160.桜の花言葉
パチッ、と炎の中で木が弾ける音が聞こえて、ネヒィアは目を覚ます。辺りは薄暗く、もうすでに夜になったらしい。
「おはよう、ネヒィア」
「……うん」
眠たそうな返事をして、ネヒィアは目を擦りながら、起き上がる。と、そこで初めてネヒィアは異変に気が付いた。魔力が思ったよりも回復していない。というか、この感覚……
神獣にとって魂の次に大事な魔力は、その量の多さが純粋な強さに直結する。
ネヒィアは、自分の体におかしいところはないかと、体を動かしながら探る。けれど、どこを見てもやっぱり異常はなくって……
「まあ、そう慌てんでもよい」
珍しく焦りがみえるネヒィアの耳に、ハクの声が入ってきた。
けれどネヒィアは、か弱い少女のように震える声で、言葉を返す。
「ハク……私、魔力が……」
ネヒィアの魔力は、完全に回復しきっている。体のどこにも異常はなく、魔力の流れも正常。でもだからこそ、異常なのだ。
たったこれだけの魔力量が限界だなんて……
うつむくネヒィアに、ハクはばつが悪そうに口を開く。
「……翼じゃ。ネヒィアが寝ている間に我がここに帰って来たら、エナがお主の翼を治しておったんじゃが……」
ハクのその言葉を聞いて、大きな翼を出すネヒィア。焦げ茶色の綺麗なその翼には、右翼、左翼どちらも同じ位置に魔法で貫かれた穴があって、
「ジザンサス……」
モネクとエナを見つけた時、何故かいたあの悪魔。そういえば、セキウはジザンサスがいるとは言ってなかった。もしかして……
「やはり、おったのか。あやつ、何かまずい事を企んでおるな」
「ハク。どうしたら治せる?速く治してあいつを」
「ネヒィア。そんな怖い顔、しなくていいわ」
翼を一段と大きく広げ、毛を逆立てながら鋭い目付きになるネヒィアに、今度はエナが優しく声をかけた。
「お姉ちゃん……」
どうして?とそんな表情でエナの方を見るネヒィア。
そんなネヒィアに、ハクでもエナでもない違う声がかけられる。
「ジザンサス以上に大事な事があるからです」
柔らかくて、でもどこか真っ直ぐなその声の正体は、暗闇から姿を現した、カイメイだった。
「確かに最近のジザンサスは度が過ぎていますが、明らかに前よりも強くなっています。敵討ちに行きたいのは分かりますが、このまま行っても死ぬだけです」
その言葉に、ネヒィアは無性に腹が立ち、拳を握ってカイメイを睨みつける。周りの空気が重くなりピリつく。
けれどカイメイは、そんな事では怯まない。少しだけ笑みを浮かべてから、子供をあやすように言葉を聞かせる。
「ネヒィアさん。私がその傷を治しますから、完全に治るまでは、待って下さい」
その言葉に、ネヒィアはしばらく無言になる。そして、ネヒィアはスッと翼を畳んで……
「……分かった」
諦めるように口を開いた。その瞬間、ピリついていた空気が少し柔らかくなる。そのタイミングを見計らって、ハクが間髪入れずに言う。
「ちょっと来てほしいところがあるんじゃ。良いか?」
ハクの問いにネヒィアは頷き、ハクに近付く。それを見て、エナもカイメイもハクへと近寄り……どうやら皆で行くらしい。
ハクに促されるまま洞窟へと入って、二股に別れている道を右に行く。
すると、
「綺麗……」
見たこともない花が映った、空間の裂け目がそこにあった。
後書きでは、お久しぶりです。今日はなんと七夕です!と言っても何か願いがあるわけじゃないんですが。ぱっと思いつかないんですよね……
まあ、過去編がまだまだ続きそうなので、皆様ぜひお付き合い頂ければ!
それと、桜についてあまり言ってませんが、絵里ちゃんの通学路に咲いている桜は山桜です。
……なんか、言っとかないとな、と思ったので書いときます。
それでは!
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