88.興味
「そ、それで……ネヒィア怒ってる?」
「全然」
「それならなんで、そんなに喋らないの?」
先程……エナの前では、にこにこしてたのに扉を閉めて廊下に出ると急にネヒィアから表情が消えた。控えめに言って怖い。
腕を組んでいたのもほんの数秒で、今はネヒィアが絵里を置いて廊下を足早に歩く。それを絵里が必死に追う。
いつもなら歩く速さを合わせてくれるのに……どうしよう?追い付くので精一杯で、ネヒィアと話せない。
「待って……ネヒィア……」
絵里の小さな声をネヒィアは無視して進む。
いつもなら聞いてくれるのに……
泣きそうになりながら廊下を曲がって、階段を降りて……廊下を曲がって……やがて大きな扉に着いた。そこをなんの迷いもなく、ネヒィアは開けた。
息を切らしながら絵里はネヒィアが扉の先へ行ってしまうのを見る。
何とかここまで追いついたけど……もう、無理。こっからは流石に……
膝に手を付き、扉が閉まる音を聞く。絵里の小走りとほとんど同じ速度で歩くネヒィアに、もう追いつけない。
このまま帰っても……そんな考えが頭の中を横切る。けれど、ネヒィアと一緒にいたいから……
絵里は扉に手をかけて開いた。
その瞬間、太陽の光が絵里の目に入る。
「眩し……」
手で顔を覆いながら、ゆっくりと太陽の光に慣れていく。
数秒ほどで外の景色が見れるようになり、絵里は外に出た。
それから絵里は真っ直ぐ歩いて、このお城の庭の中を歩く。まあ、庭と言っても大して広くはない。十何秒かで庭を出て石段を下りる。
どうやら、お城の辺り一体だけ少し高くなっているらしく、街の風景がそこから全体的見渡せる。
お城の外は人がまあまあ歩いている、小さな街。この王国に初めて来た時となんら変わりない平和な街。
絵里は1分とかからず石段を下りて、街に出た。
「ネヒィアは……どこ?」
辺りをキョロキョロ見渡すが、ネヒィアの姿はない。絵里は小走りで街の中を見て回る。
「はぁ、はぁ」
さっきから体が痛いし、ちょっとだるい。急に運動したせいで、息も切れるし……
こんなに走るのってキツいの?最近確かに運動してなかったけど……
絵里はものの30秒で息が切れて、ふらふらしだす。
「はぁ、はぁ、ここは……」
走ることに夢中で気付かなかったが、どうやら裏路地みたいな所に入ってしまったらしい。
絵里は引き返そうと後ろを振り向く。だが、その瞬間、ぎゅっと腕を握られて壁に押し付けられる。
「ネヒィ……」
「お嬢ちゃん、いい顔してるね」
絵里の声は途中で止まり、変わりに男の声が響く。
「ねぇ、いい事しない?儲けられよ?」
男の声に絵里は目に涙を浮かべながら震える。
嫌だ……助けて……ネヒィア……
嫌な思い出が絵里の頭の中を駆け巡るが……絵里の恐怖を消したのは意外にも……
「お嬢ちゃん、誰か男に痛い事でもされたのか?」
目の前の男だった。
「別に襲ったりしねーよ。お嬢ちゃん女なんだから。そう言えば、女に襲われたことはないよな?」
一瞬この男は何を言っているのか理解出来なかったが、この世界は絵里から見れば百合世界であり、BL世界なのだ。
「え、えーと……その……」
「ん?あー、そう言えば何するかまだ言ってなかったな。お嬢ちゃん、風俗に興味はあるか?」
面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、
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