6.温泉 2
「あわあわ、おっわー、寒いー」
温泉からエナの魔法で飛び上がり、なんとか魔物に食べられずに済んだ絵里達3人。
だが3人共、裸であり……
「主様。おしくらまんじゅう、しよ?」
「なっ、ネヒィア。どこでそんな言葉を覚えたの?日本にしかないはずの言葉よ?」
「……?お姉ちゃんが前にやって来たよ?覚えてないの?」
ネヒィアが首を傾げながら、抱かれたエナの腕からするりと抜け、ぐちゃぐちゃに抱き合っていた3人は、ほどけるようにして、空中で体制を立て直す。
そしてネヒィアは、絵里とだけ手を繋いで引っ付いた。それをエナは寂しそうに見て、エナもまた絵里に手を伸ばそうとした、その時
「ウォォ――――――ゥ」
下にいた魔物が、エナを睨みつけ、そのまま飛び上がって来た。
それを涼しい顔でエナは見下す。何もしていないはずなのに、魔物はまるで見えない壁に当たったかのような衝撃を受けて温泉へと落ちる。
ズバーン、という音を立てながら大きな水しぶきをあげた魔物は、温泉の底に当たったようで、体の3分の1だけを沈めてピクピク震える。
そんな様子を見て絵里は、さっきから少し気になっていたことを質問してみた。
「ねぇ、なんであの魔物は服を着てるの?」
そう、今このタイミングだからこそ言うが、何故、青色の服をその魔物は着ているのか。それと、
「まんま、イノシシ……あの魔物の名前って何?」
青色の服を着た、大きなイノシシ。体毛は白色で、クリスタルの様に透明な牙が2本生えていて、幻想的というか、まあ、すごい。
初めて見るそんな魔物に、少し興味が沸いた絵里の質問に、エナが答える。
「ウリ坊って名前よ……服を着てるのはおそらく、飼われているからだと思うわ」
ウリ坊。日本ではイノシシが子供の時のみ言われる名前だが……まあ、それよりも
「あの魔物って飼えるの?めちゃくちゃ大きいのに」
「んー。分からないけど多分、私達よりも弱い……エルフかなんかが、飼っているウリ坊なのかも知れないわね」
「……?エナとネヒィアってエルフより強いの?てか、人の方がエルフよりも強い?」
エルフ。……エルフ。かの有名な、なんか色々なものに出てくるやつ。なんでもありで、もう耳が長ければそれで良いみたいな……扱いがなんか軽いよね。
「主様?エルフの方が人族よりも強いよ?」
「ん?」
「え?」
絵里が首を傾げ、それにネヒィアはあやかる。
あれー?エナとネヒィアって人じゃないの?なら、何?
絵里は恐る恐る、エナとネヒィアを交互に見て
「エナとネヒィアって、人じゃないの?」
「そう言えば、言ってなかったわね。絵里ちゃん。私とネヒィアは、一応この世界では、神獣って呼ばれてるのよ」
「神獣?神の獣……獣?」
「そうよ。この世界にいる3昼の神獣のうちの2昼よ。だから、そこそこ強いの。まあ、絵里ちゃんには及ばないけど、ね」
「えっ?」
神獣よりも強いの?私?おかしいな。エルフよりも弱い、人のはずなのに……
「主様?どうしたの?」
「い、いや。私って人じゃないの?」
「絵里ちゃんはこの世界だと、生命っていう神よりも上の存在になるわ」
「神の上?そんなにすごいの私?てか、そんなに強いの私って?」
エナ、ネヒィアの分かりやすい説明。だが、絵里にとっては情報量が多すぎて……だんだんと頭がおかしくなってバカになり出す。
そんな時だった。例のウリ坊という魔物が温泉から再び飛び上がる為か、魔法か何かを使い出した。
何個か大きめの魔法陣が出て数秒間を置くと、再びウリ坊は温泉の底を蹴り、エナに襲い掛かる。
だが、ウリ坊が飛び上がったと同時に、温泉の水がぐっと外に押し出され、森に溢れ出す。
それをエナは見向きもしない。ただ、迎え撃つためにウリ坊を見下すだけだが……
ネヒィアは少し動くと、温泉に初めて降り立った場所を見つめて、一言。
「主様のパンツが……どっかいっちゃう」
その言葉に、ネヒィア、絵里、そして、ウリ坊を相手にしていた、エナまでの裸の3人組がウリ坊を完全に無視して……
ハンカチの次はパンツの奪い合い。ビリッと聞こえてはいけない音が響いて……それと同時に絵里の悲鳴、ネヒィアの「やった」という可愛い声、エナの悔しがる悲痛の叫び声が森の中に響いた。
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