15.理不尽
絵里が昔読んだ、魔王が出てくるエロ漫画。そのエロ漫画は、簡単に言うと寝取り。
魔王が気に入った子を犯し、堕とし、自分のものにしていくと言うありふれた物語。
そんな物語を読んで、絵里は気が付いた。自分はおそらく、この魔王と同じなのだと……
自分のものにした子が自分から離れていく、何処かで傷つけられる、誰かに奪われる。それが嫌で嫌で仕方の無い魔王は、だからこそ気に入った子を全力で堕としたのだ。
傲慢で自己中で弱かった。けど、力だけはあったから……だから、魔王は自分の色に相手を染めて、誰にも染まらない様にした。
そんな物語を読んでどう思うだろうか?魔王は自己中のクソ野郎だと思うだろうか?それとも、最低で低俗なゲス野郎だと思うだろうか?どう思っても何を思っても自由だ。
だから、絵里は思う。自分に似ている可哀想で悲しい魔王、と。
魔王は最後、最初に堕とした子に裏切られ死んでしまう。原因は勇者にその子が寝取られ、勇者の物になったから……
そして、勇者主人公でその物語は第2章に入り、また始まる。
絵里はこんな魔王の終わり方を読んで、泣いたのを覚えている。そして、二度と百合以外のエロ漫画を読まないと誓ったのもまた、覚えている。
魔王はただ弱かった。とても悲しい魔王だった。それを殺した。バットエンド以外の何物でもない酷い終わり方。
それはまるで、もう1人の自分が殺されたようで、だから絵里は、涙を零しながら
「……理……不尽……」
そう一言呟いて、続きなんて読まずに本を閉じた。
それから絵里は時々考える。おそらく魔王は、愛を知らなかったのだろうと。攻めしか知らず、受けを知らなかったのだろうと。
だからもし、死んでしまった魔王に会えるのなら、一言言ってあげたい。好きな子には全力で甘えるべきなのだ、と。
そしたらいつか、魔王は幸せになるはずだから……
けどまあ、甘えすぎと言うのもあまり良くはない。
例えばそう、ベットの上で裸の姉妹に甘えられる。
相手が大変なのだ。甘ければ甘い程に、食べるのが大変になって来るのと一緒で……
階段を駆け下りようと1歩踏み出した絵里だったが、ネヒィアに捕まり引っ張られ結果、部屋の中へと連れ込まれた。
そして、エナが部屋に鍵を閉めると2つある内の1つのベットに絵里は押し倒され……なんやかんやあってエナとネヒィアが裸になり、絵里を襲っていると……
「ネヒィア、エナ、やめて、お願い。ど、どうして、そんなに力を入れるの?」
「だって主様、逃げるでしょ?そしたら主様、絶対にあの猫耳に捕まる」
「えっ、えーと、捕まったら、ヤバいの?」
「ヤバいわよ。ビーストの亜種は凄いぐらいに性欲が強いの。だから絵里ちゃん、たぶん枯れるわ」
「か、か、枯れ、る……」
エナが真剣にそんな事を言って、絵里がビビる。枯れる……漫画でもそうそうない表現である。
だが、どうしてこんなに警戒しているのだろうか?
「ね、ねぇ、どうして私なの?エナとネヒィアがあのマーラって子を捕まえれば……」
「それは出来ないわ」
絵里の言葉を遮り、エナが少し怒ったような声色で言う。
「あの猫耳、今まであったビーストの亜種の中で1番強いもの」
そんな言葉に絵里は驚くが、ネヒィアは平然としている。分かっていたのだろうか?と、
「予想通りニャー」
いつの間に入って来たのか、マーラがもう1つのベットの上に立っていて……
「君達2人、さては人間じゃないニャー。私の凄さを見抜くなんて、雑魚が出来る事じゃないニャー」
「主様、ハグ……」
ネヒィアが絵里に思いっきり抱きつき、力を込めようとした時……絵里の視界はブレて、暗転する。
そして耳元で、甘ったるく重い質量を帯びた声が低く、響く。
「もう二度と離さいなニャー。ずっとずっと一緒に子供を産んで、無茶苦茶でぐちゃぐちゃになるニャー、そして――――」
マーラの言葉を最後まで聞くことなく、絵里はプツッと意識が途切れ、気を失った。
なんか好き、続きを読みたい、そう思った方ぜひブックマークをそして、
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ポイントもついでに下さい。お願いします。本当の本当に!