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21.特訓

 

「ゔぅ……ゔぅ……」


 どれぐらい固まっていたのかは分からない。ただ、ずっとエナの嗚咽を聞き続け、ずっと泣いているエナを抱き締めていた。


 だがそれも……もう、終わり。絵里は深呼吸をして、いつぶりか口を開く。


「エナ……どうすれば……私は強くなれる?どうすれば……私は神よりも上になれる?……お願い……教えて」


 絵里は願う。ただ強くなることを。ネヒィアを見つけなければ……そして、マーラを何とかしなければ。


 マーラの言葉が本当なら、明日決闘をするはずだ。それまでにネヒィアを見つけて、強くならなければ……


 強くないと何も守れない。ありふれた言葉。けどそれは本当の事。


 だからマーラを、ネヒィアを、何とか出来るぐらいに強くなりたい。


「ネヒィアを見つける方法なんて、私はバカだから……これぐらいしか思い付かない。強くなれば……なんとか、ならないかな……」


 絵里の震える声に、エナは少しだけ間を置いてから反応する。


「……なんとか、出来るかもしれない……けど……いいの、絵里ちゃん?」


「うん。大丈夫。エナとネヒィアのためだから」


 そんな絵里の優しい声に、エナは少しだけ微笑んで


「分かったわ。なら、とことん鍛えるわよ?」


 少しばかりの涙声で、けれどもいつもの調子を少しだけ取り戻したエナは、絵里から1歩だけ離れると


「覚悟はいいかしら?」


 絵里の目をしっかりと覗き込み、首をかしげる。それに絵里は不敵に笑い


「もちろん。エナ」


 少し明るく二言返し、反応する。


 2人の声は震えておらずら、もう弱くない。いつものエナと絵里だ。




「それで、ここで何をするの?エナ」


 場所は少し変わって、ネヒィアが『神獣殺し』から空間転送を使い着いた、元王国ナタラ。


 辺り一面、芝生しかないだだっ広い場所である。そんな場所でエナは両手を広げて


「絵里ちゃんにはまず、この世界の魔法の仕組みを理解してもらうわ」


「魔法の仕組み……?」


 絵里が首をかしげてエナに問うと、エナは何故か少しテンション高めに


「私達神獣より下の生物と、上の生物生命とでは魔法の使い方が違うのよ。まずはそこから……」


 そう言ってエナは魔法について説明をしてくれた。


 それを要約すると、まず神獣より下は体内にある魔素と体の外にある魔素を()()させて魔法を使うらしい。なので、体内にある魔素によって魔法の出来不出来が決まるらしい。


 だが、神獣からはそんなもの関係ないらしく、エナ達神獣からは体内の魔素が常に変化し続けるらしい。その為に魔素の濃度が格段に跳ね上がるので、まず魔法とはあまり言わないらしく


「魔法なんて名前はちっぽけよ。私達はね、絵里ちゃん。()()()()()。好きな時に好きなだけ、ね」


 魔法ではなく創造。それが強者と弱者の魔法の根本的な考え方の違いなんだとか……


 それで、何をするの?……なんか疲れた気がする。エナ、もう少しテンションを下げて……


「だから……えい」


「ん?」


 エナが絵里に向けて人差し指を動かすと……


「これ……私の好きなキャラの制服?」


「そう。大正解よ」


 絵里の服が魔法少女系アニメの可愛い制服になり……


「絵里ちゃん。創造は慣れよ。だから、私を裸にしてみなさい。それが第1の試験よ」


 エナは何故かそんな変な試験を出してくる。それに絵里は戸惑いながらも口を開く。


「え、えーと……なんで?自分に服を着せて、脱がせれば……」


「えい」


「……エナ?嫌がらせ?なんで私を裸にするの?」


 絵里がジト目でエナを睨むが、エナはどこ吹く風か


「創造は作るよりも、無くす方が難しいのよ。まずは、無くせるように頑張って。たくさんアドバイスするから」


 エナはそう言ってまた、絵里に向かって人差し指を動かす。


「慣れれば、こんな事だって出来るのよ?えい」


「……?何も変わって……」


 絵里は辺りを見渡し、それから自分の体を見て、絶句する。裸である絵里に起きた変化は、想像を絶するヤバい変化だった。それは……


「なっ、なっ、ない!胸が、ない!」


 正真正銘ザ・まな板が絵里の胸に……こ、これはもしかして、胸を消されたの?そんな事……


「絵里ちゃん。まな板になってどんな気持ち……あっ、元々よね、ごめんなさい」


「エ、エナ……許さないから。絶対の、絶対に……服をひん剥いて、胸をマイナスにしてやるー!」


 かくして、楽しそうなエナにより、体重が少し軽くなった絵里の魔法……もとい創造の特訓が始まりを告げた。


 それは誰が見ようと、もう落ち込んでなどいない、可愛い少女2人の特訓だ。

次か、次の次ぐらいにネヒィアの小話みたいなのが入るかもしれません。


まあ、それよりも面白い、続きが読みたいそう思った方ブックマークそれと、

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