194/11.背表紙
エナさんがこちらの世界に帰ってくるまで、おそらく二ヶ月を切った。
エナさんがあっちの世界に行ってから今まで、何も大きな問題は起きていないが、私がノテーファさんからもらった未来だと、必ず何か問題が起きなければならないはず。
だから今までのこの状況は、明らかにおかしい。
未来は不確定の連続で、遠い未来ほどぼやけて見えるもの。でも最初から一つほぼ確実に見えているのが、ネヒィアさん達が危機に瀕してしまうこと。
他にも起きるはずの問題はあるけれど、一番大きく可能性が高いのが、これなのだ。
「どうした?なにか飲むか?」
私が頭を悩ませていると、オセラさんが優しく笑って心配してくれる。
なので私は首を横に振って答える。
「あっ、いえ、大丈夫です」
するとオセラさんは、少し何かを考えたあと、
「うむ。カイメイが教えてくれた未来と、今は結構違う。その事について、考えてたのだろ?」
見事に私の頭の中を当ててきて、私は頷いて一人で考えても仕方なので相談する。
「流石ですね。おかしいというか、不気味だなって考えてたんです。どうして、問題がない方へと未来が逸れるんでしょうね」
「……誰かが、そう願っているから。それ以外には、思いつかないな」
少し間を開けて答えてくれたオセラさんの言葉に、私は首を傾げながら、ちょっと疑うような声色で言う。
「願っているだけで、未来なんて変わるものなんですか?そんな、他力本願みたいな……」
「魔法は願いだ。願い続ければ、自ずと魔法に変わる事もある。もちろん、他力本願はほとんど魔法になる事はない。だが、誰かを守りたい、誰かと一緒にいたい、そんな願いは意外と魔法に変わるものだ。だから、きっと誰かが願っているのだ」
オセラさんの言葉を飲み込み理解するのに、私は少し時間がかかったが、どこか腑に落ちる。
それに誰かが、私達の未来が良くなるように願ってくれている。そう考えると、なんだか悩みなんてどこかにいき、
「オセラさん。リーヤ王国に行きませんか?女王である、マーラさんにお願いしたいことがあるんです」
「もちろんだ。行こう」
オセラさんが頷いてくれたので、私は立ち上がってオセラさんの『聖域』から一緒に出ようとしたとき、ガチャっと扉が開いて『聖域』の中に誰かが入ってきた。
「お久しぶりです、カイメイとオセラさん。こっちの世界で任されていた仕事は、大方終わりました」
それは、礼儀正しくお辞儀をしてにっこりと笑う。
「元気そうだな。今からリーヤ王国に行くらしい。来るか?」
「お邪魔でなければ、一緒に行きたいです」
「で、でも、ジザンサスと何度も戦って、あっちの世界で少女の様子も確認して、疲れてるんじゃ……」
「いえ、気にしないで下さい。私、強いですから疲れません」
私の言葉に、自信たっぷりの無邪気な笑みで言葉を返してくる。
でも、あのジザンサスをデバータ大陸に寄り付けさせない、二週間に一回あっちの世界に行ってエナさんと少女さんのデータを取る、ノーロイドの監視等沢山の仕事を任せてしまっている私からすれば、わざわざ付き合わすのも気が引けてしまう。
「その、本当にいいんですか?色々と任せっきりですし……」
「ふふ、私達親友でしょう?カイメイ。気にしないで下さい。ほら、行きましょうよ」
優しい声と表情を浮かべて再び扉を開き、手を差し出してくる。
私はお世話になりっぱなしだなと、そう思いながら、
「分かりました。行きましょう、ハクさん」
ハクさんの手を握って、リーヤ王国の女王マーラさんに結構先だけど、悪役を演じてもらうように頼みに行った。
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