騒がしい孤独
「いやー、悪いな。外で待たせて……」
小人族の長、シーアと名乗った男はそんなことを言いながら頭を掻き、サッと簡単な飲み物を出してくれる。
……とは言っても、テーブルや椅子等のような物は無く、あぐらをかきながら地面に置く……という形だ。
家と言っても、寝る為だけの場所……といった感じで、趣味の類やインテリア等のものは一つも置いていない。
唯一壁の近くにある丁寧に積まれた箱の中には、彼が作ったのであろう剣や槍の武具が半透明な板から見える。恐らく彼自身が受注し、作り上げた品なのだろう。
「それで、あんたらは何の用で俺に会いに来たんだ?」
そんな疑問を問いかけるシーアに、シストラムからの説明が入る。
元の世界に帰ると言う目的。その為に何をすれば良いのかと……ヒルコ様に与えられた課題を伝えた。
その言葉を聞き、少し考える素振りを見せたシーアは二種族の現状を簡単に説明してくれた。
「俺達小人族と小神族。正直、昔から仲は悪くてな。俺と小神族の長であるエルスは、昔の代から続いていた『必要最低限の事以外は干渉しない』っつー決まりを守っていた訳だ」
一度飲み物を挟んだ後、シーアは続けて説明する。
「……ただまあ、その最低限の事も疎かになってきてな。言っても聞かねえっつーか、心ここに有らずと言うか……。そんなもんで、ちと強めに言っちまったんだが……小競り合いになってな」
「そん時の話の流れではあるし、俺とエルスだけの問題で済んだなら良かったんだが、それが民達にも伝わっちまってな。徐々に燃え広がってるって感じだ。正直、何かきっかけがありゃ大惨事になってもおかしくねえ……」
一族の長として、危機感を抱くシーア。
確かに言われてみれば、ここの住民は表にこそ出さなかったが少し、ピリピリしていた様に思う。
「それで? 俺の話を聞いて、これからどうする気なんだ?」
「取り敢えず、小神族側の話も聞きに行くつもりだにゃ。一応、ここで武器の調達をするつもりだけどにゃー」
シストラムのそんな言葉に、シーアは良い武具を作る人間を紹介しようかと話し始める。
しかし、結局は俺が作る物が一番良いと豪語し始め、最終的には『俺が作ってやる!』なんて言いだした。
ま、愛嬌である。
「あんたらの都合とは言え、仲を取り持ってくれる以上は俺からも何かしてやらねぇとな……。ああ、金だって取らんから安心しな。これは、俺の勝手なお節介だ」
——それはありがたいが……今から作るとなると時間かかるんじゃ無いか?
そんな当然の疑問を口にする前に、シーアがその答えをくれた。
「なぁに安心しろ。近衛兵の連中みたいに、変に装飾にこだわりだのがなければすぐ出来る。一番時間がかかるのは、装飾に使う宝石とかが届くまでの待ち時間だからな」
異世界の常識と言うのは、我々にとっての非常識と言えるだろう。意味は分からんが、本人が言うんだしそういう事だ。
はいはい、多様性多様性。悪く言えば、無関心だ。
「それより、武器っつってもよー。どんな武器が良いんだ? 剣だとか、槍だとか……色々あんだろ?」
「ああ……そっか……」
小さく、呟くこの言葉は辺りに響いたのだろうか?
静かに一人、サチはそんな事を考えていた。
——幾つかあった魔物との戦い。見ているだけでここまで来たけど、これからそうは行かないんだ……。
「具体的にどんな武器にするのかは決めてなかったにゃー……。うちは自前の爪があるから十分だしにゃー……。ま、二人が使いたいのがあれば……」
そう言いながら、彼女は私達の顔を見て微笑む。
『無理はしなくて良い』と、そう言っているような気がした。
「俺は、普通に剣かなー。日本刀とかで……」
あっさりと答える彼に少し、疎外感を感じる。
でも私だって、既に答えは出ている筈だ。
再び自分に問いかけた後、その言葉を口にしようとした。
「……」
ああ……難しいものだ。ただ、言葉にするだけでも。
そんな事を思いながらも、時は過ぎていく。
少し……ほんの少しだけ、空白の時間が過ぎた後にその言葉を口にした。
「私は……弓が良い……です。昔、弓道をやっていたので……」
また、嫌いな自分と出会う。
嘘は言っていないのに、誰かに嘘をついている様な気がして……。
「あー、そうだシーアさん。物は相談なんだが……こう言う感じの……」
世界の色が落ちていく。
目に映る物は遠のいて行き、耳に入る音はノイズになって行く。
——ああ、まただ……。




