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173.お風呂

 私とお姉ちゃんは当たり前だけど、カイメイも今日と明日は用事がないらしい。そして、ハクもしばらくはどこかに行ったりはしないらしいので、珍しく四人で長い時間いれる。


「せっかくだし、どこか行く?」


 私がそう皆に言ってみると、ハクだけが首を横に振った。まあ、仕方ないと言えば仕方ないのかも知れない。あんなぼろぼろで帰ってきたのだから。


 と、お姉ちゃんが思い付いたように言う。


「久しぶりに温泉に入りたいわ。ハク、どうかしら?」


「どこの温泉じゃ?近くにはないじゃろ?」


 お姉ちゃんの言葉に、ハクはそう首を横に振る。でも確かに、ここら辺に温泉なんてあるのだろうか?


 私もハクと同じような事を考えていると、お姉ちゃんはハクに何を言っているのか?と語りかけるような視線を向けながら、


「創ればいいじゃない。あそこはどうかしら?」


 そう言って少しひらけた場所を指さした。そんなお姉ちゃんにハクは、


「まあ良いが、誰が創るんじゃ?」


 そう聞くと、


「私一人で創るわ。ちょっと待てて」


 平然と言葉を返して一人指さした場所に行き、魔法で土を掘ると、底全体に薄い魔力の膜を創って、水をお湯に変えてぶち込んだ。


 そしてあっという間に温泉……というかお風呂が出来た。


「お姉ちゃん、上手」


「すごいですね、エナさん」


 私は拍手をしながら褒め、カイメイは感心したように言葉を零す。


 お姉ちゃんはそんな言葉を聞いて、誇らしげにハクに聞く。


「どう、ハク?」


「もったいないぐらいの、広い温泉じゃな」


「ふふ、それじゃ入りましょう」


 ハクも空気を読んでか、それとも真剣にかは分からないけれどそうお姉ちゃんを褒めて、一番にお姉ちゃんがお風呂に入る。


 それに続いて私、そしてハクが自分の裸を見られないように認識阻害魔法を使って入り、カイメイだけが残る。


 一応この中で一番清楚というか清純なカイメイ。そんなカイメイに、


「ほら、早くおいで」


 私がそう声をかけてみると、カイメイはどうしょうかと迷うように体を動かしたり視線を動かしたりして、結局入らない。


 きっと裸を見られるのが嫌なのだろうけど、それならハクみたいに認識阻害魔法を使えばいいのに。


 私がそう思いながら動かないカイメイを見ていると、いきなりお姉ちゃんがお風呂から飛び出てカイメイを襲う。


 それを華麗に避けて、カイメイはお姉ちゃんから距離を取るけれど、それに私も楽しそうなので続き……少しの間追いかけっこを続けて、見かねたハクが、


「カイメイは後で一人、入れば良いじゃろ。ほれ、やめるんじゃ」


 そう言って魔法陣を展開すると、カイメイを避難させた。


 それに残念がりながら、私とお姉ちゃんはお風呂に戻り、ゆっくり浸かる。


 そして何十分か浸かって、お風呂から出て魔法で体を乾かすと、ハクが魔法陣を展開させてそこからカイメイが姿を現す。


「今から入るの?」


 そう聞くとカイメイは首を縦に振って頷く。そして、お風呂の前に立つと、


「一緒に入れなくてすいません」


 そう振り返り頭を下げてきた。そしてすぐ、頭を上げてお風呂に向き直ると、お風呂の上に黒い魔法陣を展開させ、お風呂がある場所だけが真っ黒に染め外からでは見えなくさせた。


 カイメイの裸が見れないので、少しがっかりする私とお姉ちゃんに、


「色々とあるんじゃ。カイメイは」


 ハクが何かを知ってそうに、そう言ってきた。


「それ、教えてって言ったら、教えてくれる?」


 私が首を傾げながらそう聞くと、


「我も詳しくは知らん。ただ、何か裸を見られたくない理由があるんじゃろ」


 ハクはそう言って、洞窟の前に座る。皆、色々と隠し事はあるんだろうけど、カイメイは一番謎が多い。というか、カイメイって……


「ネヒィア、甘い物でも食べましょう」


「うん!」


 思考を遮ってきたお姉ちゃんの声に、私は思いっ切り頷いて、ハクの隣に座る。


 そして、


「久しぶりにフレンチトーストを使ってあげるわ!」


 お姉ちゃんが元気よく、料理を始めた。

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