表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/201

3.お別れ

 

「ここは、簡単に言うと魔法が使える世界、ね」


「魔法……?私も使えるの?」


「もちろん、絵里ちゃんなら余裕で使えるわ。まあ、そんな事よりも、一旦外に出てからでもいいかしら?」


「う、うん。分かった。いいよ、えーと……エナ」


 絵里(えり)の名前呼びに少しばかり驚くエナだが、洞窟の外……光が漏れてきている方向へと、迷いなく進む。


 それを絵里とネヒィアは追いかけるように、後ろから2人並んで付いて行く。


 数十秒か数分か、どれぐらい歩いたのかは分からないけど、やっと外へと出る事が出来た。地面は湿った土から、枯葉が落ちた土に変わり、それを巻き上げるように風がヒューと吹く。


 洞窟よりも少しだけ温かい。そして、空気が美味しい場所。太陽の光が葉の隙間から漏れ出て、絵里達を照らすそんな場所は……


「紛うことなき森……日本と変わらない感じ?てか、なんも変わらない……よね?」


「日本って?」


 絵里の呟きに()()()ながら疑問の声を浮かべるネヒィア。だが、エナは分かっているようで、絵里の言葉に反応する。


「そうよ。ほぼ感じは一緒。ただ、魔物が時々出るから、そこだけは日本と違うわね」


「魔物?」


 今度は、絵里が疑問の声をあげる。魔物……よく敵として出て、殺される悲しい生き物。なんか怖いイメージがあって強い感じの奴。それが出るらしい。


 それにしても、どうしてエナは日本の事を知っているのに、ネヒィアは知らないのだろうか?


「魔物。魔法を使う、()()()()の生物よ。まあ、あまり出会う事はないから気にしなくていいわ」


「そうなんだ。すごいね、エナ」


「いいえ、この世界の常識だから、知ってるのが普通よ。それよりも、決まった?どうしたいか」


 エナは絵里に向き直り再び質問をした。帰りたいか、帰りたくないか……


 正直に言うと、絵里はまだこの世界を、この場所を、この2人を、夢だと思っている。いつか醒めてしまう儚い夢。


 だからなんとなくで、質問を質問で返す。


「んー、私って今、日本でどうなってるの?」


「皆の記憶から消えて、あっちの世界にいた、という事実も消されてるわ……まあ、帰ればもちろん戻るけど」


「へー。なら私は…………こっちにいるよ。エナとネヒィアと一緒に居られるし」


 それに、録な思い出もそれ程ないし……そう絵里は思いこの夢を楽しもうと、それにもし現実だろうが後悔はないから……だから、問題ない。


 そう思って、絵里は出てきた洞窟の方を向きさようなら、とそう言葉にはせずに口だけを動かして、別れを告げた。


 そんな絵里にエナとネヒィアは少し目を見開き、そしてネヒィアは絵里に抱きついた。


 それはそれはとても嬉しそうに。


「主様ー♡大好きです。ずっとずーっと、一緒にいて下さいね!」


「お、重いってば、ちょ……」


 ネヒィアの不意打ちに、絵里が戸惑いの声をあげ、よろけると、それを見かねたのかエナが一言、


「ネヒィア」


 鋭い声色でネヒィアの名を呼んだ。それとほぼ同時、絵里が感じていたネヒィアの重みが消え、


 代わりに……


「ちょっと、エナ、重い。ネヒィアよりも、おっぱいがー!」


 ネヒィアが離れたと同時、今度はエナが絵里に抱きつき体を押し当てて、ぎゅっとする。


 そんな、不意打ちにも程があるハグを貰った絵里は、後ろに倒れそうになり腰が悲鳴をあげる1歩手前までダメージを喰らう。


 だがそれを、


「ネ、ネヒィア?後ろからだとまあ、いいけど待って、く、苦しいー!離れ、離れろー!」


 ネヒィアは後ろから絵里に抱きつき、絵里はなんとか体制を保つ事が出来た。


 だが悲しいかな。苦しい、重い、それと大きい。


 そんな3連チャンの物理、精神攻撃をまともに喰らってしまった絵里は、涙目になりながら今日1番の絶叫を森の中に轟かせ……


 ちょっとだけでも、胸が欲しい……そんな、叶うはずもない願いを心の中だけで悲しく願った。

面白い!続きが読みたい!そう思ったらブックマークそれと、

☆☆☆☆☆

↓↓↓

★★★★★

広告の下の星を押して青にしてくれると、作者は跳ねて喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ