170.全開放
たった二歩で、お姉ちゃんはカイメイから離れて、私の隣に来る。
カイメイも魔法がぶつかった場所からは距離を取り、私達の様子を伺っている。
「流石カイメイだね。ハクよりも全然強い」
「当たり前です。私は攻撃魔法が大の得意ですから」
不敵な笑みを浮べるカイメイに、少し重くなった体で構えを取る。
木々が軋み、落ち葉が地面に押し付けられ柔らかさを失った中で、溢れんばかりのマナを纏い、同時に、
「『解放』」
お姉ちゃんも私と同じ魔法でマナを底上げし、お互いに目を合わしてから、地面を思いっ切り蹴ってカイメイへに肉薄する。
「遅いですね」
カイメイのそんな声とともに、私の蹴りとお姉ちゃんの拳は空を切り、消えたと思ったカイメイが私の影から姿を現し、防御も間に合わず私は一撃派手に蹴りをもらう。
「ネヒィア!」
木を何本か貫通して吹き飛び、なんとか空中で態勢を立て直して地面に足をつくけれど、また影からカイメイが飛び出し今度は上に蹴られ、森を抜けて宙を舞う。
この影から出て来ての攻撃、体の中が魔力で満たされていて初めて、ギリギリ反応できる速さ。それぐらいに速い厄介なカイメイを今の状態でどうにかするには、辺り一帯を完全に照らして影をなくすしか方法が思い付かない。だから……
「『生輝』」
私の声とともにマナが集まり、真っ白な光の玉が出来上がる。そして次の瞬間には、視界が一瞬にしてホワイトアウトする。
「これで……えっ?」
蹴られたのか殴られたのかは分からないけれど、ポキッと骨が折れた軽い音と共に私はどこかへと吹き飛ぶ。
完全に気配がなかったその攻撃に頭を混乱させつつも、
「お姉ちゃん、気を付けて!カイメイ、気配が……」
思いっ切り大きな声でそう叫ぶと、言葉を発している最中に優しくキャッチされて、
「ないのね、ネヒィア」
優しいお姉ちゃんの言葉が聞こえた。そしてすぐ、折れた腕に優しく回復魔法を使ってくれながら、お姉ちゃんは私を抱えたままその場を離れる。
「お姉ちゃん、魔法を解くから目を……」
「もう少しだけ待ってちょうだい」
私の腕が治ると同時に、お姉ちゃんは急に止まって私を降ろしてくれる。そして、
「ネヒィア、今よ」
お姉ちゃんの言葉に魔法を解き、白かった景色が一変、元に戻り目が残像だらけになる。
それでもその瞬間、お姉ちゃんとカイメイが互いに動き、それぞれ一撃ずつ攻撃を入れ、またカイメイは姿を消した。
「お姉ちゃん、すごいね」
私がそう言葉を零すとお姉ちゃんは笑う。そして、
「ネヒィア、マナをくれないかしら?」
そう聞いてきたのですぐに頷くと、
「んっ♡」
唇にキスをされて、反射手にお姉ちゃんの手を握る。そして数秒の間でほぼ完全にマナを吸われて、物凄い怠さに私がその場に座り込むとお姉ちゃんは私の頭を撫でてくれ、
「大好きよ、ネヒィア。『全開放』」
辺りに強い風を吹かし、お姉ちゃんは優しく魔法を唱え、踏み込む。
「『全開放』」
その瞬間、カイメイの声も聞こえて、お姉ちゃんとカイメイの溢れ出た重いマナがぶつかる。
辺り一帯がそんな二人のマナに圧倒され、静まり返るその瞬間、お姉ちゃんとカイメイはまた一瞬で肉薄してぶつかる。
その衝撃波で木々を、落ち葉を吹き飛ばしたと思ったら、カイメイが姿を消し、お姉ちゃんは何もない後ろを蹴る。
そして……
「遅いわね」
お姉ちゃんのその一言と共に、カイメイが重く鈍い音をたて、吹き飛んだ。
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