158.昔話
神様は朝、昼、夜が気に入った。神様は、狼、蛇、猫、虎、鹿、鷲、鯨、狐、猪を気に入った。
だから創ってみた。それらを司る神獣を。
故に神獣は、朝、昼、夜を司る、三体で一つの神の眷属。
そしてさらに細かく位を分けて、朝を司る神獣三体のうちの一体を上から、第一朝、昼を第一昼、夜を第一夜と数える。
ネヒィアで言えば、第二昼、エナだと第一昼という位に当たる。
そして、神獣なのだから獣の姿形になる事が出来、そうして初めて本来の力が発揮される。エナとネヒィアは絵里に合わせて人間の姿になっているだけで、本来エナは鹿、ネヒィアは鷲の支配者なのだ。
そんな神獣の役目は、世界の維持。多少神獣同士仲が悪いとはいえ、ここ何千年間はその役目を守ってきた。
けれど、数年前それが変わった。元第一昼、エナとネヒィアの母のような存在であったモネクが、現第一夜ノーロイドに破れて死んだ。
それがすべての始まりだった。
●○
カーミン大陸、イリム国。ほんの数日前までは、この世界で一番栄えていた大国。そんな大国も今や灰が降り積もり辺り一面灰色の、見るも無惨な景色を宿していた。
「お姉ちゃん……」
そんな大陸の上をネヒィアは大きな翼を広げて、焦りながら飛ぶ。
急に姿を消したエナを探して数日。やっとここまでたどり着いた。ここに来る前、セキウに教えてもらった、ここでモネクとノーロイドが死闘をしているという情報は、どうやら本当らしく所々、魔力の痕跡が残っている。
ネヒィアはそれを頼りに、ただひたすらに突き進む。きっとエナがいるならこの大陸のどこか。早く見つけないと……
灰が舞っている空のせいで分かりづらいけれど、もうじき雨が降り出す。そうなれば……ノーロイドが確実にこの場を支配してしまう。
「お姉ちゃん……どこ」
ネヒィアは焦りと共に、飛ぶ速度を上げていく。壊れた街並みを一瞬で通り抜けて、大陸を横断していく。
魔力の痕跡は段々と濃くなり、エナの魔力の痕跡も見えてきた。この近くにいるはず……お姉ちゃんにもうすぐ会える。もうすぐ……
「えっ……?」
ゴロゴロと空で大きく雷が鳴り、一瞬視界が紫色に染まる。灰が積もって最初は分からなかったけれど、そこは砂浜だった。
海の近くには、大きな鯨が血塗れで倒れており海に入ろうと必死に藻搔いている。きっとノーロイドだ。
そして……その近くには大きな傷を負った虎が一匹横たわっていて……
「モネクっ!」
ネヒィアは悲鳴に近い声をあげて近付く。瞬間、後ろから声がする。
「ネヒィア、避けて!」
右翼を何かが貫いた。後ろを見ると空中を自由自在に走り抜ける鹿と、そして、青い服を着た第二色ジザンサスがこちらを見ながら歪んだ笑みを浮かべていて……
「雑魚がまた来たね」
そう言った瞬間、ジザンサスは今度はネヒィアの左翼を魔法で貫いた。
ネヒィアの翼は力なく消えていき、空中にいられなくなったネヒィアはモネクの前に落ちる。
「……ネヒィアよ……お逃げ……」
「モネク!今治すから、待って!」
「もう……手遅れ……よ……」
モネクはそう言うと、ネヒィアを優しく撫でて笑う。
「だめ……モネク!」
ネヒィアの言葉なんてお構いなしに、モネクの体は少しずつぼやけて消えて行く。
ネヒィアは必死に何とかしようとするけれど、心の中では分かっていた。生きている事自体がおかしい程の傷なのだ。そんなモネクを治せるはずがない。
瞳に涙を溜めて……ネヒィアはモネクに抱き付く。温かいその体は徐々に軽くなっていって……ネヒィアはただ泣き続ける。
そんな時、
「弱いね。それで神獣なの?」
エナがジザンサスに一撃もらい、こちらに飛ばされる。その直後モネクが笑い、ノーロイドは嗤う。
けれど、ネヒィアは気付くことなく、モネクの服を握っていた。
そしてエナがネヒィアにぶつかるその瞬間……三人がほぼ同時に、口を開いた。
「『空間移動』」
「『白鯨・喰海』」
「なっ、『蒼星』」
モネクがエナとネヒィアを纏めて、この星の反対側へと逃がす魔法を。
ノーロイドがジザンサス諸共消す最上位魔法を。
そして、それに気付き焦って打ったジザンサスの歪んだ悪魔の魔法が。
その三つの魔法が奇跡的にぶつかり合い、エナとネヒィアは絵里と初めてこの世界で出会った場所に飛ばされた。
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