164.お隣に死
しばらく歩いて、四角い家の近くに来た。そこは人間が沢山おり……
「あれは何じゃ?生き物か?」
四角い硬そうな物が道を走っていた。
地面は土ではなく、黒色だったり白色だったり。そして、大きな家や小さな家が立ち、透明の板のような物が勝手に開いたり閉まったり……
「魔法……いや、違う。何なんだろう?」
「見たことないものばっかりね。それで、カイメイどうすればいいかしら?やっぱり、何かから情報を得ないとよね?……カイメイ?」
エナがこれからの事を話そうと、カイメイの方を向くと、カイメイは真剣な顔をして、何か考えているようだった。
と、私とお姉ちゃんを見て、
「エナさんとネヒィアさんはもう帰った方がいいです」
いきなりそんな事を言い出した。でも、カイメイに限って冗談はない。だから、私は聞いてみる。
「どうして?」
その言葉に返ってきたカイメイの言葉は少し、ゾッとするものだった。
「空間の歪みの近くにいた時は気付きませんでしたが、この世界の魔力の濃度はすごく異常です。魔力の塊であるエナさんとネヒィアさんは、おそらくここにいれば肉体が空間に溶けて、魂が周りの人間達に吸われて死にます」
「……本当なのね」
エナがカイメイの目を覗き込んで数秒。静かにエナはそう言葉を零した。
「しょうがないな。ここまで来たが、帰るか」
ハクの言葉に誰も反論しない。でも……ここまで来てそんなすぐ諦めたくない。
「ネヒィア、どこに行くの?」
「私はここに残る。お姉ちゃんは帰って。ハクもカイメイも」
私は行く宛もなく歩き出す。カイメイのおかげで時間は限られていると分かった。だからこそ、早くあの花の名前を調べなきゃ。
情報を得る一番確かな物は……
「ネヒィアッ!」
後ろからお姉ちゃんの怒った声が聞こえてくる。久しぶりに聞いたその声は、どこか懐かしくて、でも振り返ることなく私は歩き続ける。
我ながらわがままだと思う。でも、やらなきゃ。何故かそんな使命感に頭が支配されて、私は進んで行く。
けど……私は思わず足を止めてしまう。
「帰るわけ……ないでしょ……」
後ろからお姉ちゃんに抱きしめられたかと思うと、苦しそうな、悲しそうな、力ない声が聞こえてきた。私はその言葉を聞いて、お姉ちゃんの手を握る。
するとお姉ちゃんは深呼吸をしてから、いつも通りの優しい声で、
「私もついて行くわ」
そう私に言ってくれた。だから私も、優しく言葉を返す。
「……ありがとう。大好き」
「私も大好きよ、ネヒィア。だから、死ぬときは二人一緒」
私とお姉ちゃんがそんな会話をしていると、追いかけてきたハクが真剣な顔をして、
「だめじゃ。お主ら帰るぞ」
私の腕を引っ張って、帰るよう促してくる。ハクがこんなにも必死な顔をしているなんて珍しい。でも、私はハクの手を振りほどいて言う。
「帰らないよ。絶対に」
「だめじゃ!帰らぬと死ぬんじゃぞ?」
ハクは少し声を荒らげながら、私の瞳の中を覗き込んでくる。そんなハクの瞳は力なく揺れていて……
「落ち着いて下さい。死ぬと言ってもまだ時間はあります。その間になんとか出来るかも知れません」
ハクが口を開こうとした時、それを遮るようにカイメイが入ってくる。でも……カイメイも少し機嫌が悪そうで……
「でも、約束してください。次、私が帰ろうと言うときは、何が何でも帰ります。いいですか?」
カイメイの気迫に、私は頷く。それを見てカイメイは表情を和らげて、
「行きましょう。時間がありません」
まだ納得のいってないハクの手を引きながら、カイメイは走り出した。
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