128.宝探し
「えっ?ちょっと、絵里ちゃん?」
絵里のいきなりの言葉に、焦り出すエナ。けれど、そんな事お構い無しに絵里は、
「ネヒィアは、要らない物はここに残してって言ってたから、全部残して買い出しに行こう。ね?」
エナの腕を掴んで、部屋から出ようとする。
これに、エナは流石に抵抗して、
「ま、待って絵里ちゃん。全部捨てるのは……」
エナらしくないか弱い声で俯きながら言う。
そんな姿に絵里は、
「それなら、大事な物を三つ。それだけね」
最初から用意していた言葉を言い、絵里はエナの目を覗き込む。
絵里からしてみれば、ぶっちゃけ思い出が詰まった物なんて、大して大事ではない。
だって、自分で覚えておけばいい。と言うか、大体の事は忘れるし、覚えてない。思い出だって全部が全部残る訳では無い。
絵里にとって、過去の事なんて結構どうでもいい事なのだ。いつか人は離れてしまうし、ずっと一緒にいてはくれない。
今を大事に……今、目の前にいてくれるのなら、それでいい。好きな人が近くにいてくれるのなら……それでいい。
過去と未来に大事な物なんて、さほどない。今、この瞬間のここにしか、大事な物が落ちていない。
と、絵里は思っているので、すぐに要らないと思えば物を捨てる。要は、エナとは真逆の性格なのだ。
そんな絵里はせっかくなので、エナの物に近付いて色々と少し漁ってみる。
綺麗に保管されていたらしく、汚れている物はない。
本を大雑把に捲ったり、題名を見たりして、ちょっと難しいそうだなー、なんて思っていると、一冊の手書きで書かれたような本が目に入った。
表紙には拙い手書きの、銀髪と金髪の小さな子供二人が仲良く手を繋いでいる絵。
そして、その題名は、
「『ネヒィアの可愛いところ』……?」
絵里が首を傾げて、ぽつりと題名を口に出すと、エナの体がビクッと震える。
そんな事を知ってか知らずか、絵里はその本を開き、中身を読む。
「ネヒィアは拗ねると可愛い。ネヒィアは笑うと可愛い。ネヒィアは照れると可愛い。ネヒィアは……」
エナが音もなく、絵里の持っていた本を取り、顔も耳も真っ赤に染め上げて、それはもう大事そうに、その本を抱き締め、
「こ、これは……大事な物……一つ目よ……」
もにょもにょしながらも、そう恥ずかしそうに呟いた。
それに少し驚きながらも、絵里は、
「うん。きっと、それはエナにとって一番大事な物。だから、捨てちゃダメだね」
そう言って、
「……世界で一番大事な宝物、か」
絵里は表紙の裏に書かれていた、さっきチラッと見えた一文を口に出す。
本当……嫉妬するぐらいに、エナはネヒィアを愛しているらしい。
面白い、続きが読みたい、そう思った方ぜひブックマークそれと、
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