198.氷の蕾
絵里ちゃんと一緒に今日、あっちの世界に行くと考えただけでワクワクする。
でもその反面、絵里ちゃんは喜んでくれるだろうか?と。あっちの世界の為に連れてきたと私は言えるだろうか?と。不安な気持ちもある。
時刻は八時。あと十五分程経てば、絵里ちゃんは学校を遅刻する時間になる。
でも今日は、学校になんて行かないので、好きなだけ寝かせてあげようと、私は特に何もしない。
まあ、何かしたところで、六日連続遅刻している絵里ちゃんを起こせるとは思わないけど。
「絵里ちゃん……私、絵里ちゃんに嫌われたら悲しいけれど、でも、覚悟は出来てるから……」
◆
「『極寒樹』」
水色の人が手を上に上げると、まるで生きているような氷の木が現れ、ジザンサスを飲み込む。
けれど、
「『蒼雷震』」
ジザンサスも負けることなく、魔法を使い氷の木に蒼い雷が這ったかと思うと、一瞬で砕け散って水色の人に襲いかかる。
その瞬間、
「『氷霰』」
砕け散った氷の粒一粒一粒が大きくなり、形を変えて集まり、ジザンサスの首から下を覆うと同時に凍り、氷の中にジザンサスを閉じ込める。
「やはり、凄いな」
「うん、そうだね」
水色の人が使う聞いたことのない魔法は、全てが氷魔法で、主に防御魔法だけかと思っていたけど、あんな使い方も出来るんだと感心させられる。あの水色の人は一体、何者なんだろうか?
「流石ですね。では後は私に任せて……」
「はは、何勝った気になってるのかな?僕はまだ負けてないよ。『解放』」
ハク達が油断した隙にジザンサスは歪んだ笑みを更に歪ませ、物凄い勢いで膨れ上がった魔力だけで、氷を砕き空へ舞うと、
「『虎覇雷堂』」
晴れていた空がいきなり曇り、大きな蒼い虎が雲の中から現れた。
それはモネクがよく使っていた魔法で、獲物を狩る最後の魔法。
「僕はこれから神を超えるんだ!もうすぐ来るんだろ?異世界から化け物が。それを吸収して、僕はこの世界の王になる!食い荒らせ!『虎王創々』!!」
ジザンサスの言葉に、蒼い雷が黒い雲全体を這う。
そして、
『ガオォォォォォ―――――!!!』
蒼い虎が大地を震わせる程の鳴き声と共に、牙を向いて襲いかかってきた。
それは一秒も満たない速度で……私は死ぬんだと、それを呆然と見ていると、
「『願氷』」
水色の人の冷たい魔法が聞こえてその瞬間、蒼い虎と花の蕾のような氷の塊がぶつかり、雷と氷がその場を支配する。
それを見て、
「僕は、神を超えるんだ!邪魔するな!」
ジザンサスは初めて怒った様に口を開き、水色の人をじわじわと攻めていく。
そんな光景に、固まっていた悪魔たちが一斉に水色の人の方を見て集まると、
「こっちは四人いますから!」
ハクの掛け声と共に水色の人の魔法を後押しする。
それから押されては押しを繰り返す。
「どけ!そこを、どけ!」
「いや、絶対に!」
お互いに全力の魔法をぶつけているから、ジザンサスもハクやカイメイ、水色の人までもが短い時間で皆息が上がり気力の勝負になる。
そんな戦いを私とハクだけは遠目に見ていて……
「ハク、行こう」
私は居ても立っても居られず、ハクに声をかけて手を差し出す。
けど、
「だめじゃ。お主は残れ。我だけ行く」
ハクは首を横に振り、一人立ち上がって走って行こうとする。
そんなハクに私は抱きついて、駄々をこねた子供の様に言ってみる。
「ハクと一緒じゃなきゃ、嫌」
「は、離せ……本当に死ぬぞ?」
「あと少しで死ぬんだから、変わらないよ」
私は更に抱きしめてハクにそう言ってみると、ハクは困った様に言葉を漏らす。
「じゃが……」
そんな優しいハクに私は耳元で、
「お願い、ハク」
泣きそうな声で囁くと、
「ええい、分かった。行くぞ」
「うん!」
ハクは頷いてくれ、私はハクの手を握り皆がいる場所まで一緒に向かった。
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