ならある」
「えっ、でも……」
「別にいい」
オセラはそう言ってお金を慣れたように払うと、お店から出る。それに絵里は慌てて、オセラを追った。
お店から出ると、すぐ前でオセラが待ってくれていた。絵里は小走りで近くに行って、
「あ、ありがと」
少しだけ息を整えてから、お礼を言う。
オセラはそんな絵里に手を差し出すと、
「少し歩こう」
「う、うん!」
絵里は思いっ切りオセラの手を握って、笑顔で言葉を返した。
それから、少しの間オセラと絵里は雑談しながら歩き、やがて噴水の前まで戻ってきた。
「絵里。そろそろお別れ」
「やっぱり、行くの?」
オセラが探していると言っていた懐かしい気配。それを探しに戻るらしい。
「そんな悲しい顔、しないで。また、会お?」
「うん……絶対、約束!」
今日会って、少しの間過ごしただけだけど……別れるのはやっぱり寂しい。
でも……
絵里は笑みを浮かべると、
「またね」
そう言って手を振る。オセラは一瞬黙って、それから、
「これ、お守り。また会おう」
魔法で何か作ったかと思うと、絵里の手に押し当て握りさす。
オセラは笑顔のまま手を振って、背を向けて歩き出す。
絵里は拳を握って、オセラが見えなくなるまで見送り……オセラに貰った物を見てみた。
それは……
「ケーキ?それもショートケーキ……あはっ」
オセラらしい贈り物に、少し笑みを浮かべて、絵里振り返って歩き出す。
まあ、その内会えるだろう、なんて軽く考えて少し寂しさを紛らわしつつ、ネヒィアを探す。
オセラと歩いていた時も、探してはみたが見つからなかった。
絵里はまだ行ってない、細い路地に入る。
道を覚えるのが得意ではない絵里が、こんな自由に探し回れるのも、まあこの王国が狭いから……だから、お城がどこにいても常に見える。
それなら、道に迷ってもお城が見えるのだから、問題ない。
絵里はスタスタ歩き、やがて細い路地の出口が見える。
と……出口の光を見た途端、急に足に力が入らなくなる。
心臓がバクバクなって、体が震える。
「何……これ」
呼吸が荒くなって、体が重くなる。
「はぁ……はぁ……」
それでも、絵里は歩き続ける。ここにいては、ダメな気がしたから……
重くなっていく足を何とか動かし、路地を出ようと、必死にもがく。
何分か何十分か……絵里はやっとの事で路地を抜けて……
「えっ……」
絵里の体を支配していただるさが、恐怖に取って代わり、絵里はその場に立ち尽くした。
面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、
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