47.先手
ハクに礼を言って、絵里は魔法陣の中……エナ、ネヒィアがいるであろう場所に入った。
その瞬間、白い光が絵里を包み込み、一瞬だけ目を瞑る。そして……目を開けると……
「エナ!ネヒィア!」
何もない白い空間の中で、エナ、ネヒィアが手を繋いで横たわっていた。
どちらとも酷く体が薄く、呼吸が速い。絵里の声にすら反応せずに、目を閉じたまま。
絵里はエナ、ネヒィアに近寄ると、体に触れる。いつもなら、温かく弾力があるお腹なのに……冷たく沈んでいく。あるようでないような、そんな感触。
「エナ!ネヒィア!目を開けて……ねぇ!」
背中に冷たい汗が流れ、心の中が悲鳴をあげて痛み出す。ドキッなんて生温いものでは無い。
ギュキュと締め付けられて、はち切れそうになり、吐き気が襲ってくる。
今までで1番嫌な感覚。絵里はエナとネヒィアに共鳴するかのように呼吸が早くなり、顔は青くなる。
理性が言う。何とかしないと。
でも、本能が言う……
「もう、手遅れニャー」
唐突に響いたマーラの声。それに絵里はドキッとして目を見開く。だが、すぐにどす黒い声で
「なんで、いるの?」
「ニャー。そんな怒らなくても……」
「消えて」
「え、絵里ちゃんはたまに怖いニャー。けど、簡単な話ニャー。私も魔法陣から入ってきた。それだけニャー」
絵里の声に少し怯えながらも、マーラは余裕ありげに笑みを浮かべて答える。
そうして、舌なめずりをして
「絵里ちゃん。もう、お終いニャー。私と一緒に暮らそうニャー」
絵里に手を伸ばし、手招きをする。
その仕草に絵里は……
「遅いニャー。さっきはわざと当たってあげたけど、もう茶番は終わりニャー」
怒り任せにマーラに拳を突き刺し……防がれた。絵里の拳を握ったマーラの手はビクともせず……
「どっか行って!邪魔!いちいち、いちいちなんなの?」
「私は絵里ちゃんの、愛人ニャー」
「違う!消えて、どうして……」
絵里が泣きながら、マーラに言葉を零すと……
「それは、ハンカチ、ニャー?」
ネヒィアにあげた、絵里のハンカチがそっと涙を拭いて……
――絵里ちゃん、ありがと。けど、もう……――
――長くはないわ。ありがとう、絵里ちゃん――
破れたハンカチ。エナとネヒィアが取り合って、ネヒィアが取った……
「ハン……カチ」
「……?そのハンカチ、なにか変な感じがするニャー……絵里ちゃん?」
温かいそのハンカチは、絵里の涙をそっと拭いて……
「絵里ちゃん!そのハンカチはマーラが……」
「もう、手遅れニャー」
ハクの声とマーラの声が重なり、絵里はスっと体から力が抜けていく。
段々と地面が近づいてくる絵里の耳に、ハクの焦った声が届く。
「マーラは最初から――――」
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