163.相応の代償
「通れるようになりましたよ」
カイメイがいつものように洞窟から出てくるなり、皆にそう言った。
「おおっ!やっとか!長かったな」
「それじゃ、取り敢えず皆で行きましょうか」
空間の歪みを通れるようにしたこの半年の間で、大体のやる事を決めておいた。
異世界に行ってまずする事は、情報収集。この半年で、空間の歪みから見える景色はだいぶ変わり、ピンクの綺麗な花びらが落ちたかと思えば、緑色の葉っぱが生い茂り、瞬く間に葉は色を変え枯れかけている。
全く持って不思議なその花について、調べなければ。
「ネヒィア、行くわよ」
「うん!」
エナ、ネヒィア、ハク、カイメイの四人で一斉に洞窟へと入り、空間の歪みの前へ。
「『認識阻害』」
皆一斉に魔法を使って姿を消し、行ってすぐバレないようにしておく。これで準備は完了。後は手を繋いで……
「ネヒィア」
「うん。行こう」
空間の歪みへと一斉に一歩踏み出した。
◆
不思議な浮遊感に身を任せ、手を握ってくれる感触に安心しながら、出口へと辿り着くまで待つ。
こんなに長く、空間の狭間を漂うなんてきっと今後そうない。
何処にでも行けて、だからこそどこにも行けない、あらゆる次元が混ざり合って一個の次元をなしている、不安定なのに安定している場所。
そんな場所を一分近く移動して、スッーと光に飲み込まれていく。その眩しさに目をつむり、やがて眩しさは落ち着きを取り戻す。そして、目を開けると……
そこには、見たことのないものしか視界に映らない、異世界『地球』が広がっていた。
「す、すごい……あそこ、見たことのない家がある」
「本当ね……あの四角い家、高いわね」
「人間ばっかりじゃのう。悪魔はおらんのか?」
「この世界の人間の気配は、不思議です」
皆思い思いの感想を言ったあと、取り敢えず辺りを散策してみる。
歩く人間もちらほらいるけれど、特にこちらに気付く様子はないので、がっつり見る。
何枚も服を着て、少し忙しそうに歩いて行く人間たち。魔法で体温を維持して、魔法を使って飛べばいいのに。どうして皆こんなにも服を着て、歩いてるんだろう?
そう思いながら、更に人間を見ていると何か光る板を見ながら歩いている人間もいる事に気付いた。
真剣にその板を見て、手でその板を弄る。どこか不思議なその光景に、驚いていると、
「あの、ネヒィアさん。あっちから沢山の人間の気配がします。この花の名前や、この世界の事について何か分かるかもしれません」
カイメイは四角い高い家がある方を指さしながら、あまり顔には出てないけれど、テンション高めにそう言う。
私はチラッとお姉ちゃんの方を見ると、すぐに頷いてくれて、この空間の歪みの場所を私達だけに分かるようマークすると、
「行きましょうか。ほら、ハク。行くわよ」
地面の綺麗に敷かれた石を、まじまじと見ていたハクに声をかけて出発する。
「それにしても、不思議じゃな。我らの世界とは全然違って人間しかおらんぞ」
「確かにそうね。一種族だけが世界を支配してるだなんて、すごく気になるわ」
「でも、あの花の名前を調べるのが先」
皆踏み込んだことのない世界で、興奮していた。
お姉ちゃんの手は温かい。私とお姉ちゃんは一緒に手を繋ぎ、魂が犯され始めた事に気付かないぐらい楽しく、この世界を進んで行く。
お久しぶりです。来月からは出来る限り投稿します!
それとPV10万ありがとうございます!ここまで読んでもらえるなんて思ってもなかったので、本当に嬉しいです。
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