ゲノーモス火山
「長かったな、本当に……。つーか、初手で来る様な場所じゃねえだろ……RPG舐めてんな……」
「何にゃ、それ?」
——生憎、それを説明する気力は無い……。
心底から滲み出た感情を言葉にすることは出来なかったが、表情で想いは伝わった様だ。
ごつごつとした岩肌が晒され、最初はこんな山を登るのかと絶望していたのだが……一応、申し訳程度に道は出来ており、歩き辛い道を抜けた先には冷え固まった溶岩の一帯。洞窟の入口はその先にあった。
ようやく歩き辛い所から抜けるかと思ったのだが……案外、冷えた溶岩の上は踏み込みにくい。
慣れない大地の表面に足を取られながらも、苦労してたどり着いたのだ。
……しかし、一番苦労したのは魔物相手に全部一人で戦い切ったシストラムの筈なのだが……。
「小人族の集落はこの先にゃ。まずは、ここを仕切ってる一族の長に会って話を聞こうかにゃ」
そんなシストラムの言葉を流し聞きながら、入り口の大穴を覗き込む。
その先には少し長い通路が広がっており、電灯らしき物で照らされた空洞の先には微かに人の営みが見える。
「電気あるんだな……一応聞くけど、落っこちてきたりしないよな?」
「元々、ここは洞窟を使った場所だけどにゃ……彼らが勝手に広げてる部分が大半だし、そう言う面は対策してるんじゃ無いかにゃ?」
異世界人の技術をどれ程信用して良いものか……そんな思惑を知らぬシストラムはずんずんと先に進んでいく。
それに続いてサチも中に入って行き、少し残る恐怖心を抑えつつも歩を進める。
……その先には異世界が広がっていた。
近付くにつれて、増して行く熱気が体を包む。
地下帝国の様な街並みは、目で見える範囲にマグマ溜まりがいくつか存在しており、マグマに近付く事も難しいだろうが、少し間違えば落ちてしまう様な場所まである。
まず、一番初めに目についたのは大きなバケツの様な物だ。
赤黒い容器がマグマを汲み、一滴も垂らさないままギシギシと洞窟内全体に音を響かせ、当然の様に運ばれている。
恐らくこの運んだマグマを資源、エネルギー源として使っているのだろう。
……小人族と呼ばれているだろう人達は、自らの世界と比べるとまだ少し幼さの残るような見た目。自分自身と年の近い姿をした人間が大半だが、小人族と言う名前を付けられている以上は既に大人と言える年なのだろう。
建造物はあまり見受けられず、家という名のほら穴を作って生活している様で、あまりプライバシーと言うものは感じられない。
奥にある坂の先には、大きな土竜の様な生き物を象った石像が対になって門の役割を担っており、その先には恐らく一族の長が居るであろう建造物が存在していた。
「……すごい」
そんな言葉を零したサチさんに同調しながら、先に小人族の人間と話しているシストラムの場所へ向かう。
「本当かにゃ? ああ、助かるにゃ……」
「すまん……ちょっと圧倒されてた」
「割と最初は……」
「皆んなそんな感じ……大丈夫!」
小さな二人がそんな言葉を掛け、シストラムもそれに同調する様な顔だ。
「さっきの方は……?」
サチの疑問も当然。先程シストラムが話していた小人族の人間とは、入れ違いの形で離れていき、あの大きな石像のある奥の坂を登り始めていた。
「ここの長に会いたいって話したら、二つ返事で了承してくれたにゃ。話をつけてくれるらしくて、先に彼の家に行ってて良いみたいてにゃ……」
「随分と無防備だな……」
「簡単な話で……そう言う種族」
「人の物盗らなくても……材料あればまた作れるし……」
——そう言う問題か?
「えっと……その家はどこに?」
「……」
「そう言えば……聞いてなかったにゃ……」




