191.記念
キィと甲高い音をたてながら、カイメイは少し大きめの扉を開く。
中は真っ暗で何も見えない。でもカイメイはそんな事気にせずに、一歩お城の中に足を踏み入れた瞬間、いきなり暗闇が砕けて、とてつもなく広い、書庫が現れた。
「すごいな……」
「本当、よくこれだけ集めたね」
私とカイメイは奥が分からない程に広く、天井が見えないカイメイの書庫をあちこち見渡しながら、圧倒されて言葉を漏らす。
と、カイメイはどこか嬉しそうな笑みを浮かべながら、いきなり手を叩く。
すると、沢山の本棚が音をたてて沈み、本棚は徐々に数を減らして、最初に比べて三分の二程の本棚が消えた。
それからすぐ完全に沈んで、音が書庫の中からなくなったタイミングで、カイメイは少し私達から視線を逸して、
「この本棚から、黒い本全てを、抜き取って欲しいんです。頼めますか?」
申し訳無さそうに頼んで来たので、
「もちろん、いいよ」
「カイメイの頼みなら、喜んで引き受けるぞ」
私もハクもいつもの調子で頷くと、カイメイは少し安心したように、
「ありがとうございます。お願い、しますね」
にっこりと笑った。
それから私、ハク、カイメイの三人はそれぞれ別々の場所へと魔法で飛び、カイメイが言っていた黒い本を探し始める。
見た感じ、本棚の上から下までで一冊あるかないかと想像以上に少ない。私は最初の一冊を見つけて、本棚から取り出す。
と、カイメイが悪魔の記録と言っていたことを思い出して、何に使うのだろう?と思いながら、表表紙、背表紙、裏表紙と本を見てみるけど、題名も何もなくって、私は興味本位で黒い本を開いてみた。
でも、中も黒く文字がないページがずっと続いていて、読めない。
きっと本というのは形だけで、何かしないと情報を抜き出せない様になっているのだろう。ほとんど重さも感じないし。
それから私は書庫の景色に少し飽きながらも、本棚から黒い本を見つけては取り、見つけては取りを繰り返す。
やがて何十冊にもなり、ハクとカイメイはどれだけ集めたんだろうかと、そんな事を考えていると、
「あっ、ネヒィアさん」
「カイメイ……沢山集めたね」
何百冊もの黒い本を魔法で浮かせ、纏わり付かせているカイメイと会った。
「これぐらい集めれば、大丈夫なので、そろそろ終わりにしましょう」
「うん、分かった」
もうちょっとかかると思っていたけど、意外とあっさり終わったので少し驚きながらも、一緒に書庫の入り口へと戻る。
その途中で運良くハクとも会い、三人で書庫の入り口へ。
「あのっ、わざわざ、ありがとうございます」
入り口に着き、慣れたようにカイメイは黒い本を黒い魔法陣に入れると、頭を下げてお礼を言って来た。
「いいよ」
「そんなに気にするな」
それに私とハクが短く言葉を返すと、ハクは微笑みながら一番近くの本棚から真っ白な本を二冊取って、
「良ければ、この本に触れてくれませんか?」
控えめに本を差し出してきたので、私とハクは迷う事なく本を触ると、スッーと色が変わって私が触れた本は銀色に、ハクが触れた本は更に真っ白になった。
それをカイメイは大事そうに抱えて、
「また一つ、私の宝物が増えました」
飛びっきりの笑顔で、そんな嬉しい事を言ってくれた。
最近短編書いてて、投稿出来ずにすいません。
実は新作の長編も書いてたりで、中々書けてないのですが、今日はなんとバレンタインですからね!
投稿出来て良かったです!
来週ぐらいからはどんどん投稿するので気長にお待ちいただければ幸いです。
では!
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