161.通り抜け
「これは……何?」
「空間が歪んで、違う場所に繋がったままになっておるんじゃ。普通、こんな事は起こらんのじゃがな」
ハクはそう言って、その空間の歪みに手を伸ばす。すると、バチッと空間が拒絶するようにハクの手を弾いた。
「誰の魔力で維持されてるの?」
ネヒィアのその問いに、今度はハクに変わってカイメイが説明してくれる。
「恐らくですが、繋がっている場所の魔力かと。ですので、こちらからはほぼ干渉が出来ません」
その説明にネヒィアは少し驚きながらも、最後に一番大事な、知りたい事を聞く。
「この花の名前は何て言うの?」
その問いにその場は静かになる。けれど、ネヒィアはそんな事気にせず続けて言う。
「この先に行ってみようよ」
見れば分かる。こんな綺麗な花この世界にはない。だからきっと、この先は異世界に続いている。
行くことが怖くない訳じゃないけど……行ってこの花の名前を聞いて、手に入れたい。その先の景色を見てみたい。絶対に何かがあるそんな予感がするから……
そんなネヒィアにハクは、心配するように言ってくる。
「流石にそれは、危険すぎるぞ。いつ閉じてもおかしくない、行く途中で空間の狭間に閉じ込められるかもしれん……そうなれば帰ってこれんぞ?」
「いいよ。それでも」
私のその返事に、ハクは怪訝な顔を浮かべる。でも、ハクを巻き込むつもりはない。私一人で……
「意外ね。ネヒィアがそんな事を言うのは」
「そう?」
「ええ。まあ、私も行ってみたいから一緒に行きましょ」
「……うん!」
もしかしたら、エナにも反対されるかもと思っていたネヒィアはけれど、すんなりと納得してもらえて、少し反応が遅れてから、嬉しそうに返事をして頷く。
すると、カイメイも、
「私も行ってみたいです。だめですか?」
「もちろん、いいよ」
少し楽しそうにそう言って、ネヒィアの返事に笑う。
残るはハクだけ。ネヒィアがじっとハクを見つめると、
「……分かったぞ。行けばいいんじゃろ?行けば」
半ばヤケクソにそう言ってため息をつく。そんなハクにネヒィアは感謝しながら、
「それじゃ、どうやって行くか考えよっか」
そう言って作戦会議が始まる。
最初の問題は、いつ閉じてもおかしくない空間の歪み。これをどう安定させるか。
そもそも空間系の魔法は結構な量の魔力を使う。いくらあっち側の魔力で成り立っているとはいえ、いつか尽きるはず。早くなんとかしなければ……
「あの……なんとか出来るかもしれません」
各々方法を考えていると、カイメイが手を上げた。
「どうするの?」
ネヒィアがそう聞くと、カイメイは手を出して、
「『魔力誘導』……これで、空間の狭間の魔力が自然に集まって、この魔法の維持に充てられるようにしました。これで様子を見て、問題なければ、安定するはずです」
「……すごいね、やっぱり」
「あ、ありがとうございます」
嬉しそうに礼を言うカイメイ。
けれど、エナは不思議そうにカイメイに問う。
「でも、どうして魔法が使えたの?ハクの手は弾かれてたのに」
「あ、あのそれは、あっちの世界とこっちの世界……お互いにほんの少しではありますが、魔力が入れ替わってるんです。だから、魔法だけなら通り抜ける事が出来ます」
そんなカイメイの返事を聞いて、次に問題だった事が解決する。
「なら、壊せばいっか。内と外から」
「そうね。私がやるわ『相殺』」
この空間の歪みを、通り抜けれないようにしている力を、時間はかかるけれど壊す魔法を、エナが叫んだ。
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