192/10.裏表紙
「ここが、例の穴がある場所か」
「はい。今は私の優しい分身が、ここに残っていた者を聖域に連れて行っています」
「どのぐらい時間がある?」
「聖域内の時間を最大まで弄っているので、夜明けまではなんとか」
「だいぶ余裕はあるが、無駄なく終わらせよう」
「はい、もちろんです」
空間の歪みを守っていた三人がいなくなり、静かになった深夜の洞窟の前に、水色の瞳に水色のドレスのような服を身にまとった神の守護者と黒い悪魔が降り立った。
その二人は言葉通り無駄なく洞窟に入ると、
「後は頼んだ、カイメイ。気を付けろよ」
「はい、オセラさん」
黒い悪魔は空間の歪みに姿を消し、一人になった水色の神の守護者は、
「モネク……全てが終わったら、墓場に出向く。それまで待っていてくれ」
悲しげに空間の歪みに言葉を零した。
◆
空間の歪みの中を漂い、人間だけの世界へ。時刻は深夜。もちろん人間はほぼいない。
私はハクに頼んでいた通り、魔力を目立つようにしてくれているのでそれを辿って、エナさんの場所まで急ぐ。
そうして特に問題もなく十分程で、エナさんがいる少女の家へ。どうやら二階にいるらしいので、飛んで壁を通り抜け、部屋の中へと入る。
中は少女が一人ベットで寝ていて、エナさんは机の上に置かれていた。
「エナさん、エナさん。聞こえますか?」
私はエナさんであるスマホの電源をつけて、少女に気付かれない声で呟くと、
「カイメイ、本当に来たのね」
少し間を開けて、エナさんから返事があったので、
「はい、エナさん。それでそのまま、昔のネヒィアさんの事を考えて頂けませんか?」
私は収納魔法から真っ白の本を出して開き、エナさんに頼む。
すると一言、
「分かったわ」
肯定してくれたので、私はエナさんを本の中に閉じ、しばらく待つ。
それから数秒程で徐々に真っ白だった本が、金色に変わっていき、一冊の本が出来た。
「エナさん、ありがとうございました」
本からエナさんを取り出してお礼を言うと、エナさんは心配そうに聞いてくる。
「カイメイも元気そうで良かったわ。ハクから色々と聞いてはいるけど、ネヒィアは落ち込んでないかしら?」
「ハクと私がいますから、落ち込んではいません。元気にやってますよ」
「そう。なら良かったわ。気を付けてねカイメイ。どうかハクを守ってあげて」
「ネヒィアさんとお話させる事が出来ずに、すいません」
「気にしてないと言ったら嘘になるけれど、ハクに無理させたくないわ。だから、気にしないで」
「……エナさん、必ず助けます。この命に変えても」
「そんなには大丈夫よ。本当、カイメイはいい子ね。気を付けて帰るのよ」
「はい、エナさん」
この先色々と面倒くさいことが起こる。それを一つずつ、私と、エナさんとネヒィアさんが洞窟の前を離れた日に会ったオセラさんと、ハクで一緒に消化しないといけない。
またエナさんと、ネヒィアさんと、ハクの四人で仲良く揃って、一緒にいるために。
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