閑話 杠葉サイにとっての世界
短めです
捻くれた男の話をするとしよう。
神様なんてものを単純に信じた両親に育てられ、男は飽きるほど神々の話を聞いてきた。
神話、民話、英雄譚、どんな話だって神様は曖昧に信仰され、それを男自身も簡単に信じていた。
そんなありがたい話とやらをいくつも聞いてきた。
そして、その数と同じぐらい……現代社会の鬱憤も聞いてきた。
いや、聞いてきたと言うのは語弊がある。情報過多なソーシャルネットワークに置いて、暗い話題が流れて来ない方が珍しい。
「こんなに苦労している人間が居るのに、何故神様は助けてあげないんだろう?」
まだ幼く、現実と妄想の区別が付けられない頃、そんな疑問を抱いた事がある。
そりゃあ、今となっては馬鹿馬鹿しい問答だと思うさ……。
けれど、神様など存在しない……なんて、神様に仕える家に生まれた人間が言うのは趣がないだろう?
そんな思考回路により達した結論は、現実と言う物を理解し始めた彼の宗教観に強く根付いている。
即ち……。
『世界を創造し、この世を荒らし尽くした神々は既にこの世界に倦怠し、新たな世界にご執着なのだ』……と。
それはまるで、クリアしたゲームのパッケージを重ねるが如く……彼らにとって、その世界を味わい尽くせば、その世界は終わりを迎えるのだ。
世の全てを見出した世界に彼らは興味を惹かれず、平和など存在しないと言う人間は彼らにとって、味もしない駄作。
逆説に乖離できず、エンドロールに気付けないまま永劫を過ごす人々。
終わらないアドベンチャーモードをプレイし続ける神様など存在しない。
かくして終わりを迎えず、続編など作れる筈もない世界は意味も無く発展を続けていくのだろう。
それでも、そんな世界でもさ……『愛を謳う』事で、『それと同じくらいの熱』で意味を見出せるなら……。
「存外、こんな世界も悪く無いだろう?」
……ん? ああ、その通り。
少なくとも俺は、そう思えたのさ……。
× × × × ×
アルヘーム周辺
太陽は沈み、黒く染まった世界の中でさえ、際立つ漆黒が一つ。
悠久の幽鬼は今尚、生かされ続けていた。
何かを求めて彷徨い続け、世界との干渉はただ一つ。
『敵を抹殺しろ』
遠い昔から始まった、ただ一つの存在意義。
そんな命令を実行し続ける男が居た。
纏わり付いたボロ布をなびかせながら、彼の者は朦朧とした意識の中で、今日も歩き続ける。
永い……永い時間を、こうして過ごしてきた。
どす黒く染まったその身を洗う様に、血を塗り重ねる幽鬼がいた。
そんな自らの傍らに、涙を流す少女が居る事を知らぬまま……。




