171.影の世界
木々を突き破って、物凄い速度で飛んでいく私は、それでも空中でもがいて、自分の影の中に入る。
「はぁ……はぁ……」
この敵味方そして物の影を問わず、あらゆる影から影に移動できる私の小技は、意外とマナを消費する。
けれどそれ以上に使い勝手が良く、誰かと戦う時私はよく使っている。それに今みたいに影の中に潜って気配を消せるんだから、物凄く便利。
私は影の中の世界で、深く深呼吸をしながら体の傷を治していく。
影の中の世界は外と違って、影がある場所だけが明るく、他が暗い。この森の中で動いているのは、エナとネヒィアの二人だけだから、動く明かりを見つけて……マナの気配を掴む。
私はエナだと確信して、動く明かりに飛び込む。そして……
「それは偽物よ」
マナで創られた精巧なエナを殴り、それが空間に溶けていく中、後ろから本物のエナの言葉が聞こえてきて……
「そんな……うっ……」
エナに後ろから抱きつかれて、羽交い締めにされる。それでも何とか逃げ出そうとするけれど、エナの馬鹿力には勝てない。だから私は、諦めたように言う。
「ま、負けました……」
◆
「ネヒィア、勝ったわよ」
ぐだっ、としている私に手を差し出してお姉ちゃんはそう微笑みながら言ってくる。
私はその手を握ってなんとか立ち上がり、お姉ちゃんに軽く抱き付く。と、お姉ちゃんの後ろにカイメイがいて、勝ったはずなのに無傷でこちらにやって来ている。
「お姉ちゃん、本当にカイメイに勝ったの?」
私は気になってお姉ちゃんにそう聞くと、お姉ちゃんは私にマナを分けてくれながら答えてくれる。
「ええ、一応ね」
お姉ちゃんもカイメイも、見た感じ全然余力が残っているのから、一応なんだろうけど……最後まで戦ってたらどっちが勝ってたんだろ。
ハクと違ってカイメイは戦いに関しては異次元だから、もしかしたら魔力がマナになったばかりのお姉ちゃんに勝ててたかも?いや、そんな事はないか。だって、私のお姉ちゃんは物凄く強いから。
「カイメイ、ありがとう」
私のその言葉に、カイメイは嬉しそうに笑う。
「こちらこそ、ありがとうございました。エナさんと、ネヒィアさんから色々と学べて、私は満足です」
「本当に?」
どこか満足げではなさそうなカイメイに、私は首を傾げてそう言うと、
「嘘じゃな」
カイメイの後ろからハクが出てきた。そんなハクにくるりとカイメイは向いて、微笑みながら言う。
「バレてしまいましたか。ハク、私とやりません?」
「いい、いい。お主は化け物じゃからな」
カイメイの言葉にハクは手を横に振って、降参を表す。それを見て微笑みを浮かべながら、四人で洞窟の前へと仲良く戻る。
洞窟の前とへ着くと、私とお姉ちゃんを見ながら、
「明日の朝まではこのまま魄でいましょう。朝が過ぎたら、魄を魂に戻す術式を教えます」
カイメイがそう言ってきたので、二人同時に頷く。魄を魂に戻す術式を覚えれば、あっちの世界に長く居れる。そうなれば何をしよう?私がそんな事を考えていると、
「そう言えば、我は少々ここを離れる。明日の朝には返ってくるはずじゃ」
ハクが珍しく、そう言ってきた。カイメイなら、何かと忙しそうなので分かるけど、暇そうなハクが?私はそう思って、
「何するの?」
試しに聞いてみると、
「ちいーと、野暮用じゃ。気にするな」
ハクはどこか隠し事をするようにそう言って、正直に言ってくれない。
「そう。まあ、いっか。いってらっしゃい」
私は面倒くさいので、深く聞くことなく送る。ハクは、おう!とだけ言って、空を飛んでどこかに行った。
と、ふとカイメイが、
「あの方角は王国ナタラですね。戦争にでも参加するんでしょうか?」
ぽつりとそんな事を呟いて、でもそれにお姉ちゃんがまさかと言った感じで、
「そんな事ないわよ。あそこの魔王、ハクよりは強いもの」
そうカイメイに返して、カイメイと私とお姉ちゃんは三人で仲良く雑談をして、気が付けば夜になり夜ご飯を食べた後、三人で眠りについた。
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