表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/201

4.没収

 

「私が主で、エナとネヒィアは私に仕えている……それで間違はないんだよね?」


「「はい」」


 絵里(えり)によって、地面に正座させられた裸の少女2人は、少しだけ申し訳なさそうな声色で、同時に返事をする。


 だが……反省している感じがあんまりない。というか、なんでニヤニヤしてるの?


 先程2人に抱きつかれた絵里が、大声をあげてなんとか2人を座らせた。たったそれだけの事に5分もかかってしまったのは、気のせいだと信じよう。


「2人は姉妹で、いや……まず、どうして裸なの?」


 少し疲れた顔の絵里が、おバカな頭で冷静に考えてみた結果、そもそもなぜこの2人は裸なのか?という疑問が湧き出てきた。


 でも普通、なぜ初めて会う絵里に仕えているのか?とか、なぜ異世界に呼ばれたのか?とか、他に色々と気になる事はあるはずで……


 意外な質問に2人は目を合わせてから、当たり前とでも言うように、


「裸が好き、だから?」


「服が嫌いなのよ。鬱陶しいから」


「そ、そうなんだ。へー」


 裸族(らぞく)……絵里の頭の中でそんな言葉がふっと湧き出てきた。


 だが、それを絵里は振り払うようにして首を少し振り、もう(ろく)な事がなさそうなので、この話題を変えようと、これからどうするべきか考えてみた。


 ここは異世界。なら、人もいるはずで……街も、もちろんあって……なら、


「エナ、ネヒィア。ここから1番近い街はどこか分かる?」


 絵里は、大人がする様なゲームや、あっち方面の漫画等々、色々と好きな物がある。


 けれども、1番好きな事は絵を描くことであり、意外にも上手いのだ。特に人物画……ぜひ異世界の人達の絵を描いてみたいのだが……


「ここから……3日かな?小さい国の街で、そこが1番近いはず」


「3日って歩きで?」


「えーと、魔法で飛んで、3日だよ、主様」


 ネヒィアのそんな言葉に少し落ち込む絵里だが……魔法で空を飛べると、それならば!


「なら、今から行こう!早く、ほら早く!」


 一気にテンションが上がった絵里の声。それに反応するのは……


「でも、裸、だから……」


「絵里ちゃん。たぶんだけど、その街は人族からなってたはずだから……裸だと捕まるわ」


 少し困った様に視線を逸らしてネヒィアが、諭すようにエナが反応する。


 そんな2人に絵里は、頭の中でプチッと音がして……少しキレた。


「は?何?裸だったら人に捕まるって分かってんなら、最初から服、着ればいいよね?」


 いつもなら、こんな事でイラッとしないはずなのに、エナの常識だよ、みたいな発言。それがすごくイラッときた。ここ最近で、間違いなく1番。


 だから絵里はエナに向けてまた口を……


「え、えっと、ごめんなさい」


 開こうとした瞬間、ネヒィアの申し訳なさそうな声が聞こえて、頭が冷える。少し短気なのが絵里の短所。


 でも、怒った所で何もいい事はない。それぐらいは、絵里だって知っている。


 だから絵里は落ち着く為、深呼吸をする。息を吸って、ゆっくりと吐く。


 そうして絵里は、出来るだけ穏やかに口を開いた。


「ごめん。服は、私の服を着させてあげる。それでいい?」


 絵里の言葉にエナとネヒィアは同時に頷く。それを見て、絵里は服に手をかけて……


 着ていた上着をネヒィアに、ブラウスの上に着ていたセーターをエナに、着せてあげる。


 静かで……誰も喋らない無言の時間。けれど、それは少しの間だけで、嬉しそうなネヒィアの言葉が、空気を変える。


「主様の匂い、いい匂い」


 そんなたった一言で、張り詰めていたものが消えて……今度はエナが声を出す。


「少し小さいけど、なんとか……これ、擦れ……ちょ……ヤバいわ」


 ネヒィアよりも、お胸が大きいらしいエナが真顔でそんな事を言うが、絵里は完全にスルーしてネヒィアに向けて手を差し出し


「ほら、早く。街に行こ。ネヒィア!」


 はしゃいだ声で、ニコニコしながら絵里は言う。そんな絵里に、エナは


「待って絵里ちゃん。これなんか、チクチクして、変な感じに……」


「なら、落ち葉でも入れれば?ほら、そこらにいっぱいあるよ?」


「え、絵里ちゃん、お、怒ってるの?」


 静かで暗い声。その上無表情の絵里の言葉に、エナはオロオロしだす。


 だが絵里は、そんなエナの姿を無表情を貫き見続ける。


 別に絵里は、キレてなんかいないし、怒ってもいない。強いて言うなら、からかっている。


 可愛いもの程、色々な角度から見れば見るほどたくさんの可愛さ、という物を見つけられる。


 それを探して発見し、見る。それが絵里の可愛いものを見る時の楽しい方の1つ。


 だから、絵里は言う……いや、初めて命令をしてみた。


「エナ、そのままも、落ち葉も嫌なら、脱いで裸になって。街に着いたら、捕まらない様に手で隠せばいい。それで、いいでしょ?」


「え、絵里ちゃん?う、嘘……だよね。き、着るから、我慢する……」


 言葉の最後の方は、とてもか細く、まるで呟くようにエナは言った。


 涙目で狼狽(うろた)えているエナの姿。それは、今まで見てきた漫画、アニメキャラなんかと比べ物にならない程可愛く、愛らしい、絵里好みのタイプ。だから……


「エナ。しょうがない。もう、置いて行くね!」


「ちょっと、お願い。許して。絵里ちゃん、我慢するから、本当に」


 もう、後少しで泣いてしまうと分かるエナの声。その声にまあ、これぐらいかなと、絵里は思い、


「なら、分かった。髪で隠せば?はい、没収ー」


 絵里の容赦ないトドメの一言で、エナは地に泣き崩れて……そんなエナの姿にネヒィアが


「お姉ちゃんが、()とされて、びくびく震えて……地面を濡らした」


 少し誤解を生みそうな言葉をぽつりと零した。

面白いと思った人、百合が好きな人。ぜひ、ブックマークをしていただけると……それと、

☆☆☆☆☆

↓↓↓

★★★★★

星つけて下さい。1人、作者が家で喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ