187.お姉ちゃんスマホ
朝、私はいつもの様に目が覚めて起き上がる。
でも、昨日お姉ちゃんと抱き合って寝ていたのに、隣にお姉ちゃんの姿がなく、私は立ち上がり歩いて探す。
すると、
「お姉ちゃん……」
完全な本来の神獣の姿になっているお姉ちゃんが、朝日を眺めていて、私は思わず言葉を零してしまうと、耳をピクッとさせて、お姉ちゃんはこちらを振り向き、
「おはよう、ネヒィア」
頭の中でお姉ちゃんの声が響いた。だから私も、
「おはよう、お姉ちゃん」
挨拶を返して、綺麗に輝く黄金の鹿になっているお姉ちゃんを抱きしめる。
ぎゅっと抱きしめれば抱きしめるほどに、心の中の不安だったり寂しさだったりが無くなっていき、心から雑念が消えていく。
そして代わりに暖かい優しさだったり嬉しさだったりが、心の中を満たして……
「ネヒィア。さぁ、そろそろ時間よ」
お姉ちゃんの言葉に私は頷き離れると、黄金の鹿の姿から、いつもの人の姿のお姉ちゃんに戻って、一緒に手を繋いで洞窟の前へ。
「おはようございます」
「おはよう、じゃ……」
「皆、準備は良いかしら?」
カイメイとハクの挨拶に笑顔を浮かべ、お姉ちゃんは皆を見て口を開くと、それぞれが頷く。それを確認して、
「ネヒィア、お願い」
私に視線を移してお姉ちゃんは言ってきたので、
「『変換』」
私は頭の中であの少女が持っていたスマホを思い浮かべて、お姉ちゃんに生き物を物にする魔法をかけた。
すると、青い光に包まれたお姉ちゃんが、みるみる小さくなっていき、片手に収まるスマホへと変わり私はそれを掴む。
それを見て、
「『繋信』」
ハクがお姉ちゃんスマホに、どれだけ離れていても意志があれば通信が出来る魔法をかける。
一瞬だけ白い光に包まれたあと、お姉ちゃんスマホからは、
「物になるのって、あまり悪い気はしないわね」
お姉ちゃんの声が響き、
「なんともない?」
「ええ、問題ないわ」
こちらの声も聞こえるらしく、受け答えもしっかりと出来るのを確認して、私は魂を魄に変えて、
「それじゃ、行ってくるね」
カイメイとハクに手を振って、洞窟の中に入り、私は空間の歪みの中に飛び込み、再びあっちの世界へと降り立った。
「いよいよね。わくわくするわ」
「そうだね」
楽しそうなお姉ちゃんの声を聞きながら、記憶を頼りに少女の家へと向かう。
朝だからか、あまり人がおらずさくさくと少女の家へと行け、
「ここだよね」
「流石ネヒィアね」
なんの問題もなく家へとたどり着き、扉を通り抜けて少女の部屋へ。
少女はまだベットで寝ているらしく、もぞもぞとベットの中で動いており、机に少女のスマホが置いてあったので、
「お姉ちゃん……いってらっしゃい」
「ええ、待っててね。ネヒィア」
少女のスマホとお姉ちゃんスマホを入れ替え、私は少女のスマホを回収して、お姉ちゃんに別れを告げ、私はまた扉を通り抜けて、外へ。
そして、空間の歪みがある場所まで帰り、少女のスマホと一緒に空間の歪みへと飛び込んだ。
◆
「一応、なんの問題もなく成功ですね」
元の世界に帰ってくると、カイメイは安心したような声でそう言い、ハクもどこか肩の力を抜いて、優しい表情を浮かべていた。
と、カイメイがいきなり、
「それでは、私はしばらくの間仕事があるので、半身だけ残して行ってきますね」
そんな事を言い出して、ぬるっと二人になる。あまり仕事の事について聞くのは良くないと思って、
「いつ帰ってくる?」
それだけ聞くと、カイメイのしっかりした方が、
「意地が張れなくなったら、ですかね」
そうあまりよく分からない事を言って、ばっと空間に消え、
「あ、あの……今日から、よろしくお願いします……」
か弱そうなカイメイが、そう挨拶してきた。
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