51.魂の色
「ニャ?」
絵里に近づいていたマーラが、変な声をあげる。
別に絵里が起き上がった訳でもなく、特に変わったことはないのだが……
「絵里ちゃん?」
何かが引っかかって……マーラは絵里に近付き、触れようとして、
パキパキっと言う音、次いでパリーンと魔法陣が弾ける音が重なって響いた。
そう、マーラがハクを閉じ込めていた魔法が破られたのだ。
それにマーラは嫌な予感を感じて、絵里を抱き抱えようと手を伸ばした瞬間、バチッと弾かれた。
「誰ニャー?」
マーラは目を見開きながら一言怒りの言葉を発して、絵里、ハクから距離をとる。
その瞬間、絵里が目を閉じたまま浮き、空中で立った。
「誰ニャ……誰ニャ?こんな事……」
「焦っておるのか?哀れじゃのう」
マーラの困惑と怒りが混じった声に、ハクがバカにするように反応する。
マーラはハクを睨みながら
「ありえないニャ。絵里ちゃんが起き上がるなんて、無理なはずニャー」
「絵里はのう、もう弱くはないぞ?お主の負けじゃ」
ハクが余裕ある笑顔を浮かべ、絵里を一瞥する。浮いたままで、特に変わってはいない絵里。
そんな絵里が唐突に動き出す。手を胸の前に持ってきて、押し当てる。そして……
「な、何をやってるニャ?バカのなかニャ?そんな事したら……」
絵里の行動を見たマーラが初めて焦った表情を浮かべながら、声が裏返りそうなほど焦った声を出した。
だが……
「触れない、と学習できないのか?バカじゃのう」
マーラが絵里に一瞬で近付き触れようとするが、絵里に触れようとする度に、何回も何回もバチッと弾かれる。
痛くはないが、到底触れる気がしない。それがマーラの癪に触って
「こんなにイライラしたのは初めてニャー。殺してやる、悪魔」
どす黒い声を響かせたマーラが、ハクを殴ろうとした、その時白く綺麗な何かが輝き出した。
それは……
「絵里ちゃんだめニャ!死ぬニャ!や、やめるニャ!」
紛れもなく絵里の魂。その魂を見てマーラは少し泣きそうな声をあげるが……絵里の魂はどんどんと輝きを増す。
眩しいはずなのに、眩しくない。重そうに見えるのに、軽そうなも見える。白い色のはずなのに、不思議な色に見える。
とても綺麗で……けれど、段々と輝きが歪み出す。不規則に点滅しては、形が常に変わり出す。
そんな光景に、ハクは言葉を失って、マーラは……
「だめニャ!絵里ちゃん!本当に、本当に死んじゃうニャ!」
泣き声……いや、悲鳴に近い叫びを何回も繰り返す。
ハクは知らない。けれど、マーラは……マーラだけは知っている。
嫌な予感とかそんなものではなくて……心の奥底から湧き出る、嫌悪感。それが、嫌な汗となって、体の震えとなって、形になる。
心が震え出すと声も震え出し、嫌な汗は体の力を奪い取る。
立つのがやっとで……上手く息が出来ない。頭は息を吸おうとしているのに、体は息を吐こうとしている。
頭と体のそんなぐちゃぐちゃな指示に、マーラは初めて死の恐怖を覚える。
絵里が今やっている魂の具現化。魔法の最上位でありながら、誰もやらない、くそ魔法。
やれないではない。みんな、やらないのだ。だってやったら死ぬんだから。
だから……手遅れになる前に
「絵里ちゃん!まだ、まだ……」
けれど、マーラのそんな叫びは、悲鳴は……
「あ゛ッッッ――――」
絵里の苦痛の叫びに、散らされた。
それと同時、マーラも声が掠れ出し、声が完全に出なくなる。
何とか、何とか絵里に触ろうと近づくマーラだが……何回やっても結果は同じ。
ハクとマーラは言葉を失って……何をやっても無駄に終わって……
マーラは涙を浮かべながら、願う。死なないで……
けれど、そんな願い虚しく、絵里は指先から崩壊しだす。サーっと溶けていくのだ……
マーラは知っている。魂と体を引き離せば……どれ程の痛みが来るのかを……
朝、明るくなる時間がどんどん早くなってきて……時々びっくりするんですよね。
もう夏か……夏祭り行きたい……
面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、
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