4.没収
「私が主で、エナとネヒィアは私に仕えている……それで間違はないんだよね?」
「「はい」」
絵里によって、地面に正座させられた裸の少女2人は、少しだけ申し訳なさそうな声色で、同時に返事をする。
だが……反省している感じがあんまりない。というか、なんでニヤニヤしてるの?
先程2人に抱きつかれた絵里が、大声をあげてなんとか2人を座らせた。たったそれだけの事に5分もかかってしまったのは、気のせいだと信じよう。
「2人は姉妹で、いや……まず、どうして裸なの?」
少し疲れた顔の絵里が、おバカな頭で冷静に考えてみた結果、そもそもなぜこの2人は裸なのか?という疑問が湧き出てきた。
でも普通、なぜ初めて会う絵里に仕えているのか?とか、なぜ異世界に呼ばれたのか?とか、他に色々と気になる事はあるはずで……
意外な質問に2人は目を合わせてから、当たり前とでも言うように、
「裸が好き、だから?」
「服が嫌いなのよ。鬱陶しいから」
「そ、そうなんだ。へー」
裸族……絵里の頭の中でそんな言葉がふっと湧き出てきた。
だが、それを絵里は振り払うようにして首を少し振り、もう碌な事がなさそうなので、この話題を変えようと、これからどうするべきか考えてみた。
ここは異世界。なら、人もいるはずで……街も、もちろんあって……なら、
「エナ、ネヒィア。ここから1番近い街はどこか分かる?」
絵里は、大人がする様なゲームや、あっち方面の漫画等々、色々と好きな物がある。
けれども、1番好きな事は絵を描くことであり、意外にも上手いのだ。特に人物画……ぜひ異世界の人達の絵を描いてみたいのだが……
「ここから……3日かな?小さい国の街で、そこが1番近いはず」
「3日って歩きで?」
「えーと、魔法で飛んで、3日だよ、主様」
ネヒィアのそんな言葉に少し落ち込む絵里だが……魔法で空を飛べると、それならば!
「なら、今から行こう!早く、ほら早く!」
一気にテンションが上がった絵里の声。それに反応するのは……
「でも、裸、だから……」
「絵里ちゃん。たぶんだけど、その街は人族からなってたはずだから……裸だと捕まるわ」
少し困った様に視線を逸らしてネヒィアが、諭すようにエナが反応する。
そんな2人に絵里は、頭の中でプチッと音がして……少しキレた。
「は?何?裸だったら人に捕まるって分かってんなら、最初から服、着ればいいよね?」
いつもなら、こんな事でイラッとしないはずなのに、エナの常識だよ、みたいな発言。それがすごくイラッときた。ここ最近で、間違いなく1番。
だから絵里はエナに向けてまた口を……
「え、えっと、ごめんなさい」
開こうとした瞬間、ネヒィアの申し訳なさそうな声が聞こえて、頭が冷える。少し短気なのが絵里の短所。
でも、怒った所で何もいい事はない。それぐらいは、絵里だって知っている。
だから絵里は落ち着く為、深呼吸をする。息を吸って、ゆっくりと吐く。
そうして絵里は、出来るだけ穏やかに口を開いた。
「ごめん。服は、私の服を着させてあげる。それでいい?」
絵里の言葉にエナとネヒィアは同時に頷く。それを見て、絵里は服に手をかけて……
着ていた上着をネヒィアに、ブラウスの上に着ていたセーターをエナに、着せてあげる。
静かで……誰も喋らない無言の時間。けれど、それは少しの間だけで、嬉しそうなネヒィアの言葉が、空気を変える。
「主様の匂い、いい匂い」
そんなたった一言で、張り詰めていたものが消えて……今度はエナが声を出す。
「少し小さいけど、なんとか……これ、擦れ……ちょ……ヤバいわ」
ネヒィアよりも、お胸が大きいらしいエナが真顔でそんな事を言うが、絵里は完全にスルーしてネヒィアに向けて手を差し出し
「ほら、早く。街に行こ。ネヒィア!」
はしゃいだ声で、ニコニコしながら絵里は言う。そんな絵里に、エナは
「待って絵里ちゃん。これなんか、チクチクして、変な感じに……」
「なら、落ち葉でも入れれば?ほら、そこらにいっぱいあるよ?」
「え、絵里ちゃん、お、怒ってるの?」
静かで暗い声。その上無表情の絵里の言葉に、エナはオロオロしだす。
だが絵里は、そんなエナの姿を無表情を貫き見続ける。
別に絵里は、キレてなんかいないし、怒ってもいない。強いて言うなら、からかっている。
可愛いもの程、色々な角度から見れば見るほどたくさんの可愛さ、という物を見つけられる。
それを探して発見し、見る。それが絵里の可愛いものを見る時の楽しい方の1つ。
だから、絵里は言う……いや、初めて命令をしてみた。
「エナ、そのままも、落ち葉も嫌なら、脱いで裸になって。街に着いたら、捕まらない様に手で隠せばいい。それで、いいでしょ?」
「え、絵里ちゃん?う、嘘……だよね。き、着るから、我慢する……」
言葉の最後の方は、とてもか細く、まるで呟くようにエナは言った。
涙目で狼狽えているエナの姿。それは、今まで見てきた漫画、アニメキャラなんかと比べ物にならない程可愛く、愛らしい、絵里好みのタイプ。だから……
「エナ。しょうがない。もう、置いて行くね!」
「ちょっと、お願い。許して。絵里ちゃん、我慢するから、本当に」
もう、後少しで泣いてしまうと分かるエナの声。その声にまあ、これぐらいかなと、絵里は思い、
「なら、分かった。髪で隠せば?はい、没収ー」
絵里の容赦ないトドメの一言で、エナは地に泣き崩れて……そんなエナの姿にネヒィアが
「お姉ちゃんが、堕とされて、びくびく震えて……地面を濡らした」
少し誤解を生みそうな言葉をぽつりと零した。
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