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159.お別れの場所

 

「ゴホッゴホッ……」


 土埃が舞う中で、ネヒィアはなんとか体を起こし立ち上がる。体がだるい……モネクに結構な量の魔力を吸われたらしい。けどそんな事、今はどうでもよくって……


「お姉ちゃん、モネク!」


 辺りを見渡しながら、ネヒィアは出来る限り大きな声で呼び続ける。


 少し歩くと、洞窟の出口らしき道と、もう一方の暗い道が。ネヒィアは一瞬たりとも迷わずに出口に向かうことなく、暗い方へと突き進む。


「……お姉ちゃん!」


 やがて、奥の方で倒れているエナを見つけた。なんとか鹿の形は保ったまま、荒い呼吸を繰り返している。ネヒィアは急いで近付いて抱きしめる。


「大丈夫?お姉ちゃん」


 出血はあまりひどくない。ただ、魔力が尽きかけている。相当魔法を連発したらしい。ネヒィアは自分がギリギリ意識を保てる量を残し、全てエナに魔力を注ぎ込む。


「ネヒィア……大丈夫?」


 エナがそう手を握ってくれながら言う。それに、ネヒィアはいつものように握り返す。


「モネクを見た?」


 その問いに、エナは悲しそうな目をする。ネヒィアだって薄々分かっている。でも……


「魔力を吸われたから……まだ、どこかに」


 あんな酷い状態でも、私の魔力を吸って魔法を使ったモネクなら、と。


「ネヒィア」


 エナはそう優しく言って、苦しそうに首を振る。


「……そっか」


 ネヒィアは寂しそうな顔をしながら、小さな声でたった一言それだけを溢して、下を向く。


 謝りたい事。話したい事。感謝したい事。それがいっぱいあるのに……もう出来なくなるこの瞬間。それは、何千年生きようが、慣れる事なんてない。


 ……ねぇ、モネク。また一緒に遊ぼうね。


 涙を流すネヒィアの頬を優しく拭ってあげ、エナはネヒィアを抱きしめる。


 そして短いようで長い時間の中で、どうにか前に進もうと気持ちを動かす。エナもネヒィアも苦しそうに泣きながら。


「お姉ちゃん……外、行こう」


 どれぐらい経ったのかは分からないけれど、ネヒィアは震えた声で、エナに言った。その声にエナはネヒィアと同じ様に、人の姿になる。


 そして、ネヒィアと手を取り合い立ち上がり、思いっ切りネヒィアを抱きしめる。


「ネヒィアが無事で本当に良かったわ」


「私もだよ。お姉ちゃん」


「生きてれば、きっといつかまた、モネクに会えるわ」


「……本当に?」


「私が嘘を言った事、あるかしら?」


 エナは少し離れてネヒィアの頬を撫でながら笑う。そしてそのまま、手を引いて洞窟の出口へと向かう。


 明るくなるに連れて、風が入り込み森の匂いが鼻をつく。来たことのない、どこか分からない場所。でも……不思議と体は落ち着いていく。


「ネヒィア、出るわよ」


 エナのその一言で、辺りは急に眩しくなる。そして目を開けると……


「何じゃ……お主らだったか」


 ハクが安心したように胸をなで下ろし、立っていた。


「ハク……」


「おう!久しいな、ネヒィア。それと姉様」


「どうしてここに……」


「野暮ようじゃ。気にするな」


 ハクはそう言うと洞窟の中へと歩き出す。それをネヒィアは止めようとするけれど、体が言うことを聞いてくれず、ハクは洞窟の中へと消えてしまう。


「……ネヒィア、休みましょう」


「でも……」


「大丈夫よ。きっと」


 ネヒィアはエナの言葉を信じて、その場で横になる。エナのおかげで体の傷はほぼ治り、後は魔力が回復するのを待つだけ。


 エナは一瞬目をつむると、ひょこっと頭に鹿の耳を出し金色の光を纏わせる。


 エナの周りにいれば、傷と魔力の回復が速くなる。治癒の光なんて呼ばれるものらしい。


 ネヒィアはエナに頭を撫でられて目をつむる。温かくって心地良い。そんな感触に、ネヒィアは静かに眠りに落ちていく。


「おやすみ、ネヒィア」


 エナのその声を最後に、ネヒィアは可愛い寝息をたて初め眠りについた。

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