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144.また、戻る

 エナに乳首を舐められる中、絵里はネヒィアと離れる。


 そして互いに、口の中のフレンチトーストを飲み込んで、ネヒィアが可愛く挨拶する。


「ごちそうさま」


 絵里は少し体をビクビクさせながらも、


「エ、エナっ、ごちそうさま」


 ネヒィアと同じように挨拶をすると、エナは絵里の乳首を舐めるのをやめて、小さな声でぽしょりと、


「美味しかったのなら、良かったわ」


 それだけ言って、絵里にぎゅっと抱きつく。それはまるで小さな子供のようで、


「エナ?」


 絵里が首を傾げながらそう問う。けれど、エナは特に喋ることなく、絵里に抱きついたまま離れようとしないだけ。


 なので絵里はネヒィアに視線を向けると、数秒の間何かを考えた後、ネヒィアはしれっと、


「主様。多分お姉ちゃん、発情期」


「えっ?それってどう言う……」


 ちょっと前にネヒィアが発情期になった、とかそんな事はあった気がするけど……そう言えば結局なんでそうなるんだろう。


 神獣ならみんななるのかな?それともエナとネヒィアだけ?


 なんて絵里が考えていると、ネヒィアが魔法で体を綺麗にしてくれる。


 温かい風が体の周りで渦巻いて、数秒でエナ、絵里、それとネヒィアは綺麗になる。


「ありがとう、ネヒィア。それで……大丈夫なの?」


 ネヒィアにお礼をって少し心配そうな視線で、絵里はエナを見ながら言うと、ネヒィアは少し可笑しそうに、


「大丈夫だよ、主様。神獣ならみんな、発情期は来るものだから。お姉ちゃんの頭、撫でてあげて」


「う、うん。分かった」


 絵里は少し戸惑いながらも、エナの頭を撫でる。すると、エナは絵里の手に頭を押し付けるようにしながら、頭を動かす。


 それを微笑ましそうにネヒィアは見ながら、


「お姉ちゃんはだいたい一日あれば終わるから。だから今日はゆっくりしよっか。ハクもいないし」


 そう言うと、ネヒィアも絵里の隣に座って、甘えるように抱きつく。


 ハクが居ないことに絵里は少し疑問を抱くけれど、きっと帰ってくる、そう思って、


「ねぇ、エナって何が苦手なの?」


 ネヒィアと楽しく会話する。


「食べ物はないはず。体が汚れることとかかな」


「それなら、エナとネヒィアっていつ生まれたの?」


 絵里のその言葉に、ピクっとエナの体が動く。けれどネヒィアは、昔を思い出すように、


「昔だよ。本当に昔。だから、もういないんだ。母も父も」


 その言葉にエナはピクっと体を震わせる。そして……


「母さんも、父さんも……また、帰ってくるって……そう……」


 小さく、本当に小さく、エナは悲しげに言葉を発した。

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