89.熱い氷
「ふ…風俗……って」
「あー?そうか、お嬢ちゃんぐらいの歳ならまだ分からないか。そうだな、簡単に言えば裸でお客の言う事を聞くんだよ」
「それで……」
「金を貰うんだ。お嬢ちゃんにぴったりだろ?」
絵里の腕を掴んだまま不気味というか、嫌な笑みを浮かべる男。
まだ怖いし痛い。けど、少しは会話出来て……口が少しは言う事を聞いてくれるから、
「ど、どうして私……」
「はは、それはもちろん若いからな。若いと人気が出る。そして、おまけにお嬢ちゃんはいい顔してる。上物だからお嬢ちゃんなんだよ」
嫌な視線……舐め回すとか、下心丸出しとかそんなのではなくて、なんて言うか女子にいじめの標的にされた時の様な、怖くて逃げれない視線。
「お嬢ちゃん、本当に珍しいな。男をこんなに嫌がるなんて」
男は驚いた表情をしながら、絵里の瞳を覗き込む。
絵里はそんな視線から逃げようと首を振って、抵抗するが……
「そんなか弱い腕で、逃げれるとでも?」
腕が締め付けられて、壁に思いっ切り押し当てられる。
力が出ない。動けない。さっきからずっとおかしいとは思っていたけれど、力の入れ方が分からない。
その原因が恐怖からか、それとも別か……
絵里の瞳に涙が溜まる。怖いくて苦しくて……
「嬢ちゃん。返事を聞こう。うちで働け。はいか働きます、どっちや?」
口調も声のトーンも変わり、無表情でこちらを見てくる男。
よくある変貌の仕方で、きっと地雷を踏んだのだろう。
絵里は涙が零れそうな、グラグラと揺れる瞳を下に向け……
「……はい……」
小さな小さな一言を放った。
男はそれを聞いて、嬉しそうに歪んだ笑みを浮かべて、
「着いてこい」
絵里の腕を片方離して強引に、連れていこうとした時、男の横腹にチョップがめり込んだ。
「おい。手を離せ、その女の子から」
きめ細かく不思議な模様が描かれている水色を基調としたドレスみたいな服を着た、髪も目も水色の女の子。
そんな女の子が次は男のお腹を殴ると、男は思わず絵里から手を離して蹲る。
「次、誰かに手を出したら、殺すからな?はいか分かりました、返事はないのかよ?」
「ゴホッゴホッ……ゴホッ……」
男は咳き込み、必死に呼吸を繰り返す。そんな、一向に口を開かない男の様子に、
「返事は?」
それだけ言って地面に頭を叩きつける。それも何回も何回も。
男の表情は上からだと見えないが、息はもうまともに出来てなさそで……
「そ、その、それぐらいで」
絵里は思わず口を開いた。その言葉にピタッと女の子の動きが止まり、
「許すのか?こいつを」
水色の冷たい氷のような瞳で、自分のの顔を覗き込んでくる。
そんな瞳に自分の瞳を合わせて、
「ゆ、許す。だから、もう大丈夫。離して……あげて」
絵里の言葉を聞いて、水色の瞳が熱を帯びた。びっくりするぐらいに、女の子はどす黒く、怒りに満ちた声で
「お前、次はないからな?」
男の頭を持ち上げると、一旦手を離し、今度は首を掴んで上に投げる。
それから綺麗な蹴りで男の腹を蹴り飛ばし、ボキッなんて音を立てながら、男は地面を激しく転がり裏路地を1人勝手に出て行った。
その瞬間、絵里は体中の力が抜けて地面にへたり込む。
「おい!大丈夫か?どこか痛いか?」
そんな絵里に心配した声をかける女の子。その声はとっても優しくて……
絵里は先程から色々と限界だった。気を抜けば倒れそうになり、恐怖で心が悲鳴をあげて……体がそんな悲鳴に共鳴していた。
そして、涙も……
絵里は涙を流しながら、震えた声で、女の子に向けて
「助けてくれて……ありがとう」
無理やり作った笑顔を浮かべて、お礼を言った。
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