166.偽物だって本物に勝てるはず
空間の歪みの中をまた漂い、白い光に飲み込まれる。そして光が晴れて目を開けると、先に入っていたお姉ちゃんとカイメイにぶつかって、仲良く四人で地面に倒れる。
「お姉ちゃん、温かい」
「ネヒィア、そんなに私のお腹がいいなら、こうね」
私がお姉ちゃんのお腹に顔を埋めると、嬉しそうにお姉ちゃんは私を抱いてくれる。
「す、すまんカイメイ……は、離してくれんか?」
「少しの間だけ待ってください」
カイメイとハクの方は、動けば動くほどに絡み合って、カイメイは楽しそうに、ハクは必死に離れようともがき続ける。
そんな時間がしばらく続いて、先にハクがカイメイから離れると、
「作戦会議をすると言っておったじゃろ?」
立ち上がってそう言う。それを聞いて、お姉ちゃんは私を離してから、ハクの言葉に頷くと同時、私の方を向いてから、
「そうね。やりましょう。けれどその前に、ネヒィア。どうして、山桜という花が欲しかったの?」
律儀に名前まで調べた山桜という花は、何か特別な花なのだろうか?と、ずっと気になっていたように、お姉ちゃんが聞いてきた。
なので私は、空間魔法を使ってちぎった山桜を取り出すと、
「モネクに何かしたから、だから何がいいか考えてたら、空間の歪みの先でこの花を見つけて、モネクにも見してあげたいって思ったの。だから……モネクがいた最後の場所に、この花を植えてあの場所に沢山咲かせたい」
私はモネクの事をふっと思い出しながら、お姉ちゃんにそう言って、大事に山桜を仕舞う。それから、
「だから、私この花が欲しかったの。付き合ってくれてありがとう、皆」
ぺこりと頭を下げて感謝をした。それを聞いて、お姉ちゃんは満足してくれる。
「そうか。役に立てたのなら良かった。それに、やる事も一回で全部済んだ。もうあの世界に行くこともないな」
そしてハクは、私がもうあの世界に行く必要がないと思って、安心したように久しぶりに柔らかい笑みを浮べる。
けれど、別にもう行かないなんてことはない。だから、首を傾げて平然とハクに言う。
「また行くよ。楽しかったから」
「ま、また行くと?」
私の言葉にハクは目を真ん丸にして驚いたあと、雰囲気がガラリと変わって、私に詰め寄ってくる。
「もう一度あの世界に行ったらお主、死ぬぞ?」
「だから、大丈夫な方法を考えようって話でしょ?」
怯むことなく私は言葉を返すと、ハクが睨んでくる。そんな私達の間にお姉ちゃんが割って入って、
「ハク。私達をそんなに心配してくれてありがとう。次行く時は、絶対に死なない方法を見つけてから行くと約束するわ。だからひとまず、落ち着きましょう?」
優しくそう言うけれど、ハクは食い下がったまま。そんなハクに、私は手を差し出して、
「ハク。お姉ちゃんが言った約束も絶対に守る。だから、仲直りしよ?」
仲良くしようと言ってみるけれど、ハクは動かない。そんな動かないハクに、私はその手をそのまま伸ばしてハクに思いっ切り抱きつくと、
「ハクが許してくれるまで、ずっとこうだから」
それだけ言って私も黙る。十秒……二十秒……時間が流れていって、気が付けばハクは目に涙を溜めながら、
「お主はずるい……ずるばっかじゃ……」
子供のように私に言ってきた。私はその言葉に上手く言葉が返せず黙る。
きっと、お姉ちゃんの次ぐらいに心配してくれているハクに、また心配をかけてしまう。ごめん以上の言葉が見つからない。
私は無意識に腕に力が入り、さらにハクをぎゅっと抱きしめた時、ハクは折れたように、
「約束を破ったら、許さんからな?」
私に悪魔らしい声色で言葉をかけてきた。だから私は頷いて、
「大丈夫。今までで一度も、約束を破ったら事ないから」
決して嘘ではない、本当の言葉でハクに言葉を返した。
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