157.魂の記憶
「あなたは……」
絵里が驚きながら後ろを振り返ると、不思議な女性が立っていた。見たことのない女性のはずなのに、何故か知っている気がする、そんな女性。
「どこかで……でも……」
「そうね。話したことしかないから、無理もないわ。私はノテーファ。白雪絵里ちゃん、改めてよろしくね」
この透き通った声。やっぱり聞いたことがある。ナール王国に来る前に、噴水の近くで聞いた……
「えっ?絵里ちゃん……」
「約束、したから」
絵里はノテーファにゆっくりと抱きつく。抱きしめてと、言われたあの約束。それが絵里の頭の中に出てきて……ぎゅっと抱きしめる。
ノテーファは一瞬戸惑いながらも、嬉しそうに笑って、どこか安心したように言う。
「あなたやっぱりすごいわ」
それから少しだけ抱き合って、互いに離れる。そしてそのまま、絵里は口を開く。
「どうして、ここに?」
その問いに、ノテーファは少し躊躇うように間をおいてから、申し訳なさそうな表情をする。そして……
「……絵里ちゃんに助けて欲しい事があるの」
「助けて欲しい事?」
ノテーファは頭を下げた。それに絵里は首を傾げる。先程から妙に落ち着きを取り戻し、余裕のある今の絵里は、何でも出来そうな、そんな顔をしている。
だからこそ、ノテーファは緊張しながら言う。
「私がこんな事頼むのは、本当はだめなんだけど……エナとネヒィアを……私の娘を助けて」
「そんな事、言われなくてもするよ。でも……どうやったらいいの?」
「分からない……の。やってみたけどだめだった。私にはもう、どうにも出来ない」
「やってみた?……というか、えっ?娘?」
ノテーファの言葉に今更驚きの声をあげる絵里。先程の落ち着きはどこへやら。ノテーファも絵里のそんな声に、そういえば言ってなかったと、頭を上げる。
「娘って……なら、ノテーファはエナとネヒィアのお母さんってこと?本当の本当に?でも、それにしては似てないような……」
「血は繋がっていない……ただ、私が創ったの。昔のことだけど」
「……創った?ノテーファって何者なの?」
「……絵里ちゃんに一番近い存在の……神様ね」
最後の最後、自分で言って恥ずかしくなったのかノテーファは小さな声でそう言った。
けれど絵里はその言葉に、真剣な顔をする。エナとネヒィアの母親であるノテーファが神様と、そう言ったけれど、よく考えれば神様がやってだめだったものを、私がなんとかしないといけないということで……
何故か異様に頭の回転が速くなった絵里は、ノテーファに問う。
「……エナとネヒィアは今、何をしているの?」
「死にかけてるわね。魂がもうすっからかん。しょうがないことなんだけど」
魂……でも魂なら……
「私の魂を分けたはずじゃ……」
「絵里ちゃんの魂はね、力が強すぎるのよ。言ったでしょ?絵里ちゃんの魔力を使ったって。あれは、エナとネヒィアから出た魂を保護するために使ったの……」
ノテーファが片手を出すと、綺麗な水が燃えているような何かを取り出した。
「これが、絵里ちゃんの魂。これがなければ、私もここには来れなかったわ。受け取って……」
「……ありがとう」
絵里のその言葉を聞いて、ノテーファは絵里の魂を胸に当てる
そして……その瞬間、唐突に絵里の意識はプツリと途切れた。
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