165.矛盾する約束と出会い
「ま、待て!我はまだ……」
「あそこ、見て下さい」
走り出したカイメイに無理矢理手を引かれ、連れて行かれるハク。そして、それを私とお姉ちゃんは追いかける。
カイメイが指を指した先は、透明な板から沢山の本が見えている建物だった。
本。やっぱりそれが一番情報を得るには効率がいい。
カイメイは正確に走って行き、一分もかからず建物の中に入ると、階段を上がって二階へ。そして、本が沢山置かれた場所へと辿り着く。
「ここで、あの花のことを調べましょう」
カイメイの言葉に頷いて、皆各々本を開いてみる。そして案の定、文字が全然分からないので、
「『解読式』」
読めるよう魔法を使ってから、本に目を通していく。
それから手当たり次第に次々と、違う本を読み漁っていると、
「花の大図鑑……」
表紙にそう書かれた分厚い本を見つけて、私は確信しながら読んでいく。そして……
「あった……皆、あったよ」
空間の歪みから見た通りの花を見つけて、本に載っている写真を皆に分かるように見せて言う。
「桜……山桜って言うらしい」
私が指を指したページを皆が見て、ハクはほっとした顔になって、お姉ちゃんとカイメイは小さく笑みを零す。
そしてすぐ、山桜が載っているページを魔法で写し取り、他の三人は持っていた本をあった場所に返す。
「行きましょう」
私が本を返したのを確認して、カイメイはそう言うと来た道を走り始める。
その後を皆で追いかけて、この世界と元の世界が繋がっているあの場所を目指す。
そんな帰り道、桜という名前を知れて満足していた私に、
「楽しかったわね」
お姉ちゃんが笑いながら、そんな事を言ってきた。だから私も笑って、言葉を返す。
「本当、楽しかった。また、ここに来たいな」
けれどそれを聞いていたハクが、少し怒りながら私に鋭い視線を向けて、重めの声色で言う。
「ネヒィア、死ぬぞ?ここは来てもいい場所じゃない。今回きりじゃ。分かったな?」
「ハクって、私が死んだら悲しいの?」
ハクの言葉に、私はからかうようにそう言ってみると、ハクは私から視線を外して、
「そんなの……当たり前じゃ」
急に勢いをなくし、小さな声で呟いた。私はそんなハクにちょっと驚く。いつもならこういう時、からかったらもっと怒るのに……
今回は、私が本当に死んでしまう想像が軽く頭に思い浮かぶぐらいには、死の隣に私はいるらしい。
でも、ハクが私を心配してくれているのが嬉しくって、
「そう。それじゃ、次来た時は、死なないようにどうすれば良いか考えないと。ハク、心配してくれてありがとう」
お礼を言うとハクは視線を下に向けたまま、何も言ってくれなかった。本当……悪魔なのに悪魔らしくない可愛い悪魔。
そう思いながらくすっとハクを笑っていると、
「また遅刻……」
元気のない小さな少女とすれ違った。顔は見えなかったその少女は、でもやけにいい匂いで……私は思わず振り返ってその少女を見る。と、
「もうすぐです」
いきなりカイメイの声が聞こえて、すぐに前に向き直る。
気が付けば、空間の歪みまでもうすぐの場所だった。
「見えてきたわね」
「はい。これで帰れます」
エナとカイメイがそう言葉を漏らし、十数秒と経たないうちに、空間の歪みの前まで辿り着いた。
そのタイミングで私は、
「ねぇ、皆」
大きな声で三人の足を止める。そして、深呼吸を一回して続きを言う。
「帰ったら、この世界で死なない方法を考えてくれる?」
それを聞いて、お姉ちゃんとカイメイは快く頷いてくれる。そしてすぐに、ハクだけに。私は残り物の瞳を覗き込んでから、優しく言ってみる。
「ハク。ずっと一緒って約束するよ。だから、お願い……だめ?」
私の言葉を聞いて、ハクは拳をぐっと握ってから数秒の間、間を空け……約束じゃからな、そう寂しそうに言ってコクリと頷いた。
「よし。帰ったらまた、作戦会議しよ」
私のその一言に、先にカイメイとお姉ちゃんが空間の歪みへと飛び込む。そして……私はハクの手を優しく握って手を引き、
「ハク、破ったりなんかしない。絶対に」
カイメイとお姉ちゃんと同じ様に、一緒に空間の歪みへと飛び込んだ。
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