172.魂魄逆転術式
朝、目が覚める。ゆっくりと起き上がって、ふと空を見ると曇っていた。
「おはよう、ネヒィア。朝ごはんよ」
「……ありがと」
お礼を言ってお姉ちゃんから美味しそうなスープを受け取って、のんびりと飲む。
「マナにはだいぶ、慣れましたね」
カイメイが私とお姉ちゃんを見てそう言ってきて、安心したように笑みを浮かべる。
でも確かに、怠いとか、違和感とかはもうない。ただ魔法が使いづらいだけで。
けれどまあ、それも問題ないはず。何があったのかは分からないけれど、あっちの世界は完全に人間が支配していて、そのくせ何故か魔法を使えないから敵なんてきっといない。
私は、美味しいお肉のスープを飲み終わり、
「カイメイ。魔法を教えてくれる?」
そう言うと、カイメイは頷いてから、しっかりとした返事をしてくれる。
「もちろん、いいですよ」
その言葉に私とお姉ちゃんは立ち上がり、カイメイは立っている位置を少し調整して、
「魄を魂に変える術式は、マナで展開するので少し大変かもしれませんが、こんな感じです」
カイメイはそう言うと、マナを操り術式を展開した。
魂を魄に変える術式と大きくは違っていないけれど、魔法陣の色が、ハクが魔法を使う時のように、真っ白で対になっている。
私とお姉ちゃんは、そんな術式を一分もかからずに覚えて、展開してみる。
魔力の時とは少し違って、ゆっくり丁寧に周りに真っ白の魔法陣を創っていき……
「もう少しなのに……」
完成間近で術式が壊れてしまう。やはり、マナに完全には慣れていないようで、お姉ちゃんも失敗する。
「ここからは気合です。体の力を抜いて、焦らず展開してください」
そんな私達を見て、カイメイはそう優しいアドバイスをくれる。私とお姉ちゃんはそれに頷き、諦めず何回か展開して……
「流石ね、ネヒィア」
「ありがとう、お姉ちゃん」
お姉ちゃんよりも先に私は成功した。
「体は大丈夫ですか?」
カイメイの言葉に体を確認してみるけれど、特に不調はない。
あの魂から魄に変わった時の不快感というか、体の奥底が黒ずんで重くなるような、そんな感覚は全く無く、それどころか懐かしいような、落ち着くような感覚がする。
「なんか、戻ったって感じで、問題ない」
「ふふ、それなら良かったです。エナさんも頑張って下さい」
「言われなくても」
お姉ちゃんも魔法陣を展開しては壊れるを繰り返し、私が出来てから四度目で成功させた。
「やったね、お姉ちゃん」
「ふぅ……昨日カイメイと戦った時より、気力を持っていかれたわ」
「それでも出来たんですから、凄いですよ。普通なら何ヶ月もかかりますから」
カイメイが感心しながら拍手をしてくれる。でも、確かにそれぐらいには難しい術式だった。きっとこの術式を作った人は、だいぶ強い。
でもこの術式、一体いつ使う為に作ったのだろう?魂を魄に変えないといけない時なんて、少なくとも生きてきた中では今の一回しか訪れてないわけで……
私がそんな事を不思議に思っていると、いきなりカイメイの横に真っ白な魔法陣が展開されて、そこからバサッとハクが落ちてくる。
「おかえりなさい……結構、無茶したんですね」
カイメイがいち早くハクに手を差し出して、ハクはそれをなんとか握って立ち上がる。
それにしても体が所々焦げていて、ハクにしては本当に珍しい。
「何があったの?」
私がそう聞いてみるとハクは首を横に振って、
「ちょっと頑張っただけじゃ。気にするな」
何かをまた誤魔化すように言ってくる。普段隠し事をしないハクが、最初から最後まで隠すなんて……でも、深追いするのはあまり気が進まない。だから、私は二言だけ言う。
「ハク。死なないでね?」
ハクはその言葉を鼻で笑って、大体カイメイに治してもらって楽になったのか、どこか嬉しそうな笑みで、
「ネヒィアの方がいつも死にかけておるじゃろ」
そんな皮肉を返してきた。
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