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人と神

 神様ってのは大概、崇め奉られるものだ。

 幼き頃から疑って来た自分としては、理由もなしに信仰するのはどうかと思っていたのだが……家族も友も、結局大人になれば他人になると気付いてからはどうでも良くなった。


 ——ただでさえ、居るかも分からん奴にそこまでするか……?


 内心皆んなそこまで存在を認めていないにも関わらず、自分の丈に合わない出来事が来れば願ってしまう。

 まあ、それぐらいなら分からんでも無かった。人間とはそういう生き物であり、自分にも覚えがある。


 ただし、世の中にはその人生全てを捧げる信者もいる。

 そんな彼らを見ては、馬鹿だなあ……と呟くのが日課だったのだ。


「さて、これからどうしたもんかにゃ……」


 取り敢えず、元の世界に帰る為の手段とこれからの目標は出来た事になる。

 小人族と小神族を仲良くさせる。国家問題と考えれば中々の大役であり、難しい事だろうが……神様基準での願い事なんぞじゃなく、ホッとしている。


 しかし、彼の言う神の試練がこの一件で済まないというのは気に食わない。

 こういうのは大体、魔王を倒すだの宝玉を四方に設置しに行くだの……一つの話で済ませる話だろうに。


 こう考えればあの神様、ただ面倒ごとを押し付けて来るだけな気がして来た。

 あの希臘の英雄ですら、十二で済んだのだ。一般市民がそう何度もやるもんじゃ無い。


「その……小人族と小神族って言うのは……」

「小人族は……物作り」

「小神族は……魔法の種族」

「背がちっさい奴と耳長だろ……それ」


 ——エルフとドワーフって奴かぁ……。うーん……実にファンタジー。ゲームの世界なら、違和感は無いんだがな……。


 まあ、皆んな仲良く平和に……なんて誰でも繕うもんなんだし、なんとかなるだろう。

 勿論、手は抜きませんとも……ええ。ただまあ……手っ取り早く終わらせたい。そして、帰りたい。


「それで、えー……サイ君? は現人神様から何貰ってきたの?」

「……ん。ああ、これか?」


 手に持っているのは、この世界の書物。

 この世界の建国神話が綴られている物だ。ヒルコ様っていう神様から貰って来た。


「親が神職でな。神話とか、幼少から結構聞かされて来てたから……せっかくだから、この世界の神話も見てみようと思ってな」

「へぇー……でも神様が嫌いって言ってなかった?」

「神様なんて曖昧に崇められてるけどな、大概ろくな奴じゃ無いんだよ……」


 正確には、親から聞かされたのは日の本の神話のみである。

 しかし、それきっかけに他国の話にも興味が湧いたのも事実だ。先程の言葉は、その結論である。


 兎にも角にも、そんな話は関係ない。

 本題は、小人族と小神族の話だ。仲良くさせる……なんて適当な匙加減で放られたのは困りものだが、きっかけさえ作れば満足だろう。


 そんな訳で、これからは彼らの集落へと行くことになった。

 

「一先ず、目的地を明確にするかにゃ」


 そう言って彼女は、近場で買ってきた地図を広げる。



「今いるのが、地図上で中心にある晴天ヶ原(はれまがはらにゃ。そして、少し南西に行った場所……ココが小人族の集落。ゲノーモス火山にゃ。そして、一旦戻って晴天ヶ原から東に行った場所が小神族の集落、アルヘーム。こっちは森で迷いやすいから後回しにした方がいいと思うけど……どうにゃ?」



「俺ら二人はこの世界来たばっかだからなあ……。シストラム……さんに任せるよ」

「……別に呼び捨てでいいにゃ」

「あっすいません」


 基本的に、晴天ヶ原から集落にかけては道が作られている様で、電車だの車だのと楽な移動手段は無い。我々飢人族の集落では、その手の手段も存在する様だが、ここまでは通ってない様だ。

 道の途中では休憩所が存在し、まずはそこを目指す形になる。


「あ、あと道中は魔物もいるからにゃ」

「さらっと言いよる……」


 魔物……と言えば、一般的にはスライム等をイメージする物だが、話を聞けばこの世界においては人型のグール等に限定される様だ。

 特別、戦術だとかの知性がある訳でもなく、しっかり準備していけば問題ないらしいが……。



「都会から離れるほど数は多くなるし、強い奴も多いにゃ。一応、ここから火山に行くまではうち一人でも余裕だから安心するにゃ」


「さっきも話に出てたけど、小人族は物作りの種族だから……彼らに武器を作って貰いつつ、話を聞いてアルヘームに行く。という流れで動こうかにゃ」



「ああ、異論は無い……けど、武器って事は……そう言う事だよな?」

「そう言う……事です」

「問答無用で襲ってくるから……やむ無し……」

「そっか、そうだよね……」


 ——まあ、異種族同士の倫理問題なんてそう解決できるものでも無いか……。


 目に見えて気分が沈むサチを横目に、そんな言葉を浮かべる。


 無意識に他の生き物を喰らう選択をしてきたとは言え、自分の手で殺めるのは気が引けてしまうものだ。

 しかし、そうも言ってられない。最終手段を逃せば、当然の様に後は無い。

 それに魔物という存在は、数あるファンタジー物でもそう言う役回りなのだから、我々がその扱いに不満を言う資格は無いだろう。


「良い気はしないがな……」

「慣れる慣れないは人次第だにゃ。無理強いをするつもりもないけどにゃー」


 ——そりゃ、助かる。楽して生きれれば良いけど……。


「そうも言ってられんか……。ま、実際そうなってから考えればいいだろう。取り敢えず、火山を目指そう。別に戦闘以外でも役に立てる事はあるだろ……多分」

「そう……だね。うん、それじゃあ明日から頑張ろう……!」


 辺りは暗闇と人工的な光。

 空元気で自らを鼓舞するサチさんを少し心配しつつ、シストラムが勘定を置いて酒場を出る。

 

 ——異世界生活初日はこんなもんか……。


 方針が決まっただけでも良しとしよう。

 早く元の世界に戻りたい……いや、彼女と会いたいという気持ちを抑え、宿に向かう。


 財布を気にするシストラムを横目に見遣り、悪い気をしながらも見て見ぬフリをした。


明日だけですが、軽く実験してみます。

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