52.昔の私
『魂とは、肉体にのみ溶け込んでいる力の根源』
そう、大昔に誰かが定義した。
簡単に言うと魂は液体である、と。
そして、あらゆるどんな生命も、魂は少しずつ抜けていく、と
つまり、寿命とは、肉体から魂が抜けていく早さであり、それが遅いか早いか。
ただ、肉体を持っていないものについてはこの時、触れられてはいない。それは生き物として定義されないから。
だが、魂だけの存在であっても魂は溶け、やがてなくなる。
そんな定義が成され広まった頃、誰かがこんな疑問を口にした。
【魂とは、一体誰が創るのか?】
この疑問を解決しようと、色々な人が調べ研究した。だが結局、今になってもこの疑問は解決していない。
ただ……魂を具現化する魔法、という最上位魔法ができ……この魔法は最初、処刑用の魔法として使われた。
だがやがて……歴史から消えていく。
先程、魂は液体と言った。通常は見えない魂を体から引き離し見えるようにする。一見問題はないように見えるが……
魂……要は液体が急に外に出た肉体はその負荷に耐えられず……内側からひしゃげる……
そうなった生き物は皆、見るも無惨にぐちゃぐちゃになり即死する。
魂関係の魔法は、そんな確実に相手の命を奪う魔法故に、全てが隠蔽され、歴史から消された。
だから本来、絵里は魂の具現化の魔法など使えるはずはないのだが……
◇
自分の魂を引っ張り出した絵里に、エナが必死に叫ぶ。
「やめて!……絵里ちゃん!お願い……」
だが、絵里にそんな声は届かない。頭がボーッとして、体から力が抜けていく。
体の中にあった魂は徐々に絵里の胸の前に集まり……
「あ゛ッッッ―――」
魂の形がぐにゃぐにゃに変化しだした時、絵里の全身に痛みが走った。
それを見て、エナの叫びは悲鳴に変わる。
「ダメ!絵里ちゃん!」
けれど、やっぱり絵里には聞こえなくて……絵里の視界は歪み出す。
魂は見れた。けど……戻し方が分からない。というか、とてもだるい。そして、痛い。
内側から引っ張られて……体が潰れそうになる。それに絵里は何とか耐えるが……
痛みはどんどん増していく。
「あ゛がッッ―――」
息が上手く吸えず、苦痛に染った声しか出ない。痛い、痛い、苦しい……
「絵里ちゃんが……そんなるなら、もういいから!お願い!もう……やめて……苦しまないで……」
エナの悲痛な叫び。
それが絵里に届いたのか、絵里はエナの方に視線をやる。
なんとなく、本当になんとなく聞こえた気がした。エナが泣きながら、言っている事が。
だから絵里は、笑った。
エナに向けて、ふふっと可愛く誰もが見惚れるぐらい、優しく笑った。
そんな笑顔にエナは頬染めて……言葉を失う。
そして……そんなエナが歪み出す。ついでに言えば、見えている景色全てがぐるぐると回って……パッと視界が暗くなる。
真っ暗闇で……ただ痛みだけを感じる。
死んだのだろうか?それとも……
「うが……ぐ……あ゛ッッッ―――」
どんどん増していく痛みに、絵里は声をあげて耐える。痛くて苦しくて……体がだるさを思い出す。
でも、それでも……絵里は耐えて……涙を零しながら下を向く。さっきまで見えてた魂はなく、ただ手を胸の前に置いている絵里は……
自分の手を見て、驚く。自分の手の指先がない。正しく言うならどんどんなくなっていっている。
それを見て、絵里はさっきまで全く持って感じていなかった、恐怖が全身を襲った。
死にたくない……エナとネヒィアに会いたい……
とてつもなく怖かった。もう死ぬんだ……と。もう、終わりなんだ……と。
絵里がそんな死の恐怖に支配されそうになった時、
――目を開いて、主様!――
ネヒィアの声が真っ暗闇に響き……やがて、白い光が絵里の前に差し、黒を割る。
絵里はだるくて重い、痛みが走る体で……それでも何とか手を伸ばしてそれに触れようとする。
あれに触れれば……後ちょっとで……
「ねぇ、お前は許して貰えると思ってんの?あんだけ、罵って泣かせたのに。悪いと思ってるなら、死ねよ」
そんな昔の絵里の声と同時、あと少しで届きそうだった絵里の手が、パチッと弾かれた―――
1章終盤的な?章ごとに区切りを付ける予定……ではありますが、どうなるかは分かりません。
それよりも誤字脱字を直さなければ……
面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、
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