195.世界地図
洞窟の中にある空間の歪みから見える景色は、雪が溶け、日差しが少し穏やかになり、芽吹く季節、春へと移り変わっていた。
そして、桜の木は小さな緑色の蕾を沢山付け、今にも花開きそうなそんな景色を、私は微笑ましく見て、洞窟の前へと戻る。
「カイメイ、もうそろそろだね」
「はい。エナさんが帰って来るの、待ち遠しいです」
「ねぇ、カイメイ、私が死んだら悲しい?」
いつもの様に、座って何か考え事をしていたカイメイの隣に会話しながら行き、首を傾げて聞いてみると、
「また会えますから、悲しくなんかないですよ」
にっこりと優しく笑って、私を見てくる。そんな反応に私も少し笑って、言葉を返す。
「そうだね。また会おう」
それからしばらく、カイメイにちょっかいをかけていると、白い魔法陣が展開されハクが物凄く嬉しそうに機嫌良く顔を出す。
「おかえり」
「ただいまじゃ!カイメイ、ネヒィア!」
「で、出来ましたか?」
どうしてハクは珍しくこんなにテンション高めで嬉しそうなのか?その理由は単純で、
「おう!地図、全部書き終わったぞ!」
五大陸あるこの世界の地図を今日、ハクが書き切って、世界地図が出来たから。
「ほれ、見てくれ!」
ハクはばっと地図を取り出し、私とカイメイに見せてくれる。
そこには、私が書いたカイメイには及ばないけど中々の出来であるこの大陸、カイメイが書いた物凄い出来の二つの大陸、そして、まあ頑張ったであろうハクが書いた二つの大陸がある。
「ハク、よく頑張ったね」
「凄いです、本当に完成するなんて」
「そうじゃろ!そうじゃろ!」
褒められて嬉しそうなハクと、感慨深そうに地図を眺めるカイメイを見ながら、
「皆、お疲れ様」
私は皆で書いた出来のいい地図に満足して声をかけると、
「おう!お疲れ様じゃな!」
「はい、お疲れ様です。ネヒィアさん、ハク」
皆嬉しそうにそして、満足げに笑って、地図が完成した事を喜ぶ。
なんやかんやで暇も潰れて、楽しかった。ハクもたまにはいい事を提案するな、なんて思いながら少しの間みんなで喜び、そしてふと、
「そう言えばこれ、誰のものにするんじゃ?」
ハクが首を傾げて、聞いてきた。
そんなハクにカイメイは、
「大丈夫です。魔法で複製しますから……『臨画』」
地図に優しく触れると魔法を使い、地図が三枚に。
「おおっ!凄いな!これで問題無しじゃ!」
「カイメイ、ありがとう」
「いえいえ、気にしないで下さい。これで仲良く、皆の地図の完成です」
大事そうに地図を抱えて穏やかに笑う、可愛いカイメイに、私は思わず、
「やっぱり、カイメイって可愛いね」
冗談抜きの本音を溢すと、カイメイは恥ずかしそうに頬を染めて、下を向いてお礼を私に言ってくれる。
「あ、あのっ……ありがとう……ございます」
と、ムスッとしたハクが、
「ネヒィアの百倍、我はカイメイの事を可愛いと思っておるぞ」
私と張り合って、そんな事を言ってきた。だから私は、
「ハクも可愛いよ」
いつもなら言い合いになるところ、不意に笑ってハクを褒めてみると、いきなりだったからか、カイメイよりも頬を赤く染めて、
「なっ、そ、そうか。……お主も、可愛いぞ……」
私をチラチラ見ながら褒めてくれたので、私は二人をぎゅっと抱きしめて、
「ありがとう、二人共。大好きだよ。お姉ちゃんが帰って来るまで、ここでいっぱい話そう」
私は飛びっきりの笑顔で、二人の頬をすりすりした。
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