14.恋焦がれつつ
近くにいた人に変な目で見られたが、それは気にせず、
「ネヒィア、絵里ちゃん。普通の宿にしましょう。そして、宿は絵里ちゃんが選んでね?」
「う、うん。分かった。普通の宿ね、普通の……」
そう言って絵里はネヒィアの手を取り、足早にエナについて行く。
絵里とエナは先程、ネヒィアの口を手で押えて何とか続きは言わせなかったが……また、何かしら言いそうなので、喋らず静かにしておけば後で何かご褒美をあげる、そう言っておいた。
その効果のおかげか、ネヒィアは一言も喋らず絵里と一緒にエナについて行く。
「あっ、絵里ちゃん。あそこに一応、宿があるわよ」
それからしばし歩くと、エナが宿をみつけたらしく指を指す。だが、その宿はあまり外観が良いとは言えず、それに少し小さめである。
「もう少し、見てみよ」
「そうね」
絵里の言葉に短く返事をして、エナはまた宿を探し出す。
それから一通り歩いて周り……
「あの宿にしようよ。綺麗で広そう」
「分かったわ。絵里ちゃんが良いならそれで」
何軒か見た中で1番綺麗な宿を絵里は選び、エナを先頭に宿へと入る。
その宿は木造の3階建て。まあまあ新しく広い。壁は白であり、窓は少し大きめだろうか。
宿の中には入ってすぐに受け付けと階段。それと少し奥の方に廊下があり、その先はおそらくお風呂だろう。
「いらっしゃいニャー。可愛い女の子3組なんて、胸が高鳴るニャー」
受け付けへと向かうと、猫耳のピンクのエプロンを着た、絵里とほぼ同じ背の可愛い女の子がそんな挨拶をして、耳をピコピコさせる。
それを見て絵里は驚き、そして心の中で喜んだ。人間の姿に近いビースト族とかいう種族だろう。尻尾と猫耳以外は人の姿そのものである。
初めて見る可愛い猫耳の女の子は、絵里にとっては感動ものだが、
「絵里ちゃん。何泊にする?」
エナは慣れているのか、特に何も反応せずに絵里に質問をする。それに絵里は、意味の無い言葉を言いながらも返事をする。
「あ、えーと……3泊、かな」
まあ、これぐらいが丁度いいかなー……あまりこの国に長くいる気もないしなー……なんて絵里はあまり深く考えずにテキトーに決めた。
それに猫耳少女が
「3泊なら銀貨1枚ニャー。お風呂、それと食事は2食付きで、2階と3階の部屋が空いてるニャー」
絵里とエナの会話が聞こえたのか、絵里に向かってそんな言葉がかけられる。
それに少しだけ絵里はびっくりするが、エナは平然と
「なら、3階の部屋を使わしてもらうわ」
そう言ってどこから出したのか、綺麗な銀貨を1枚猫耳の子に渡す。
「毎度ニャー。ご飯は朝と夜、お風呂は夜、深夜は外出出来ないニャー。それと、もしかしたら君達……いや、絵里ちゃんの部屋で一緒に寝るかもしれないニャー。以上、受付のマーラでしたニャ〜」
マーラと名乗った猫耳さんは簡単な宿の説明をし、最後にどんでもない事を口にした。それはもちろんエナ、ネヒィアにも聞こえており……
「来ても追い出すわよ?」
「ニャー。出来るものならやってみるニャー」
そう言ってマーラはスっと消えた。それにエナはイラッとしたように
「覚えておきなさいよ?」
誰もいない受付に低く怖い声で呟いた。
それを黙って絵里とネヒィアは聞いていたが、受付の机の上にマーラが置いた鍵を取ると
「行きましょう、絵里ちゃん」
そう言ってエナはスタスタと歩いて階段を登って行ってしまう。それに絵里は、ネヒィアと手を繋いで後ろを付いて行く。
「エナ?あの、さっきのマーラって子と知り合い?というか、部屋に来るってどうゆう事?」
少しして、絵里が恐る恐るエナに質問すると……エナはイライラとした声色で
「さっきの奴、絵里ちゃんを気に入ったのよ。だから……襲って来るでしょうね」
「気に入った?襲って来る?あの子が?」
エナの言葉に疑問符を浮かべる絵里。マーラに気に入られた、と。だから、襲われる……うーん。分からん。
と、そんな絵里にさっきから何も喋ってなかったネヒィアが、さも当然と言ったように説明を入れてきた。
「主様。どんな世界でも、恋があればレ○プがある。主様はあの猫耳を発情させた。だから責任とらないと、ね?」
ネヒィアのそんな言葉に、声に、この世界に来て初めて絵里は、色んな意味で恐怖を感じた。
理由は不明。ただ、背筋は凍り、嫌な予感が全身を駆け巡り……本能が思いっきり叫んだ。
――逃げろ!今すぐ逃げろ!やばいぞ!絵里!――
そんな叫びに絵里は従う。逃げなければ、何かヤバい事が起こる……
そう絵里は確信し、ネヒィアの手を離すと思いっきり登っていた階段を駆け下りた―――――
○に入る文字は、イ。
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