76.月よりも綺麗なもの
眠気と言うよりも、だるさに体を包まれながら、絵里は目を開ける。
薄暗い、静かな部屋。聞こえるのは、もう1人の寝息だけで……と、そこで裸の誰かに抱きつかれている感触に気が付く。
暖かくて柔らかい……最近、やっと慣れた感触。
絵里はとりあえず起き上がり、自分の右腕に抱きついている人を触って確認する。
「……ネヒィア?」
感触は裸のネヒィアだ。ついでに言うのなら、匂いもネヒィア。これはネヒィアだ。
絵里はそう確信しながらも、少し疑問に思う。
「ネヒィアと一緒にいたのは……温泉に入る前?」
たしか、温泉に一緒に入ったのはマーラ。ネヒィアは、温泉に入る前に分かれたはずだ。
そう言えば、温泉で何をしたっけ?
マーラをイかしたら……今度は私がマーラにイかされて……
「まあ、いっか」
断片的な記憶しか残っていない絵里は、すぐに思い出すのを諦めて、
「それよりも、エナ達は……どこ?」
部屋を見渡しても、ベットは今寝ているもの1つだけで、他にない。
窓はあるにはあるがカーテンで閉められていて……絵里はネヒィアから優しく腕をほどくと、立ち上がってカーテンを限界まで開ける。
「夜……私、どれぐらい寝てたんだろ」
外の景色は、月と星がこれでもかと綺麗に輝き、その輝きが静かに小さな街を照らしていた。
「綺麗……夜はやっぱり……」
ガチャ。絵里の小さな声を遮って扉が開く。絵里はすぐに振り返り、扉を開けた人を確認する。
扉を開けたのは、
「おっ、おう。目覚めておったか」
何故かメイド服を着たハクだった。
「なんで、メイド服?」
「あーと、これはな、ちょっと興味本位で……マーラに頼んで、着せてもらったのじゃ」
ハクが視線を逸らして、苦笑いを浮かべる。
まあ、そんな表情を見なくともハクが嘘を吐いている事ぐらい分かる。
言い方が悪いかもしれないが、ハクはネヒィアぐらいしか興味が無さそう。
だから、
「それは、エナに脅されたの?それとも、ネヒィア?」
「ネ、ネヒィアはずっとそこで寝ておる……だから……」
「エナ、か。大変だね、ハク。辛い時は言ってね」
少し同情して、絵里はハクに優しく言葉をかける。
それを聞いて、ハクは走って絵里に近付くと、絵里を掴んで、
「辛い。本当に辛い。助けてくれ。おかしいのじゃ。姉様の機嫌が。情緒不安定というか、急に怒ったかと思えば、抱きついて好き好き言ってきたり……」
「へぇー、そこにいたのねハク。絵里ちゃんと何してるの?」
開けっ放しだった扉から、廊下の光を背にエナが怒ったように現れる。
「姉様、これは違うのじゃ。ただ……ただ……」
「温泉から今までの事を聞いてたの。エナ。そのメイド服、超エロい」
「あら、ありがと絵里ちゃん」
怯えたように震えるハクの手を握って、絵里はエナを褒める。
それに機嫌を良くしたエナが上機嫌に、
「そう言えば……絵里ちゃんは気を失ってたわね。マーラが絵里ちゃんの体を拭いて、ここに寝かせたのよ。ハクと私は、ネヒィアが体を拭いてくれて、隣の部屋に寝かせてくれたわ」
「でも……どうやってマーラとネヒィアは温泉からここまで運んだの?」
「私もさっき知ったけど、温泉の両隣に部屋があって、ここは温泉の隣の部屋なのよ」
エナがいつもの機嫌に戻って、説明してくれる。
どうやら、気を失った私をマーラが綺麗にしてここに寝かせてくれたらしい。エナとハクはネヒィアが。
絵里はそれに納得して、今度は
「エナ。ハクに優しくしてあげてね?」
「分かったわ。あっ、ハク次の仕事よ。来なさい。絵里ちゃん、ネヒィアをよろしく」
「わ、分かった。分かったから、お尻を引っ張らんでくれ。んっ♡」
えっ……今のハクの声、めっちゃ可愛い。
絵里は少し驚き感動していると、エナはハクを連れてそそくさと部屋から出て行った。
「嵐みたいだった……あっ、どうしてメイド服着てるのか聞くの忘れた。それに何してるのかも」
絵里は少し残念がって……
「主様。おはよ」
「ああ、ネヒィア。おは……」
ネヒィアに返事をしようとネヒィアを見た瞬間、絵里はそこで絶句し、1歩後ろに下がった。
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