19.静寂を保ち嫌う夜
現在時刻は夕日が沈み、代わりに月が顔を出す、この世界で過ごす時間としては初めての、夜である。
絵里は先程、エナ、ネヒィア、マーラの会話を少しの間だけ聞いた。体は寝ており動かせないが、頭は起きているので意識はある、金縛りにあいながら……
そして、マーラがいなくなり残ったエナ、ネヒィアの会話を聞いて……?
ああ、エナの悲しそうで弱々しい初めて聞く声を聞いて……その後、眠ってしまったのだ。
そんな絵里が目を覚ましたのは、今から数十秒程前であり、ベットから起き上がると
「……ふぁー……あれ?ここって……」
絵里はベットの掛け布団を使い、自分の体を隠してベットに座り……ふとここは、マーラに連れ去られた、3階の自分達の宿の部屋である事に気付く。だが、
「エナ?ネヒィア?……どこ?」
部屋の隅々までしっかりと見渡すが、エナとネヒィア、2人の姿はまるでなく……ついでに、自分の服もない。
どこに行ったのだろうか?少し待っていれば帰って来るのだろうか?そう、少しばかり不安になってきた絵里は、その不安を消すようにベットから降り、立ち上がる。
「おっと……なんか久しぶりに立った気がする」
絵里はそんな独り言を言いながら、数歩歩き窓の外を見た。窓の外に人らしき人はいない。だが、建物の窓からは、ぽつぽつと光が漏れている。
深夜、というわけではないらしい。その少し前ぐらい……かな?
いや、それよりも、
「どうしようか、今から……」
外の景色を見て、絵里は思う。自分は全くもって今いる場所を分かっていない、ここがどこか分かっていないのだと……だから、
「やっぱり……エナとネヒィアが帰ってくるまでは、ここに居た方がいい、よね?」
外に出て、迷子になってしまえば、迷惑をかけてしまう。ていうか、裸なんだから……外に出たらダメでしょ。
絵里はそう結論を出すと、ベットに戻り座る。
そして、特にやる事もないので部屋の扉を見つめ、エナとネヒィアを待った。
それから一体いくら待っただろうか。月は雲に隠れ、暗くなり、おまけに少し冷え込んで来た。
だがそれでも、絵里は掛け布団に包まり部屋の扉を見つめ続けていた。理由は
早く会いたいから……
この世界ではずっと一緒だったネヒィア。この世界に来る1年程前から一緒だったエナ。
そんな2人がいないと、酷く悲しなってきて……恐怖で体が震え、びっくりするぐらいに動けない。
自分が立てる音以外に音がしない。話し声、虫の鳴き声、車、バイクのエンジン音。日本にいれば聞こえる音は、異世界だとなりを潜め、静寂を保つ。
それが無言の圧力の様であり、絵里を襲い、怯えさせる。
この世界にたった1人、自分だけしかいない、そう思えてきて……絵里は掛け布団をぎゅっと握り、体に押し当てる。
この掛け布団の温かさだけが唯一、自分を守ってくれているような気がして落ち着くのだ。
けれども、もう限界らしい。瞳には涙が溜まり、体は震え、息苦しくなる。
こんな事になるなんて久しぶりで……絵里はどうしていいか分からない。昔は……どうしていたのだろうか?
嗚呼、早く会いたい。お願いだから……
はてさて、そんな絵里の想いが通じたのか、扉がゆっくりとキィーッと音を立てて開き、エナ1人だけが顔を出した。
それに絵里は、掛け布団を投げて、ベットから降り
「エナ!」
そう言ってエナに駆け寄り抱きつくと、顔をエナの首筋に当て、擦る。だが、それにエナは何も言わない。いや、反応しない。
だから絵里は、
「……エナ?大丈夫?」
少し心配しながらそう言葉を発すると、エナは……
「絵里ちゃん。……話を聞いて、くれる?」
小さく暗い、力無い声で、言葉を零し……絵里を優しく抱きしめた。
金曜日投稿出来ずごめんなさい。リアルで試験がありまして……いや、言い訳はやめましょうか。
お詫びと言ってはなんですが、あと2話今日中に投稿します。時間は未定!なので、何となくまた来て下さい。よろしくお願いします。
ということで、面白い、続きが気になる、そう思ったのならブックマーク、そして、
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