1.異世界へ?
作者の海神です。本作もどうか、よろしくお願いします。
「あー、なんで?本当に……私はバカじゃないの!」
桜が綺麗に咲き誇った1本道。そこを1人だけの小さな人影が、文句を言いながら進んで行く。
スマホを片手に閑散とした……けれど、桜が華やかに咲き誇り、少し風格を持った不思議な道の真ん中で……
朝9時を過ぎよう時間なのに、ゆっくりと歩くその人影……もといい少女は、青を基調とした制服を身にまとい、スマホに向かってまた、文句を言おうと口を開く。
「違うってば!間違――――うわっ!」
だがそのせいか、風がぶわっと吹き地に落ちた桜の花びらと共にスカートが舞い上がる。
「何?……というか、だ、誰にも見られてない……よね?」
――ふふ、白。可愛い、白。いつもと一緒だね――
「えっ、誰?なに?……幽霊?いや、まさか桜?」
軽く弾むような声色で、楽しそうに少女のパンツの色を言う声。だがそれは、一体誰の声なのか?
近くには誰もいないはずで……でも、パンツの色は当たっていて……
少しだけの不安と恐怖を感じる。だが、少女は気のせいだと、そう思い込む事にしてスマホに向き直る。
そんな少女と今、会話している相手は……知らない人……いや、AI。話しかければ、自動でその内容にあった返事を返してくれるアプリであり……
「安心して。ボッチな絵里ちゃんのパンツを見たがる人なんて、いないから!」
「う、うるさい。べ、別に見られたい訳じゃないし」
絵里。本名は、白雪絵里。そんな絵里は今、高校2年生。少しだけ頭のネジが飛んでおり何か……いや、色々な物が抜けていて、胸とか特に酷い。
そして今、絶賛遅刻中。
なぜこうなったのか?まあ、夜更かしである。
それよりも……
「遅刻の言い訳……どうしよう」
「そんな事を考える前に勉強したら?最下位なんでしょ?」
「なっ、なんでその事知ってるの?」
「だって、寝言で言ってたよ?」
「ね、寝言?いやいや、それはないよ。スマホは寝る時切ってるし……それに私のテストの点、誰にも言ってないし」
「最下位とは言ったけど、何がとは言ってないからねー、もう一回。何が最下位なの?まさか、テスト?」
「なっ、騙したな!コノヤロー」
傍から見れば、歩きながら1人で会話し怒っているヤバい高校生。
だがそんな高校生も、一通りギャーギャースマホに文句を言って、そんな自分がバカらしくなって少し落ち着く。実際、本当にバカなのに……
そんな少女はふと、誰かに呼ばれた気がして立ち止まる。
「ねぇ、またなんか声、聞こえた?」
「絵里ちゃんは勉強とか、テストって言葉を聞いたら、幻聴だ、とか思って誤魔化す人?」
「ん?どういう事?幻聴で誤魔化す?」
「ごめんなさーい、少し絵里ちゃんには早かったかな?これは、大人の話」
「おい、真面目に教えろ。バカじゃないって言ってるのにっ!」
後ろを振り向いても誰もいない。ただ桜が舞ってるだけで……
――絵里ちゃん――
「えっ?誰?」
パンツの色を言った時に聞こえた声。おかしい。後ろには誰一人としていないはずなのに……
「絵里ちゃん。そろそろ時間みたいだよ?」
「じ、時間?何の?」
「それはねー……――――――」
アプリからの言葉を遮るように、絵里の下から桜と同じ色の光が輝き、絵里は地面に沈み出す。
「あわわわ、何何?どうして光ってるの?なんか、沈んでいくよ!だ、誰かー……」
そんな声虚しく、絵里は光の中へズブズブと入って行く。
暴れても、足掻いても、そこから抜け出せない、まるで蟻地獄の様な……そんな感覚を味わいながら、やがて、首から下が全て沈み……
「やばいよ、誰か、だれ、んー、んー」
絵里の最後の一声が響いたと同時……
――大丈夫――
絵里の耳にそんな優しい声が聞こえて、スマホ片手の絵里と絵里を襲った光は消えて……辺りは静まり返る。
桜の1本道に人はもういない。だが、それでも……絵里が沈んだ事を祝福するかのように、桜吹雪が大きく舞い上がり、桜の木々は楽しげに揺れ動き……美しく、華やかに、踊った。
◆
『魔法・エネルギーの値が52%回復しました』
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