129.世界一の宝物
「それで、他に要る物は?」
「えっ、えーと、そうね……」
絵里の少しだけ拗ねた声に、エナは口も目をさ迷わせながら、言葉に詰まる。
そんな様子を見て、絵里は再びエナの物を漁り始める。武器やら石やらは無視して本を一冊ずつ、また面白いのがないかと題名を流し読みして……
「『絵里ちゃんの可愛いところ』」
またまた見つけた手書きの本。表紙には題名と私の絵が可愛く書かれている。
『ネヒィアの可愛いところ』の時の絵と字とは違っていて、絵も字もとても綺麗になっている。
中身はこんな感じ。
「絵里ちゃんは怒ると可愛い。絵里ちゃんは不意に可愛い。絵里ちゃんは犯すと可愛い。絵里ちゃんは……あっ」
エナに本を取られ、間の抜けた声を出す絵里。一方エナは、
「もう……許して……」
ちょっと涙目になりながら、別にいいのに許しを乞う。ネヒィアと絵里の可愛いところの本が相当効いたらしい。涙目で顔を真っ赤にして少し震えている。
そんなエナを後ろから絵里は機嫌よく抱きしめると、頭を撫でながら、ぎゅっと抱き締めて耳元に顔を近付け、甘い声で小悪魔のように囁く。
「エナは恥ずかしがると可愛い。エナは頑張り屋さんなところが可愛い。でも……エナは今が一番可愛い。大好き、エナ」
その絵里の声でとうとう限界に達したエナは、恥ずかしさが爆発して、逃げるようにエナは、
「よ、よし、絵里ちゃん。か、買い出しに行こう」
「えっ?他のものはここに置いて行くの?」
「そ、そうよ。だって他に大事な物はないもの」
予想外の言葉に絵里は一瞬、間を開けてから、
「本当にいいの?」
「ええ。いいわ。この二冊の本があれば他は要らない。最初から全部ここに書けばよかったのよ。だから、いいわ」
絵里の言葉に何か吹っ切れたようにエナは言って、
「ハク」
名前を呼ぶと、ハクがひょこっと顔を出す。
「なんじゃ。今は忙しいんじゃが……姉様、熱でもあるのか?」
「ないわ。街まで連れて行って欲しいの。頼める?」
「わ、分かった」
エナの少し恐怖を感じるほどに鋭い一言にハクは、引き攣った笑みを浮かべて、魔法陣をもう一つ展開する。
そして、その中にエナはなんの躊躇いもなく入って行き、慌ててそれを追う。
一歩で魔法陣に入って、一歩で魔法陣を出ると、何度か来た街に。そうして、絵里が出た瞬間に後ろにあった魔法陣は、溶けるように消えて無くなる。
それを知ってかエナは、後ろを振り向きもせず歩き出してそれに、絵里はちょっとだけムスッとしながら、スタスタ駆け寄って、
「ネヒィアとエナの世界一の宝物、を置いていくの?」
意地の悪い笑みを浮かべながら先程、絵里の可愛いところの表紙の裏に書いてあった文を読み、エナの手を取る。
そしてそのまま、絵里はエナの顔を覗き込みながら、甘えるような声で言う。
「エナ、一緒に居ようよ。ダメ?」
急に寒くなってきた今日この頃。今年はインフルエンザが流行っていると耳にしました。
投稿が止まったら、インフルになったと思って下さい。
流行する度にかかるんですよね。去年は平気でしたが……今年も乗り切れるはず!
面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、
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