38.真実
「久しぶりニャー。元気してたかニャー、絵里ちゃん?」
暗闇の中、マーラの楽しそうな声が響く。絵里は先程目が覚めたと同時、マーラによって服を脱がされ、身動きが取れずもがいていた。
「活きがいいニャー。それにしても絵里ちゃんは、どうしてあんな悪魔と、手を繋いでいたニャー?あの悪魔は、近づかない方がいいニャー」
「……悪魔?それはもしかして、ハクの事?」
マーラの声がする方向に絵里は、確認するような声色で言葉を投げ、身をよじる。
何かで縛られている訳ではなく、閉じ込められている……いや、全身に何かがまとわりついていて動けない。
けれど、あえて口だけは動かせるようにしているのか、唇の周りだけは何も感じない。だから、マーラのハクを知ってるかのような言葉に
「マーラは……ハクを知ってるの?」
「もちろんニャー。あの悪魔は、悪い意味で有名だから知ってるニャー。別の世界とこの世界を繋げた悪魔。時空と空間に亀裂を生んで、この世界を壊しかけた悪魔ニャー」
暗闇の中、マーラはまるで昔話をするかのように語り、絵里に近づく。
言葉の最後の方になるほど楽しそうに語って、1歩また1歩と足音を響かせる。やがて、絵里の前まで来て
「けどそのおかげで、もしかしたら、絵里ちゃんが来たのかもしれないニャー。もしそうなら、少しは評価を改めるニャー?」
絵里の耳元で、マーラはゾクッとするような声と吐息を漏らし、絵里は体を震わす。
「絵里ちゃん。もう限界ニャー。だから……」
「主様!」
マーラの手が絵里の唇に触れたその瞬間、ネヒィアの声が響き、次いで暗闇に亀裂が走る。
白い光が暗闇を照らし……ネヒィア達の姿が段々と見えるようになる。
絵里は1番近くにいるネヒィアに視線を向け、目を合わす。するとネヒィアは、息を切らしながらもにっこりと笑い……
「主様。あとは、マーラ、だけだよ?」
「ニャ?」
ネヒィアの言葉に反応したのは、絵里ではなくマーラ。間の抜けた声を漏らしながらもすぐに、辺りを見渡す。
焦って驚いたような視線。それを辺りに向け……やがてネヒィアに戻った。
だが、そこでマーラはいつもの余裕のある視線に戻って……ニヤッと皮肉げに笑うと
「隠しても無駄。魂が崩壊しだしてるニャー。ネヒィアとか言ったニャ?頑張ったニャー」
マーラの笑い混じりの声が響いたと同時、辺りが一際大きな白い光に包まれて、元王国ナタラの景色へと戻る。
絵里は眩しくてつい目を閉じた。
数秒して白い光はなくなり……絵里はまた目を開く。するとそこには、エナとハクそれと所々に倒れたマーラに似た見た目のビーストが、きちんと見えるようになり……
「主様、大丈夫?」
マーラの言葉を無視して、絵里だけに発せられた、ネヒィアの言葉。それが絵里の耳に届き……絶句さ、言葉を失わせた。
なんで、ネヒィアは泣いてるの?
瞳から涙を零して、悲しそうに涙を目に溜めて……それでも微笑みを浮かべているネヒィア。その姿はとても痛々しくて……ネヒィアが、ネヒィアが……
絵里は言葉が出ないのに口を開き……ハクは視線を逸らし、エナは目を見開いて固まっている。
嫌だ。ねぇ、どこに行くの?ネヒィア!
ネヒィアが纏っている優しいオーラが、色を持ったように、意志を持ったように辺りを優しく包み込み……皆を動けなくさせる。
だが、そんな中でもマーラだけは笑って……
「いいニャー。いいニャー。もっともっとニャー。『氷結地獄』」
そう魔法を唱えて、動けない絵里を捕まえる。瞬間、マーラと絵里の周りに無数の魔法陣が浮かび上がったと思うと、そこから氷の剣が姿を現し
「絵里ちゃんを守らないとニャー。じゃないと、この剣が刺さって死ぬニャー」
マーラの言葉と同時、剣は飛び出す。そして、グサッと剣が刺さったのと、絵里が目を見開いて……心の底からキレたのは、ほぼ同時だった。
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