表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

198/201

198.氷の蕾

 絵里ちゃんと一緒に今日、あっちの世界に行くと考えただけでワクワクする。


 でもその反面、絵里ちゃんは喜んでくれるだろうか?と。あっちの世界の為に連れてきたと私は言えるだろうか?と。不安な気持ちもある。


 時刻は八時。あと十五分程経てば、絵里ちゃんは学校を遅刻する時間になる。


 でも今日は、学校になんて行かないので、好きなだけ寝かせてあげようと、私は特に何もしない。


 まあ、何かしたところで、六日連続遅刻している絵里ちゃんを起こせるとは思わないけど。


「絵里ちゃん……私、絵里ちゃんに嫌われたら悲しいけれど、でも、覚悟は出来てるから……」


 ◆


「『極寒樹(ニクス)』」


 水色の人が手を上に上げると、まるで生きているような氷の木が現れ、ジザンサスを飲み込む。


 けれど、


「『蒼雷震(セリニ)』」


 ジザンサスも負けることなく、魔法を使い氷の木に蒼い雷が這ったかと思うと、一瞬で砕け散って水色の人に襲いかかる。


 その瞬間、


「『氷霰(レナトス)』」


 砕け散った氷の粒一粒一粒が大きくなり、形を変えて集まり、ジザンサスの首から下を覆うと同時に凍り、氷の中にジザンサスを閉じ込める。


「やはり、凄いな」


「うん、そうだね」


 水色の人が使う聞いたことのない魔法は、全てが氷魔法で、主に防御魔法だけかと思っていたけど、あんな使い方も出来るんだと感心させられる。あの水色の人は一体、何者なんだろうか?


「流石ですね。では後は私に任せて……」


「はは、何勝った気になってるのかな?僕はまだ負けてないよ。『解放(バースト)』」


 ハク達が油断した隙にジザンサスは歪んだ笑みを更に歪ませ、物凄い勢いで膨れ上がった魔力だけで、氷を砕き空へ舞うと、


「『虎覇雷堂(エターナム)』」


 晴れていた空がいきなり曇り、大きな蒼い虎が雲の中から現れた。


 それはモネクがよく使っていた魔法で、獲物を狩る最後の魔法。


「僕はこれから神を超えるんだ!もうすぐ来るんだろ?異世界から化け物が。それを吸収して、僕はこの世界の王になる!食い荒らせ!『虎王創々(ケートス・レックス)』!!」


 ジザンサスの言葉に、蒼い雷が黒い雲全体を這う。


 そして、


『ガオォォォォォ―――――!!!』


 蒼い虎が大地を震わせる程の鳴き声と共に、牙を向いて襲いかかってきた。


 それは一秒も満たない速度で……私は死ぬんだと、それを呆然と見ていると、


「『願氷(アノルトゥーン)』」


 水色の人の冷たい魔法が聞こえてその瞬間、蒼い虎と花の蕾のような氷の塊がぶつかり、雷と氷がその場を支配する。


 それを見て、


「僕は、神を超えるんだ!邪魔するな!」


 ジザンサスは初めて怒った様に口を開き、水色の人をじわじわと攻めていく。


 そんな光景に、固まっていた悪魔たちが一斉に水色の人の方を見て集まると、


「こっちは四人いますから!」


 ハクの掛け声と共に水色の人の魔法を後押しする。


 それから押されては押しを繰り返す。


「どけ!そこを、どけ!」


「いや、絶対に!」


 お互いに全力の魔法をぶつけているから、ジザンサスもハクやカイメイ、水色の人までもが短い時間で皆息が上がり気力の勝負になる。


 そんな戦いを私とハクだけは遠目に見ていて……


「ハク、行こう」


 私は居ても立っても居られず、ハクに声をかけて手を差し出す。


 けど、


「だめじゃ。お主は残れ。我だけ行く」


 ハクは首を横に振り、一人立ち上がって走って行こうとする。


 そんなハクに私は抱きついて、駄々をこねた子供の様に言ってみる。


「ハクと一緒じゃなきゃ、嫌」


「は、離せ……本当に死ぬぞ?」


「あと少しで死ぬんだから、変わらないよ」


 私は更に抱きしめてハクにそう言ってみると、ハクは困った様に言葉を漏らす。


「じゃが……」


 そんな優しいハクに私は耳元で、


「お願い、ハク」


 泣きそうな声で囁くと、


「ええい、分かった。行くぞ」


「うん!」


 ハクは頷いてくれ、私はハクの手を握り皆がいる場所まで一緒に向かった。

面白い、続きが読みたい、そう思った方はぜひブックマーク!それと、

☆☆☆☆☆

↓↓↓

★★★★★

広告下の星を押してポイントを!ついでに、いいね!と思ったらいいね!ボタンもポチッと!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ