11.策士
「ちょ、ネ、ネヒィア?やめ……」
絵里に抱きつき、顔を絵里の胸から首筋へと移動させ、押し当てるネヒィア。そんなネヒィアは、嬉しそうな笑みを浮かべて、
「主様、いい匂い。大好きだよ♡」
ギューっと抱きつき、絵里の耳元で甘くて可愛い声を発する。
そんなネヒィアに少しドキリとするが……それを誤魔化すように、絵里は少しテンパりながら口を開く。
「あ、あの、ネヒィア?ウリ坊って、どうするの?」
全く持って関係ない事だが、絵里が思い付いた話題がこれしかなかった。
そんな話題にだが、答えたのはネヒィアではなく、エナ。
「殺して、食って、売るわ!」
エナはそう、面白そうに大声で叫ぶと、パァンと、手を合わせ……
「さっき思い出したけど、絵里ちゃん。ウリ坊って毛皮が高く売れるの。それも、白は1番高いのよ!」
「そ、そうなの?それよりも、なんでウリ坊が急にこっちに来てるの?」
「そんな事、別に問題ないわ。『解放』」
「エ、エナ?うわっ」
テンション上げ上げなエナは何かの魔法を唱えると、地面に亀裂が走るぐらい力強く踏み込み、一瞬でウリ坊に肉薄する。すると……ウリ坊は空高く舞い上がり、そして
「『火矢』」
ウリ坊の周りに蒼い火の玉が無数に現れると、それが一斉にウリ坊に向け迫る。
そんなエナの魔法を見て、何を思ったのかネヒィアがスっと片手をウリ坊に向け、
「『虚像』」
そう魔法を唱えた。すると……ウリ坊は地面に凄い勢いで落ち、エナの魔法は空間に、溶けた。
地面に落ちたウリ坊は、ピクリともしなくなり……その場に静寂が落ちる。
そんな静寂の中で、ウリ坊が気絶した事を確認したエナは、絵里とネヒィアがいる木陰までやって来て、静かに口を開いた。
「どうしたの、ネヒィア?」
「お姉ちゃん。あのウリ坊は誰かに飼われてるんだよね?」
「ええ、そのはずよ。それが何か?」
「なら飼い主は、誰?」
ネヒィアはそんな、分かる訳がない質問をエナにするが……エナは考える様に目を閉じ、急に目を開くと辺りを見渡す。
絵里とっては、その行動の意味が全く分からなかったが、ネヒィアは満足そうに、嬉々としており……
「分かった?お姉ちゃん」
「ええ、分かったわ。なら、どうすれば良いかしら?」
エナは、少し呆れたようにネヒィアに反応して空中にウリ坊を浮かし、『神獣殺し』へと戻した。
ザブーン、プクプクなんて音が聞こえてウリ坊は沈んで見えなくなる。
そんな光景を、意味が分からずにぼーっと眺めていた絵里に
「主様。空間移動で、ここに来る前行きたいって言ってた、近くの街に行こ?」
「あっ、うん。良いよ……けど、あのウリ坊は?売らないの?」
絵里は戸惑いながらも、ネヒィアの声に反応する。なんか勝手に話が進んでいるが、一体どう言う事だろうか?
そんな表情が顔にでも出たのか、エナが
「絵里ちゃん。あのウリ坊はたぶん……大魔獣っていう魔獣の枠組みから外れた生き物よ。だから、自我がある」
「……?普通の魔獣は自我がないの?」
「そうよ。魔獣は長い間生きると、自我を持って大魔獣になる。大魔獣は殺すと面倒だから、生かしておくわ」
「そ、そうなんだ」
「そう。だからね、主様。早く行こ」
そうネヒィアは言って目を閉じる。それから数秒経って、ネヒィアの体が青白く輝き出す。
「主様。空間移動するから、手、握ろ?」
「良いけど……エナは?」
「いいよ。お姉ちゃんは」
「えっ?嘘よね?私も一緒に行くからね?」
エナは急いで、絵里はゆっくりネヒィアの手を握る。その途端、更に光りが強くなって……
「『転送』」
そうネヒィアの声が響き、あえて最初に移動する時には提案しなかった空間魔法で……見た時、大魔獣と既に気付いていたネヒィア、エナ、そして、何も分かってない絵里達3人はスっと『神獣殺し』の森から消えた。
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